日本人が設計した慰霊碑『ポストカード』は海を隔てたテロ跡地のフリーダム・タワーに対面する

  by あおぞら  Tags :  

世界で活躍する日本人は多い。建築と言う分野でニューヨークに形を残している人の代表は近代美術館(The Museum of Modern Art)を設計した谷口吉生氏であろう。そして芸術界のノーベル賞と呼ばれるプリツカー賞を受賞した妹島和世・西沢立衛(SANNA)氏はダウンタウンにあるニューミュージアム(New Museum of Contemporary Art)を設計した。

9・11のテロリズムの標的にされたワールド・トレードセンターを設計したのは日系2世のミノル・ヤマサキ氏である。今、もうそのワールド・トレードセンターの姿はないが、ニューヨークを象徴するよう巨大で都会的な二つのビルは、ニューヨークのランドマークであり、絵葉書やカレンダーで毎度登場した。

ニューヨークの美術館やビル、また他の建築物でも常に競争の世界で、建築コンペを勝ち抜いて勝ち抜いて実際着手するのである。その戦いは世界中から才能のある人々が数多く応募して、たった一人だけが栄冠を手にし、新しい何かをニューヨークに残すのである。

ニューヨーク市は五つの行政区でなりたっていて、ニューヨーク市と聞けば摩天楼が林立するマンハッタンを思い浮かべるが、マンハッタンの他、ブルックリン、クイーンズ、そしてスタテン島と言う島もニューヨーク市の一部なのである。

そのスタテン島からマンハッタンが美しく見える場所がある。丁度、ワールド・トレードセンターが位置した場所を中心におさめるような場所である。マンハッタンの中にいれば、マンハッタンをしっかり眺めることは出来ないが、マンハッタンをしっかり感じるには一旦外に出て、外から眺めた方が良い。スタテン島からの美しきマンハッタンを眺めるのがポイントに写真の「ポストカード」がある。

この作品は兵庫県出身でニューヨークに在住の曽野正之氏の設計による。除幕式には当時の市長、ブルームバーグ氏も挨拶されテレビニュースにもなった。テロによるスタテン島の犠牲者の追悼の意を込めて建立された『ポストカード』は慰霊碑である。

実際にその場所に立ってみるとわかるのだが、荘厳とした空気に包まれている。これは神社仏閣、教会のような荘厳な空気の感触に似ている。

『ポストカード』の前方には海を隔ててマンハッタンが見える。両翼の間に聳えるビルは9・11のテロリズムの標的にされたワールド・トレードセンター跡地に建つフリーダム・タワーである。

この慰霊碑に今年の9月11日も人が集まるだろう。両翼の内側にはポストカードのような形の石に、テロで亡くなられた方のお名前とご職業、誕生日が刻印されている墓石のようだ。墓石と違う所は職業が書かれている所と死亡日年月日が刻印されていない。

『ポストカード』の職業にFDNYの刻印が多い。

このFDNYは The Fire Department of the City of New Yorkの略で消防士だ。あれから19年が過ぎた。ご遺族の子弟たちももう成人しているだろう….

尉霊碑には美しさと威厳が感じ取られる。

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