「トルコを仲介役に」グテーレスの電撃「国連平和外交」と戦場ジャーナリストが伝える「ウクライナの真実」

  by tomokihidachi  Tags :  

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「トルコを仲介役に」グテーレスの電撃「国連平和外交」と戦場ジャーナリストが伝える『ウクライナの真実』」

リード)
【1】マリウポリ製鉄場地下の「野戦病院」を狙うロシア軍 命懸けの「人道回廊」避難始まる
【2】戦場ジャーナリスト志葉玲氏が見た「ウクライナの真実」
【3】「ネオナチ」という言葉の使用は「脱共産主義法」という「ウクライナの法律」では違法行為
【4】中国がロシアに軍事支援すれば国際法違反の制裁対象か?
【5】なぜ改名したい?「敵基地攻撃能力」憲法上「集団的自衛権」行使免責の日本
【6】中国を強烈なまでに意識するNATO ロシアメディアの「QUAD(クアッド)」呼称
【7】NATOの核共有政策「ニュークリア・シェアリング」協調は被爆者への「裏切り」
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 ロシアのウクライナ侵攻から2ヶ月以上が経つ。世界各国で叫ばれる反戦デモの市民の声。「平和」を求めて「戦争を止めろ」とスローガンを一つに、ウクライナ人もロシア人も人種の境界はなく、目指すは「打倒!プーチン氏!!」だ。これまでもロシアの蛮行に「国連非難決議」を繰り返してきた国連のアントニオ・グテーレス事務総長。「五大戦勝国」の一国であるロシアの国連大使が、全会一致を求められる議場で「否決権」を発動させるなどを鑑みる。グテーレス氏は「国連の機能は麻痺状態に陥っている」とトップとして自身の組織を守らなければならない立場も配慮し、今回の4月25日、26日、28日の電撃「国連平和外交」に踏み切った。
グテーレス氏はプーチン氏の前にトルコを電撃訪問し、国連を代表して、親プーチン派のレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領に「こう着状態のウクライナ戦争のロシアとの間を取り持つ、『仲介役』になってほしい」と呼びかけた」と国連筋が明かした。4月26日にはグテーレス氏がロシアのウラジミール・プーチン大統領を電撃訪問。次いで28日にグテーレス氏がウクライナのウォロディミフ・ゼレンスキー大統領を訪問し、世界中が和平合意の希望をこのグテーレス氏の電撃「国連平和外交」に賭け注目した。ウクライナの戦況が悪化していくなかでも、グテーレス氏が両当事国の首脳の陣地に直接外交交渉に乗り込んだことで、混沌とした戦況にあるウクライナ兵は鼓舞し、ロシア軍が撃つ砲撃に逃げ惑いながら無差別殺戮されていくウクライナの人々も涙に咽び、親族や友人たち、親子らと密に抱き合いながら、未だ絶望せず命を燃やすように生きている。また、グテーレス氏の肝入りで「仲介役」を打診されたトルコは、早くもエルドアン大統領がゼレンスキー氏とプーチン氏に直接電話会談を行った。ゼレンスキー大統領は「マウリポリからの民間人避難ができる『人道回廊』の用意を国連と共にし、我々は全てのウクライナ避難民を救助する」とグテーレス氏に呼びかけた。グテーレス氏も「我々は諦めない」と平和貢献に向けた力強い決意で応じ、戦時下の母国に生きるウクライナの人々を照らす「光」となったようだ。

[©️「産経新聞」]

