福岡市で、小規模な病院(有床診療所)で火災があり、前院長のご夫婦及び患者さん10人が亡くなられた。私も数年前に同様の小病院で家族介護のためにしばらく寝泊まりしていた経験があり、日々恐怖を感じていたので、やはりこのような事件が起こってしまったか…と悲しい思いである。自分が寝泊まりしていて分かった、高齢者が大半を占める深夜の病院の問題点を上げてみたい。
火災事故が起きたタイプの小さい病院は全国約12000ヶ所。
まず、今回の火災事故が起きた病院のようなタイプの小さい病院を、法律用語で「有床診療所」(ゆうしょうしんりょうじょ)という。全国有床診療所連絡協議会の公式サイト(http://www.youshowsin.com/about-youshow.html)では、会長の葉梨之紀氏の談話として、
有床診療所は入院治療のできる診療所で、ベット数が1~19床までで、多くは一人の医師で診療しています。 全国で約12000ヶ所あり、国民にとって気軽にかかれる、身近な入院施設です。 かかりつけ医として気軽に医療相談もできますし、軽症、中等症の緊急患者も受け入れ、専門的で比較的高度な治療も行います。
九州や東北・北海道などの農村地域・人口過疎な地域では、病院も少なく地域医療の中心となっています。
としている。会長の話にもあるように、地方では大きな病院がないところも多く、このような小さな病院が地域医療を支えているのだ。
その病院には、人手不足で当直の看護師が1人しかいなかった。火事の時の避難の説明も不十分
4年前、私は認知症の祖母の手術後の介護のため、今回の事件が起こったのと同様の関東地方の小病院で寝起きしていた。勤務先に事情を話して、定時で夕刻に退社した後、祖母のいる病院へ通うのである。その頃、私の街には大きな病院の数が少なく、手術も複雑なものではなかったので、小病院を使っていた。そして、朝になると帰宅し、入浴してから出社していた。
その病院は当時、病床数が15くらいだったと記憶している。今ではだいぶ病床数も増えたようで、有床診療所ではないのだが、その頃看護師の人手不足とかで病院には夜間は看護師は1人しかしないといわれており、認知症の患者の場合は家族が泊まることが病院から義務付けられていた。
今思い返しても冷たい対応で、その看護師は病室を1つ1つ見て回るのでもなく、時々廊下を歩く音が聞こえるだけだった。病室の大半は高齢者で、個室ばかりなのでどこに誰がいるのかもわからなかった。防火設備なども入院時にほとんど説明を受けなかったと思う。別の家族が事務手続き時に聞いたのかもしれないが、入院時のパンフなどもあまりちゃんとはしていなかったように思う。
私は毎日恐怖を覚えた。事故があったらどうしようかとも思ったが、認知症患者の祖母の場合、もはや昼夜の区別もつかず、目を離すと「ここはどこだい?家に帰りたいよ!」と病室を出ようとするので、ずっと起きているしかなかった。いざとなったら連れて逃げるしかないと覚悟を決めていた。今考えても、この病院で私が介護中に火災に会わなかったのは、幸運としか言いようがない。
今回のような悲惨な事故を繰り返さない為に、どうすればいいのか?
以上、地方の小病院の私が体験した実情を述べた。無論、こういう病院ばかりではなく、
防火設備も完備したところもあると思うのだが、やはり法律面や国の制度がこういう小病院に行き届かない面も多々あるのではないか。この問題は、看護師の不足(コレを補うために外国人看護師を受け入れるという報道もあったが…)や、医療制度の整備の遅れなど複数の要因が絡み合っており、対処は非常に難しいのである。
ただ一つ早急にできることがある。病院関係者の火災対策の意識向上だ。私の体験でも、入院時に火災が起きた時の説明も不十分であった。病室に避難経路図もあったかどうか?今回の火災でも、なくなった患者さんの多くがベッドの上で発見されている。
本日の読売新聞福井版には、早速有床医療機関の緊急査察を消防署が行ったという記事が載っていた。今からでも遅くないので、火災対策に今以上に注力してもらいたいと思う。
(トップ画像は病院のベッドの画像、ウィキペディア http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%97%85%E9%99%A2より)