縁日やペットショップ、ホームセンターの店頭などで、500円玉くらいのかわいい子ガメが売られているのをよく目にしますよね。
小さな子ガメたちが、水槽の中で一生懸命泳ぎまわっている姿は愛らしいものです。「連れて帰りたい」と思う方も、少なくないのではないでしょうか。生活の中に癒やしが欲しいけれど、アパートだから犬や猫は飼えない。でも、カメだったら大丈夫じゃないかと、考える方もいるかもしれません。
でも、ちょっと待って。
ペットショップで売られている、「ミドリガメ」あるいは、「ゼニガメ」というカメは、実は、飼うのがとっても大変な生き物なのです。
なにしろ、彼らはとても大きくなります。
「ゼニガメ」という名前で売られているのは、クサガメというカメの子どもです。このカメは、メスだと、甲羅の長さが20cmくらいにまで成長します。ちょうど、ティッシュ箱に手足が生えて動き回っている感覚でしょうか。
成長した「ゼニガメ」 コンクリートブロックくらいの大きさになる。
別にそれくらいだったら大丈夫じゃん、と思うかもしれません。しかし、カメというのは、身体の大きさに対して、とても広いスペースを要求する生き物なのです。これくらいの大きさのカメを飼うとなると、設備はとても大掛かりなものになります。少なくとも、幅90cm、奥行き45cmは必要でしょう。単身用のアパートだと、それを置いただけでベランダがいっぱいになってしまうくらいの大きさです。
クサガメの飼育容器。幅90cm、奥行き40cmほどある。
しかも、これでも「少し窮屈かな?」と感じるくらいなのです。
この大きさの容器になると、1度に換える水の量は50リットルくらいになります。それだけの水を運ぶのですから、水換えをするだけでも一苦労です。カメはとてもよく汚す生き物ですから、週に2回は水換えが必要でしょう。重労働です。
もう一方の「ミドリガメ」ことミシシッピアカミミガメは、クサガメよりもひとまわり大きくなりますから、さらに労力がかかります。
ですから、どんなにかわいく思えても、これらのカメを安易に連れて帰ることを、私はおすすめしません。
どうしてもカメが飼いたい、という方には、別の種類のカメを薦めるようにしています。
それは、ミシシッピニオイガメという名前のカメです。
ミシシッピニオイガメ。成長しても掌に乗る大きさ。
クサガメやミシシッピアカミミガメと比べてこのカメはぐっと小さく、成長しても、せいぜい甲長10cmくらいにしかなりません。掌に乗るくらいの大きさです。ですから、飼育設備もずっとコンパクトで済みます。
ミシシッピニオイガメの水槽。 幅45cm、奥行き25cm。
水槽の大きさは、幅45cm、奥行き25cmもあれば十分です。面積で言えば、クサガメの水槽のほぼ4分の1ですね。ぐっと少ないスペースで、飼うことができるのです。
そんな珍しそうなカメ、飼うのが難しいのでは、と不安になるかもしれませんが心配はいりません。クサガメやミシシッピアカミミガメのように、「カメのエサ」をぱくぱくと食べてくれます。飼い方は変わりません。
飼いやすさで言えば、クサガメやミシシッピアカミミガメよりも、ずっと優れているのです。
カメは、広い場所をすいすいと泳ぎまわっている姿が美しい生き物です。狭いところに押し込めて飼っていては、人もカメも楽しくありません。体が小さく、体に対して大きなスペースを用意してあげることが比較的簡単なミシシッピニオイガメなら、ご自宅でも、水族館のように、カメがすいすい泳ぎまわる姿を楽しむことができます。
カメを飼ってみたいな、とお考えの方は、このカメを飼ってみることをおすすめします。
※記事中の画像はすべて筆者が撮影したものです。