【1】マウリポリ製鉄場地下の「野戦病院」を狙うロシア軍 命懸けの「人道回廊」避難始まる

 「ウクライナの都市マウリポリが陥落寸前か」との見出しが新聞の一面を攫うも、予想以上にウクライナ兵の士気が高く、欧米から武器供与の支援のみならず食料品の提供まで届けられ続けることで、ロシア軍の狙いとする部分的な「兵糧攻め」は今のところ無駄な努力に終わっている。
 ウクライナを甘く見ていたプーチン氏。短期的には原発を制圧し、東西南北からウクライナ領土そのものを丸ごと奪取すべく包囲網をかける戦略に出た。ところがロシア軍が制圧したはずの都市がウクライナ軍に奪還されたり、ミサイル巡洋艦「モスクワ」がロシア黒海で沈没させられるなど、プーチン氏は戦略を変えざるを得なくなった。そこでロシア軍はウクライナ第二の都市ハルキウからずっと南下して、スラビヤンスク、クラマトルスク、ドネツク州に進撃。マウリポリまで下るとロシアは約1万の軍を派遣した。なんとか持ち堪えているウクライナの精鋭部隊が守るマリウポリ。4月24日にはアレストビッチ大統領長官顧問が「民間人の避難に特化した停戦交渉をロシア側に提案した」と公表した。と、停戦協議でも幾度も一時合意に至って反故にされてきた「人道回廊」の必要性を粘り強くロシア側に呼びかけた。ロシアとしては、ハリコフから南下したマリウポリを制圧し、そのまま2014年に占領したクリミアまでの戦時勝利ラインを描くようにウクライナ南東部にチェックメイトするのではないか、との見方もある。

[地図:ウクライナ戦況マリウポリまで南下][地図:南部攻略失敗「ロシア司令官逮捕」

[©️BS TBS「報道1930」『北欧が怯えるロシアの影―日本のNATO加盟はプーチン氏に打撃?』解説・堤伸輔氏/ゲスト・小泉悠氏・東野篤子氏(4月25日)]

 ウクライナの精鋭民兵部隊が守るマリウポリ市のアゾフスタル製鉄所では、ロシア軍の激しい砲撃や空爆、異常なまでに多数の「地中貫通爆弾」が地下にあるウクライナの野戦病院を狙っている。
 ロシアの戦略的空爆はアゾフスタル製鉄所の地下にあるウクライナの負傷者、病者、小児などが身を寄せる野戦病院がある。ウクライナの民兵部隊は供給品が不足し、日常生活に必須物資を回すことができない状況を保つことに神経を注いでいる。5月1日、国連広報官は「マリウポリ市港南からウクライナ市民を退避させる作戦が遂行された」と確認した。早々とロシア当局は「25人のグループと21人の市民をウクライナの民兵部隊が統制する中で、アゾフスタル製鉄所の近隣地域から避難してきた」と公表した。ウクライナ民兵部隊は、「前日の4月30日におよそ20人のウクライナ市民が製鉄所を離れた」と語った。
 ウクライナの高官は「工業団地でロシアの仕掛けた罠にはまり、1000人の市民と500人以上の負傷兵がいた」と明らかにした。しかしながら、そこにはまた広範囲にわたる都市で推計10万人の住民たちが水もガスも通信手段も断たれた中で暮らしている。数週間にも及ぶロシアによる深刻な爆撃が続いているのだ。

 2022年5月1日、ロシア軍は最近占領したウクライナ南部地域をロシア側にとって名目上、独立した「ドネツク人民共和国」ほか、もしくは併合して制圧した。ロシア側の情報筋によれば、「占領されたマリウポリ市とボロビアンカ市は、ロシア通貨のルーブルを使うよう移行し始めた」という。英国国防情報局が報告したところによれば、ルーブルの使用は5月1日にカーソン市で始まっている。4ヶ月分の通貨の一部として、ロシア軍の占領管理により制定された構図へと移行している。これらの計測には必要性がない、あるいは通常の軍事占領管理の指示について、プーチン氏は自身の野心がドンバスに止めるものではないとする。これらの地域を制圧することを好ましく思う傾向にあるのだ。

 西側諸国とウクライナの情報源によると、5月9日の「対独戦勝記念」に対ウクライナ戦争の「勝利宣言」をするのではないか、とこれまで見られていたプーチン氏。しかし英国国防相のベン・ウォレス氏は「ロシア軍軍隊に『一般動員」を募ると公表するかもしれない」と主張する。ウォレス氏はこのことが個人的見解であり、諜報機関に基づくものではないと認める。
 ウクライナのミハイル・ポドリャク大統領顧問はウォレス氏の主張を増長させ、5月9日の一般動員が、ウクライナ侵攻の結果としてロシアが今、直面している経済的支援要請と首尾一貫したものになるだろう。
 これらの主張は独立した機関による検証が必要だ。そしてそれはあらゆる出来事の中で多くの月日、強大で無数のロシア使役兵をいくらでも投じられる寛容さはないと「戦争研究所」は分析している。

