声優の石川由依さんが公開中のアニメーション映画、『とんがり頭のごん太-2つの名前を生きた福島被災犬の物語-』に出演しました。本作は2011年3月11日(金)午後2時46分に発生した東日本大震災を受け、被災犬となったごん太、置いていかざるを得なかった飼い主家族、そしてペットを保護するボランティアたちの姿を中心に描く感動作で、石川さんはペットを懸命に救おうとするボランティアの主人公・吉野由紀を演じています。あれから11年。今だからこそ観てほしい映画になったという石川さんに、映画のことや声優のことなど、お話をうかがいました。
■公式サイト:https://www.gonta-movie.jp/ [リンク]
●吉野由紀というキャラクターは、被災地のペットを救おうとボランティア活動に参加しますが、演じてみていかがでしたか?
あのような状況になった時、まず考えることは、人命や被災した方への支援についてだと思うんです。でも、実際にペットを飼っていらっしゃる方からすると、ペットは単なる動物ではなく、家族の一員なんですよね。ただ、あのような大変な状況下では、お別れしなくてはいけない状況がたくさんあったと思うので、そういう活動をしてくださる方がいるということが、みなさんの救いにもなったのではないかと思いました。
●由紀は被災地に行くことでさまざまな経験を重ねていくわけですが、観ている人は彼女に感情移入して物語を観ますよね。
そうですね。由紀はあの場所で被災したわけではないので、外部の人間として後から外から知っていきます。その意味では観客の代表ではないけれど、映画を観てくださる方も同じ気持ちになるのかなと思います。わたし自身も、みなさんが感情移入できるキャラクターであればいいなと思いながら演じていました。
●メッセージ性が強い作品の場合、たとえばプレッシャーを感じることはありますか?
東日本大震災で大変な思いをされた方は今でもたくさんいると思いますし、今回の作品の内容も繊細なものであると思ったので、簡単に手を挙げて「やります!」と言えないなということは考えました。オーディションの時も可能な限り内容などを把握し、自分の中で納得した上で臨みたいなと思いました。
●作品ごとにガラッとイメージが変わるような演じ分けが素晴らしいと思いますが、どのようなことを意識しているのでしょうか?
アニメーションは総合芸術とよく言われるのですが、いろいろなところに目を配って、最終的にまとめあげるのが監督なので、アフレコ前に監督と方向性について話し合ったりはしています。今回は「なるべく自然に演じてください」とのことだったので、それに答えられるよう、ナチュラルなお芝居を意識しました。
今のようなコロナ禍では、声優が全員集まって一度に収録することが難しくなってしまったので、作品のテンション感をみんなで擦り合わせて作っていくことが出来なくなってしまいました。なので尚更最終判断はスタッフの方々に委ねるしかなく、もちろんそれを信用しているのですが、わたしたち自身は公開されるまで完成したものを観ることができないので、いつもドキドキしています(笑)。
●日々どのような努力をされているのですか?
想像することですね。でも想像するためにはゼロだと何もわからないので、1でもよいので何かしらを知っておきたいとは思うんです。たとえば死ぬお芝居では、実際には体験し得ないけれど、痛みを知っていればその延長線上で、痛みから死を想像できるようになる。なので、ちょっとでもいろいろなことを知っておきたいと、いつも思っています。
●声の仕事ですが、どういう瞬間に楽しみを感じていらっしゃいますか?
わたしは小さい頃から劇団に入っていて、お芝居をすることが大好きで、特に舞台が多かったんです。なので大人になったら舞台をやりたいとずっと思っていたのですが、その途中で声のお仕事と出会って、自分に合っていると思うようになりました。声のお仕事は日本だけでなく、世界中の方たちに観ていただけるもの。自分が好きでやっていることがたくさんの方に観ていただけて、勇気づけられたり感動してもらえることって、本当に凄いことだと思うんです。誰かを救いたい!などと大きなものではわたしは決してないのですが、自分のしたことで誰かの救いになったり、楽しい気持ちになっていただけるのであれば、それが一番嬉しいことじゃないですか。その仕事に就けて、自分が今生活できていることが、最高の幸せだと思います。
●目標などは?
生涯現役でいられたらいいな、ですかね(笑)。ブレイクしたい!という気持ちはそこまでないのですが、生涯声優をしていくために今を頑張らなければいけないなと思っています。自分の好きなことをずっと続けていられるように、そしてそれが誰かの力になったらいいなと思っているので、これからも頑張っていきたいと思います。
●今日はありがとうございました!
■ストーリー
福島県の最東端、浜通り北部にある浪江町。B級グルメで話題になった「なみえ焼きそば」が名物の食堂を営む富田一家は、8歳になる犬の『ごん太』を飼っていた。ごん太は生まれたときから頭の先がちょっととがっている利発な犬だった。
2011年3月11日午後2時46分。突然、東日本大震災が起きた。店の倒壊は免れたが、福島第一原発からわずか9キロの地だったため、すぐに避難することに。すぐに戻れると思い一家はごん太を置いていくが、結局親戚や知人を頼って転々と居を移すことになり、ごん太とは離ればなれになってしまう。
一方、東京の大学に通っていた吉野由紀は、春休みを使ってペットを救済するボランティアに加わって被災地を訪れる。そして取り残された犬たちがいるとの情報を得て、浪江町の警戒区域内へ。そこで数匹の犬たちを保護するが、その中にごん太がいた。ごん太は『ピース』と名付けられ、吉野らとともに相模原に拠点を移して生活を始めるのだが……。
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