アメリカでは進化したイヌビエ(ひえの野生種)が作物に深刻な問題をもたらしている。そのイヌビエは数々の除草剤をくぐり抜け、恐るべき耐性を持つにいたったようだ。いわばスーパーイヌビエである。アメリカではこのスーパーイヌビエのせいで、時には100%の損失をコメ農家が被ることもあるというから驚きだ。稲の栄養を根こそぎ吸い取られてしまうのである。
除草剤で枯らせたようにみえても、イヌビエは地中深くに種子を残して再生長の機会を伺っている。現在のところこれを完璧に処理することは不可能で、複数の除草剤を組み合わせてなんとか抑えこんでいるのが現状だ。しかもそれとていずれ耐性を持つ可能性があり、なんとも頭の痛い問題である。害虫や病原菌と同じく、雑草との戦いもイタチごっこなのだ。そして人類が最後に勝つという可能性はどこにも保証されていない。
イヌビエの驚くべき進化は除草剤への耐性だけではない。進化の過程で、イヌビエは外観をも変化させていった。つまりコメに非常に良く似た形状に自らを偽装するようになったのだ。これのために田んぼに紛れ込んだヒエの見つけ出すのが簡単ではなくなってしまったという。姿を偽装してイネの中にひそみ、密かに栄養を吸い取ってしまう。まるでスパイか忍者のようだ。植物がこうした進化を選ぶというのは驚嘆すべき事実である。
これらに対抗するために、新らたな除草薬の使用や、雑草を抑制する別の種の雑草の栽培など、様々な研究が行われている。しかし雑草たちはまさに雑草のようにしぶとく、人類の歴史と共に進化し生き残ってきたのだ。この壮絶な戦いの行く末は誰にもわからないだろう。
参考 ニューヨーク・タイムズ “Looking for Ways to Beat the Weeds” (画像も引用しました)
http://www.nytimes.com/2013/07/16/science/earth/looking-for-ways-to-beat-the-weeds.html?pagewanted=1&_r=0&ref=science