 クレムリンは「集団的安全条約機構(CSTO)」のパートナーを西側の制裁から回避させる投資を模索している。ウクライナの国防省情報総局は旧ソ連軍参謀本部情報総局(GUR)の後継機関とされている。その情報総局が次のように述べた。「ロシアは入力された道具や物資を二重に活用することができる技術を調達しなくてはならないとCSTOメンバーにラブコールを送っている。その技術とは、西側諸国の制裁によってロシアが直接的には購入できないものだ。」また、「この尽力はCSTOメンバーのロシアに関する経済的独立と、ロシアの制裁を回避することをも可能にする。第三国によりロシア産製品を国際市場に再輸出することで、ロシアのウリヤノフスク機械工場がドイツを組み入れようと誘いをかけている。具体的には『BUKミサイルシステム』や『2K22ツングースカ(自走式対空砲ミサイルシステム)』などだ。
 カザフスタン経由で西側諸国の制裁はCSTOとユーラシア連合(EAEU)のロシアのパートナー諸国を標的にする必要性も今後、出てくるのかもしれない。これらのパートナー諸国を介してロシアの制裁回避を狙う策略に対し、「関税同盟」が焦点になる可能性もある。

[出典:Institute for the study for the War ”UKRAINE CONFLICT UPDATES”(2022年5月1日)]

 ウクライナ東部へのロシア軍の猛攻作戦は4月28日の時点でほとんど進展が見られない。ロシア軍はイジューム市南西部を攻撃していた。スラビヤンスク市へと地続きの道路を守る「ウクライナ民兵部隊」の裏をかき、ロシア軍は迂回してイジューム市の南西部を攻撃した。ロシア軍は砲撃とあまり知られていない攻撃で、ウクライナ東部に住む人々の通信を遮断する。しかし、過去24時間以内に何か安全に資する戦果を上げられたかと問われれば、何も得ていない。
追加的にロシア軍は増強し続け、イジューム市のウクライナ兵の前進に対抗するため、ベルゴロド州に部隊を配置した。ウクライナ国境から約40キロ、同国北東部「ハリコフ」から約80キロのロシア領にある西部の州だ。
 そのベルゴロド州は4月1日に「ウクライナ軍のヘリ数機によって燃料貯蔵施設を攻撃された」とベルゴロド州のバチェスラフ・グラトコフ知事は明らかにしていた。施設を所有する国営石油会社「ロスネフチ」はメディアに施設の敷地内から従業員を避難させた」という。[出典:AFP(2022年4月1日)
そのウクライナの民兵部隊は、マリウポリ市のアゾフスタル製鉄場で引き続き、ロシア軍による激しい砲撃と空爆から持ち堪えていた。その中には多数トンの「地中貫通爆弾」がウクライナの野戦病院を狙い撃ちしてくる
国際人道法上、断じて許されない残虐行為が罷り通っていた。

 アゾフスタル製鉄場の地下にある「野戦病院」。負傷した兵士や民間人、怪我をした乳児を抱えた母親、身体のうまく動かない高齢者などが身を寄せる本来、攻撃してはならない野戦病院を守る上でも、ウクライナ民兵部隊は、動けない人々の代わりに「食糧や飲料、医薬品などの供給品がほとんど足りていません」と訴える。

 ウクライナのニュースを小売している「Defense Express」(2022年4月27日)は、「ロシア軍参謀本部長のヴァラリー・ゲラシモフ氏がイジューム市の方向にロシア軍の攻撃を個人で命令指揮するだろう」と報じられていた。明記されてはいないが、ウクライナ軍の情報筋によれば、「Defense Express」は「ゲラシモフ氏は既に劇場の中だ。作戦と戦略的レベルで攻撃を命じるだろう」とし、ロシア軍は単独指揮構造を生み出し損ねた。例えば南部軍事地区下の司令官だったアレクサンダー・ドヴォミコフ氏に代表されるように。「戦争研究所」は残念ながら、完全に独立性を担保している研究所とは言い難いが、しかしながら前もって調査することはできる。ウクライナでの全体的な指揮官として、ドヴォミコフ氏のした約束とは、ロシアの指揮と挑戦の統制、さらに彼が指揮官として任務を遂行している機関の緊張感漂うロシア軍の士気。それらは解決に向かうものではなかった。
 もし、確認したとしても、ロシアの上級将官の約束は、戦術作戦を指示した先に、イジューム市の戦場沙汰がウクライナに侵攻したロシアの戦争を一層駆り立て、ロシア軍通常の指揮系統では消耗してしまうという2点の重要性があった。
 その他、4月28日には、ロシア軍がウクライナのカーソンからミコライフへも地上戦を展開し、ロシア軍が制圧したと伝えている。
 さらに、ロシア軍は「沿ドニエステル・モルドバ共和国」から長引くウクライナ戦争に徴兵動員を呼びかけ、「虚偽の旗で攻撃されている」を前提条件のスローガンとして設定。モルドバの「代理戦力部隊」とウクライナ攻撃を続けようとしている。
[出典:Institute for the study for the War ”UKRAINE CONFLICT UPDATES”(2022年4月28日)]

