電子書籍を作ってみた

  by トルサージ  Tags :  

電子書籍への認識が一般的にも普及し始めた今年、ネットを背景に活動してきたウェブ作家達はどのように電子書籍化に対応していくのだろうか?
今回幾つかの電子書籍プラットフォームに登録し、自作小説で電子書籍を作成してみた。

『電子書籍ブクログのパブー』 http://p.booklog.jp/
言わずと知れた作品数15000を超える個人向け電子書籍作成サービス。プロ作家や漫画家、数多くのウェブ作家が参加し、絵本、文芸誌からマニュアル本、漫画、画集に到るまでジャンルは多岐に渡る。
またユーザーなら誰でも参加OKのコンテスト等を定期的に開催し、活発なサイト運営が特徴。

『電子書籍出版・販売サービスforkN(フォークン)』 http://forkn.jp/
今年5月に始まったばかりの電子書籍出版・販売サービス。フォロワーの活動履歴がタイムラインで分かる、ツイッターと連動したブックストリーム機能が特徴。またそのプラットフォーム自体を構築できるクラウドサービス「Seesaa eBook Platform 1.0」の提供も開始している。

上の2つのサイトはPDFやEPUBといった電子書籍には必須の形式データも自動生成されるので、特にユーザーは新しい知識を必要とせずテキストや画像の貼り付けのみで電子書籍作品を作ることが可能。
また自分で価格設定を行い販売することもできる。サイトによって異なるが現状の印税は70%程度。気に入った本をすぐにオンライン購入できるのも魅力だろう。

実際幾つかの自作小説を電子書籍化してみたが、手順自体は普通の小説投稿サイトとさして違いは無い。過去の文豪の作品とアマチュア作家の小説が横並びでランキングに表示されるのも、電子書籍サイトならではと言える。

しかし、どこか違和感がある。
それは紙→電子書籍という表面的な媒体の問題ではなく、せっかくの電子書籍が従来の紙小説の模倣に終始するのならば、何のための転換なのだろう?という自身への疑問だった。
ウェブを背景に、従来の紙小説の範疇に囚われない自由な創作意識が広まった。更に今回の電子書籍化で、創作自体がプロ・アマ問わずより身近な娯楽文化になりつつある。

ではコンテンツとしてこうしたプラットフォームが整っていくのに伴い、供給側の書き手に必要なものは何か?
今回のサイトでは、動画や音楽、音声を取り入れる新しい試みも行われている。挿絵の写真が一枚あれば、それで情景描写は事足りてしまう。ならばこれからの小説は、戯曲のようによりシナリオ化されていく可能性もある。
冗長な背景描写を省き、短いセンテンスの中で文章文学としての美しさを際立たせていくことに、今後の小説の着地点があるのかもしれない。

書籍用端末などのハード面の普及に伴い、ソフト面の提供者としての書き手の有り方も変容していく。
もしかすると、「紙の本?全く読んだことないよ」という新しい作家達が、ウェブ創作を背景にこれから台頭してくるかもしれない。
そんな“新作家達”がどんな刺激のある小説を見せてくれるのか愉しみでもあり、また同時に脅威にも感じる。

 

※画像は『写真素材 足成』様より使用させて頂きました。
(http://www.ashinari.com/2009/05/08-019154.php)

 

web作家。電子書籍プラットフォームや小説サイトにて活動中。ジャンルは純文、SF、恋愛、娯楽、幻想小説など。

ウェブサイト: http://mypage.syosetu.com/182970/【小説家になろう】

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