2012年、世界の注目を集めたルイ・ヴィトンと草間彌生のコラボレーション。10年の時を経て、またこの伝説のコラボが実現し、東京の各地でインスタレーションが展開されました。
11月末からはじまった「LOUIS VUITTON × YAYOI KUSAMAスペシャル・インスタレーション」は、東京の街をジャックするかのような大々的なもの。久しぶりに景気の良さを感じたくて、開幕直前のプレビュー&パーティーに行ってまいりました。
この日はまず、 東京駅行幸通りのスポットからスタート。こちらでは12月25日まで特設スケートリンクとLV フィッシュ・カフェが楽しめます。LVロゴのPOPなインスタレーションも展示。平日の夕方の行幸通りは、意外にもウェディングの写真撮影スポットになっていました。小雨が降る中、何組ものウェディングドレスとタキシード姿の男女が撮影。背景にLVロゴが映り込んだら上流階級感を醸し出せそうです。
内覧会のブレス用のバスに乗り合わせ、次なるスポットへ。目的地を知らない状態で乗っていたので、「イカゲーム」気分を味わえました。
増上寺では「参道のペインティッド ドット」を観賞(撮影日のみのインスタレーション)。境内の一面に、草間彌生のカラフルなドッドが敷き詰められていました。すぐ近くに見える東京タワーも草間カラーで、LVのロゴも燦然と輝いています。アートとブランドとお寺の異次元のマリアージュ。ドットのカラーが赤、緑、ブルー、白、黄色でGoogleカラーと同じなのは、作品制作当時、草間彌生が未来を予見していたのでしょうか。
東京タワーのインスタレーションは2022年12月16日(金)~18日(日)の夜も行なわれるそうです。もうすぐクリスマスですが、カップルはサプライズで「この眺めがプレゼント」とか言ったら盛り上がるかもしれません。
すぐ近くのプリンス芝公園でのインスタレーションは12月29日(木)まで開催。大量の銀色の球体に覆われていて、LVマークもシンボリックに輝き、高級感がうずまく空間でした。
スマホで公園内に設置されたQRコードを読み込むと、AR画面でさらに銀色の玉が増殖します。1960年代に発表された「ナルシスの庭」にも銀色の球体がしきつめられていました。ナルシスという名のとおり、銀色の球体には自分の姿や周りの景色が映り込んでいます。さらにARで自撮りすることで、ナルシス度アップ。人間の承認欲求の高まりを感じられる作品です。
ちなみに近隣のマンションがこのインスタレーションを一望できる場所に建っていました。毎日窓からアート観賞できるなんて羨ましいです。
カボチャのオブジェも展示されていました。こちらもARでカボチャのモンスターのようなアニメを観ることができます。もう草間カボチャの魔力から逃れられません……。
この日のツアーとは別の日に訪れましたが、新宿駅東口の3D動画広告や渋谷スクランブル交差点の大型ビジョンも期間限定でルイ・ヴィトンと草間彌生にジャックされていました。
渋谷スクランブル交差点は、視界に入るビジョン全てを使って広告映像を流していました。8つもの大型画面に、赤いヘアの草間彌生先生や商品が登場。かなり頻繁に流れていたので1時間に8回コースでしょうか。広告の情報サイトによると、4つのビジョンを使い一週間広告を出すと750万円。8つのビジョンなので1500万円くらいになったのでしょうか……。ルイ・ヴィトンの計り知れない経済力を実感。
内覧会の日、パーティ会場では後世に語り継がれるインスタレーションが展開していました。バスで連れてこられたのはボウリング場。ここで命をかけたゲームが行なわれるのか……と「イカゲーム」の予感にドキドキしながら中に入ると、そこは一面のドットの海でした。
レーンの一部に新たに床を作って、一面にドットをプリント。さらに壁もモニターもボウリングのボールも全てドットまみれです。草間彌生とのコラボアイテムも展示されていました。今まで草間ファンを自認してきて、生きているうちにこんなすごいインスタレーションを見られるとは……。パリピの集大成ともいえるイベントで、コロナになってからこんなに大がかりなパーティは久しぶりでした。空間やシャンパンに酔ううちに、ドットが幻覚なのか現実なのかわからなくなってきます。
草間彌生の小説 「すみれ強迫」にはこんな一節があります。
「けれど幻視であれ現実であれ、それは同じことではないか。 生きている苦しみと、幻影に怯えることと、どれだけの差があるというのだ。実際、幻影のもたらす感覚の中にこそ、生きている苦しさの核が見え隠れしているような気もする」
若い頃、彼女にとって苦しみだった幻覚が、世界的な名声とブランディングによって豊かさのイメージに昇華したようです。高価なアイテムはなかなか買えませんが、水玉インスタレーションに没入してしばらく、現実逃避したいです。