【2】ジャーナリストの志葉玲氏が見た「ウクライナの真実】

 隣国ポーランドからリヴィウ経由で、4月17日にウクライナの首都キーウ入りしたジャーナリストの志葉玲氏。4月28日明け方4時ごろ(ウクライナ現地時間)日本とオンライン中継で結び、志葉氏はウクライナ情勢の最前線取材を報告した。
「現在の首都キーウはロシア軍が撤退して安定している。一度国外に避難していたところから国内に戻ってきたりするウクライナ市民の姿も垣間見える。公共交通も通っているし、生活費はその時々で開いているレストランなど、多少利用できるお店もある。逆に郊外にはほとんど人の姿が見当たらない。そこではまだお店もオフィスも閉まっている一面も見受けられる。長期化すると人々の生活に悪影響が起きるだろう。」と志葉氏は激戦地だった首都キーウの状況を伝えた。
 
 その後、激戦区ハルキウに移動。ウクライナ第二の都市、人口約145万人、ロシア国境に近く、ロシア語話者が多い。ロシア軍侵攻当初から、ロケット弾や砲撃などロシア軍による激しい攻撃を受けてきた。攻撃は無差別で「市内で安全なところはどこにもない」とハルキウ州消防本部が断言する程だ。そのため、ウクライナで取材する日本の大手メディアや他のフリーの記者たちもハルキウでは取材できていなかった。だからこそ、ウクライナ戦争開戦後、日本人記者としては初めて志葉氏は取材を行った。

[©️志葉玲氏「ハルキウ入り」筆者スクリーンショット]
 
 18ヶ所も砲撃された、このハルキウでウクライナ軍志願兵をインタビューしていた志葉氏。取材中に隣の隣くらいの地上にロシア軍からの砲撃が着弾し、紅蓮の炎が広がった。

[©️志葉玲氏「ウクライナ取材中に隣地にロシア軍から着弾」筆者スクリーンショット]

 「人々は地下のシェルターに避難して戦火を逃れ、すごく助け合っている光景を目にした」(志葉氏)。

強大なロシア軍が攻撃してきても、今のウクライナ軍はすぐに反撃してプーチン氏が言うところの「制圧」「5月に勝利宣言」などという虚言を「奪還」に変えてしまう強さがある。
 沈没したロシア黒海艦隊のミサイル巡航船「モスクワ」イーゴリ・オシポフ司令官が解任され、逮捕沙汰にまで発展した。それと言うのも欧米による3億ドル超えの武器供与でウクライナ側はロジスティクスで困窮しないのか、「モスクワ沈没」の戦果まで歴史に刻んだ。
 
志葉氏がウクライナへの過渡期、300体だった遺体がウクライナ入りした後に裏を取ると、400体というおよそ100体も犠牲者が増えていたことが判明する。

[©️志葉玲氏 筆者スクリーンショット]
写真「黒焦げになった骸骨の遺体」       写真「「教会」遺体の埋葬先」
                     

[©️志葉玲氏筆者スクリーンショット]
 写真「遺体画像」           写真「『遺体画像』と生前の姿映すスマホ」

「イルピンで殺害された母親の遺体をとりあえず埋めていたが、街がロシア軍に解放された後、巨大な十字架と共に地面に埋葬し直した、その息子と父親。父親は息子に『後ろを見ないで、前を向いて一所懸命生きていくんだ』と諭していた」と、数枚の写真を示しながら、志葉氏は解説した。

[©️志葉玲氏「母親を亡くした少年と父親が十字架を立て埋葬」筆者スクリーンショット]

