映画『奇麗な、悪』瀧内公美インタビュー「映画館の空間でしか味わうことが出来ない“余韻のある”作品に」

  by ときたたかし  Tags :  

NHK大河ドラマ「光る君へ」での藤原道長の妻・源明子役も記憶に新しい俳優の瀧内公美さんが、映画『RAMPO』以来約30年ぶりに監督を務めた奥山和由監督の映画『奇麗な、悪』に主演しました。芥川賞作家・中村文則による原作で、瀧内さん演じる女性の信じられないような独白で進行する異色作。ご本人にお話をうかがいました。

●本作は瀧内さん演じる女性の独白で進行する実験的な色合いもある異色の作品かと思いますが、オファーの際はいかがでしたか?

今までいただいたことがない不思議な脚本だったことと、奥山和由さんという人間に対しての興味がまずありました。奥山さんは実際に会ってみたら飄々としている方で、蛇口をひねれば水が出てくるように、口を開けばほめ言葉が出てくるので、正直怖かったです。その言葉の裏を考えてしまい、「この先に何が待っているんだろう?」って思っちゃって(笑)。

●奥山監督は本作の製作の意図や映画化の意味について、どう説明されたのでしょうか?

原作を書かれた中村文則さんの言葉そのものが面白いと、まるで言葉の弾丸を浴びせられるような感覚が面白いとおっしゃっていました。その時奥山さんは社会情勢や映画業界に対する怒りのようなものもお話なさっていて、ご自身が感じられている世の中への違和感が伝わって来ました。だから堰を切ったように話し出す女性の物語を撮りたいのかな、と。わたしはそう受け止めていました。

●完成した作品はいかがでしたか? 彼女の語る半生は放火に始まり、人の道を踏み外した悲惨な話ではありますが、その衝撃性とは別に引き込まれる何かがありました。

あれだけ語っていても、本当のところは誰にも分からない、事実なのかどうかも分からないということが、この作品の一番のおかしみだと思っています。やはりそれは観た方がどう感じるかであって、実際に観た方の感想もバラバラなんです。ですのでわたしが何か感想を提示することで、反対に作品の足かせになるのかな、と。個人の解釈に委ねたいとは思いますね。

●確かに映画をご覧になる方たちがどう受け止めるか楽しみですよね。

そうですね。最近はショート動画もエンタメの主流になってきているなか、1時間10分、ひとりの人間を見続けていただけるのかが一番の不安ではありますね(笑)。どう受け止めてくださるのか、そして何を感じとってくださるのか、そこは楽しみですね。

●最後になりますが、本作を楽しみに待っている方に一言お願いします。

わたしにとって一生に一度になるかもしれない一人芝居ですし、本当に不思議な作品になっていました。映画館の空間でしか味わうことが出来ない“余韻のある”作品になっておりますので、ぜひ映画館に出向いてもらって観ていただければ幸いです。

●今日はありがとうございました!

■公式サイト:https://kireina-aku.com/ [リンク]

■ストーリー

ひとりの女が街の人混みのなかを歩く、まるで糸の切れた風船のように。
生きることすら危うさを感じるその女は一件の館にたどり着く。
女は思い出す、以前に何回か訪ね診てもらった精神科医院だ。人の気配はないがドアは開く。
静けさが待ち受けている。医師は今でもどこかにいるのか?
女は部屋の空洞に吸い込まれるように中に入っていく。そして以前と同じ様に患者が座る。リクライニングチェアに身を横たえる。
目の前にあるピエロの人形に見つめられているようだ。
「火の、、、火の話から始めることにします」
幼少の頃、カーテンに放った火て起こった事件から話し始める。
そして…「今日は、全部話す」と…。

ヘアメイク 董氷
スタイリスト 佐々木悠介

©2024 チームオクヤマ

2025年2月21日(金)よりテアトル新宿ほか全国順次公開

ときたたかし

映画とディズニー・パークスが専門のフリーライター。「映画生活(現:ぴあ映画生活)」の初代編集長を経て、現在は年間延べ250人ほどの俳優・監督へのインタビューと、世界のディズニーリゾートを追いかける日々。主な出演作として故・水野晴郎氏がライフワークとしていた反戦娯楽作『シベリア超特急5』(05)(本人役、“大滝功”名義でクレジット)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)など。instagram→@takashi.tokita_tokyo

-->