前回の「思い切ってミシャスタイルの3バック採用を」で、3-4-3については一段落。おそらく豪州戦の日本代表は4-2-3-1の布陣を選択するでしょう。ただ、豪州は一筋縄ではいかない相手。今回は、2006年のドイツW杯以来、90分で倒した経験がない相手に挑むにあたり、ブルガリア戦で浮上した問題点を(守備と攻撃に分けて)考えていきます。
最近の日本代表は「セットプレーからの失点」が目立ちます。もちろん「集中力の欠如」のみで片付けられる問題ではありません。正GKの川島は「最後で粘れなかった」とマノレフのゴールを表現しました。なんとかゴールの外に跳ね返せなかったのでしょうか。2年前のアジアカップを振り返ると、川島はカタール戦で致命的なミスを犯しましたが、韓国戦から見事に挽回しました。その再現なるか。控えの西川の調子は悪くないと思います。
厳密にセットプレーと呼ぶのかどうか自信がありませんが、ブルガリア戦は「ゴール近くでのスローインからのピンチ」も。特に前半は雑な対応が続き、3秒(あるいは5秒)で際どいシュートまで持ち込まれました。日本が昨年のW杯最終予選・イラク戦でスローインから決勝点を奪ったことを考えても、スローインを侮ると痛い目に合うはずです。
香川を中心に攻める回数、崩しに絡む人数をもっと増やすべき。
一方、ゴール前の攻撃(最後の崩し)についても考えましょう。本田圭佑が不在の場合、軸になるのは香川でしょう。力強さに差はありますが、どちらも「中央の密集地帯で勝負できる選手」です。ブルガリア戦の前半、香川が軸となり、前田遼一、乾貴士、遠藤保仁がワンタッチで絡んで好機を創出しました。ただ「フィニッシャー、パサー、囮のいずれでも機能する香川を中心に攻める」回数、そこに絡む人数をもっと増やしていきたいところです。
前半出場した前田は好調とは言えないかもしれませんが、一時期のミロスラフ・クローゼ(ドイツ)のように代表チームでは機能する選手だと思います。その点は後半出場したハーフナー・マイクより上でしょう。香川中心の攻撃に厚みを加える役割は長谷部にも当てはまります。失敗が続いたものの、ラストパスの工夫をしていたのは間違いありません。
素晴らしいアイデアを有している乾と清武弘嗣への期待も相変わらずです。特に乾には膠着状態を打開できる突破力もあります。そんな彼らに足りないのはゴールという結果です。ミドルシュートも狙いつつ、枠に飛ばす意識も大切にしてもらいたいです。流れの中からの得点以外では、遠藤のショートコーナーはブルガリア戦の数少ない好材料でした。きっと豪州も神経を尖らせているはず。
「カタールでなければ発揮できない」なんてことはない。
控えの選手にも言及を。得点を奪うには相手からボールを奪わなければなりません。そこに重きを置けば、細貝萌や東慶悟の存在が浮上します。細貝を起用するなら、長谷部を外すか、最終ラインの前にポジションを用意するかの選択を迫られます。一方、東はトップ下として、激しいプレッシャーをかけられる上に、ロンドンオリンピックを共に戦った清武とのコンビはある程度計算できるでしょう。若手が思うように伸びず、ややマンネリも漂う今、新鮮な選手である東が台頭すれば、ポジション争いが面白くなるのですが。
最後に。ザッケローニ監督は「今日はあまりインテンシティー(激しさ)が見られなかった」とブルガリア戦後に答えました。私は「4-2-3-1でスタートし、全選手が万全のコンディションで臨めれば、それなりのインテンシティーは発揮できる」と思います。しかしながら、本当にコンディションが問題なのでしょうか。2年前に優勝したアジア杯を思い出して下さい。インテンシティーという言葉が躍らなくても、相手を凌駕する激しさがあり、確かに相手よりも走っていました。「カタールでなければ発揮できない」なんてことはないでしょう。