 ロシア軍によるウクライナ東部一斉攻撃包囲網が始まり、犠牲となったウクライナ兵や民間人の「遺体」を巡る映像は、ウクライナ側の演出で俳優を使って演技させた「フェイクニュース」だとロシア国営TVや民間のインターネットがプロパガンダ報道を強引に垂れ流している。
 ひどいロシア軍のプロパガンダが偽造される只中で、焦土に帰す「命の現場」にも足を運んだ、志葉氏だからこそ、一層その酷さに憤りを覚えているように筆者には感じられた。
 実際にはモザイクをかけなければ報じられない道徳律を犯してまで、プーチン氏に情報統制されたロシア系メディアは「あったはずの犠牲」を「なきものに」する情報の受け手を騙し抜く戦法を変える気は一向にないらしい。

 「ジェノサイド」で世界的なプーチン氏の戦争犯罪に非難の声が集まった「ブチャの虐殺」。それにイルピン、ボロディアンカと相次ぐ戦況。
「家に隠れていても安全ではなく、生きていく上で給水が必須な水を探して戸外に出ると、その途端、殺される」。「インフラも援助物資も、全くありません。水も食料も医薬品も命懸けで取りに行かなければならない」と訴えるウクライナ市民による「真実の証言」を命懸けで志葉氏は伝える。
 
 志葉氏が指摘したのは「通常は軍事目標に目掛けて街の中心部を狙ったりするものだが、(今回の)ウクライナの場合、一般住宅地が破壊されて黒焦げになり、骨組みまで風塵に晒されて、ボロディアンカではスナイパーによる狙撃を恐れる、ウクライナの人々がトイレや必要なものを取りに行くことができない」という傾向についてだ。次の砲撃があっても身を隠せる場所の代わりを探さなくては、ウクライナの市民は生き延びることができないのだ。また、志葉氏は「(プーチン氏が恫喝する)核戦争に備え、地下鉄がやや唯一『安全な場所』かもしれない」とも感じていた。

 だが、志葉氏はネガティブな「戦場の悲惨さ」だけを伝えたわけではない。

[©️志葉玲氏「ボランティアと高齢の女性」筆者スクリーンショット]

 防弾チョッキを着た体格のいい男性が高齢の女性に会いにきた写真がある。
 「『この方はウクライナ兵ではなく、とても勇敢なボランティアの男性です。目の前に砲撃が飛んでくるのが日常茶飯事なのに、援助物資を届けてくれる』と物資を受け取り安堵した表情を浮かべる女性の写真だ」と志葉氏は説明した。
さらに志葉氏がそのレンズを向け撮り収めた中には、「日本からの援助物資もありました。日本にも感謝しています」とウクライナ国内避難民(IDP)が物資を受け取った様子や、わずかな備品で勉強したりする子ども達の姿も捉えていた。

[©️志葉玲氏 筆者スクリーンショット]
  写真「難民と物資」            写真「勉強する子どもたち」
 オンライン上でも伝わる戦場の殺伐とした空気が一瞬、和むような報告会を志葉氏は「希望的写真」で締め括った。

【3】「ネオナチ」という言葉の使用は(通称)「脱共産主義法」という「ウクライナの法律」では違法行為

遅々としてなかなか進展のないウクライナとロシアの「停戦協議」の場でも、第二回目でロシア側の派遣した代表者らから「ネオナチ」「ナチズム」などとの発言があり、ウクライナ側は「自国の法律で、その言葉の使用を禁止しているから以降、使わないように」と苦言を呈してきた。この停戦協議に出席してくるロシア側の代表者はその後からウクライナ側に譲歩して使用しなくなった…はずだった。
現実は、ロシア国営メディアが、あえて名称を口にしないでヒトラーの「印」がロケットランチャーに書いてあるのをカメラで捉えながら、「過激派のマークです。ここにはユダヤ人殺しとも書いてあります」と平然とレポートしている。ロシア軍によるウクライナ東部一斉攻撃包囲網が始まり、陥落が叫ばれていたマリウポリを死守すべき「故郷」だとして奪還した「アゾフ連隊」。2014年のクリミア侵攻時に結成したウクライナの民兵部隊の精鋭だ。彼らについても「アゾフ連隊は死を崇拝する“殺人カルト集団”とのことです」と在ロシアメディアのスタジオからキャスターがバイアスのかかった偏向報道を伝え続けている。
 
首都キーウの拠点にいるアゾフ連隊のマクシム・ジョリン司令官をTBS系列「報道特集」の金平茂紀キャスターが取材した。
ジョリン司令官は「ロシアは『アゾフ連隊』をあたかも『ナチス』や『ファシスト』だと全世界の人々に広めようとしてきた。しかし『アゾフ連隊』はロシアと違って他国に侵攻したこともなければ、他国の政治に関与しようともしなかった。さらに言うと「アゾフ連隊」で宗教や人種が問題になったことはない。」と真っ向から反駁した上で、「我々はウクライナを守っている。自由で独立した国であってほしいだけ。」と力強く語った。

―「アゾフ連隊」に関するロシア側の情報は「フェイクニュース」だと思っているか?
 
 「ロシアの真っ赤なウソ。今、ナチズムを体現している人間はただ一人。それはプーチンだ。」とジョリン氏は斬り捨てた。
[出典:「報道特集」「激しさ増す情報戦“虐殺”ロシアの主張覆す映像と証言」(2022年4月23日)]

「ナチス」という言葉を使うことを禁じているという「ウクライナの司法」とは、実際に具体的にはどのような「法律」に違反しているのか?
「ウクライナ領における共産主義・国家社会主義(ナチズム)による全体主義体制を非難し、両者のシンボルをプロパガンダに使用することを禁止する法」に違反している。前文及び7つの条文から構成された同法によれば、旧ソ連からの独立以前にあった「ウクライナ共産党(ボリシェヴィキ)」と独立後の「ウクライナ共産党」とは差別化されて論じられてきた。

 「脱共産主義法(通称)」が、同法第一条「定義」によって旧ソ連時代及び、ウクライナ独立後のウクライナ共産党をも含む概念を定義している。「ウクライナにおける一九一七年から一九九一までの共産主義的全体主義体制若しくは国家社会主義的(ナチス的)全体主義体制の犯罪性」を公的に否認すること。また前述の全体主義や「ソビエトの国家保安機関による活動の犯罪性」を示す旧ソ連による行為の「弁明を目的とする情報の拡散」などと共産主義・ナチス称賛的な自国の戦争犯罪行為の正当化を裏付ける立法根拠と見做される。
 第二条「国民の権利及び自由と相容れない『人権侵害』条項」で触れられる犯罪とは、ウクライナのみならず多くの共産主義的全体主義体制下で実行された行為をいう。言い得て妙なのが、フランス刑法の「人道に対する犯罪」に該当する数多の人権侵害だ。
 第三条・第四条「共産主義的及び国家社会主義的(ナチス的)全体主義体制並びにそれらの象徴のプロパガンダの禁止」。ドイツにおける「アウシュヴィッツの嘘」をユダヤ人に対する侮辱とする判決と近しい。だが、この「脱共産主義法」第三条一項においては、プロパガンダによる侮辱が「過去の」犠牲者たちに向けられている点に特徴があるという。

 立憲民主党の小西ひろゆき参議院議員がウクライナ情勢をめぐる質疑になぜ「憲法前文」と「平和的生存権」をこの件で問うたかと推察する。
 ソヴィエト独立後の「ウクライナ憲法」第二章の権利章典などに規定された第34条「言論・表現の自由」及び第35条「宗教・信条の自由」は、「市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約B)」第18条「思想・良心及び宗教の自由」と第19条「表現の自由」、また欧州人権条約第10条「表現の自由」を参照している。先進諸国の「国際法・条約」から大いに真似び、自国の「ウクライナ憲法」策定に至ったことが見受けられる。

例えば、質疑にあった日本国憲法の「平和的生存権」に当たる「ウクライナ憲法」の箇所は
[第27条]誰もが奪われることのない「生きる権利」を有す。何人も「他人の生命を奪うことはできない」。「国は国民の生命を守る責任を有す」。誰もがその「生命及び健康を守る権利」を有し、「他人の生命及び健康を違法な侵害から守る権利」を有す。
であり、「前文」や第二章の権利章典「国民の権利、自由及び義務」で定めた以下抜粋、
[前文]ウクライナ最高議会はウクライナ国民を構成するウクライナの全民族の代表であり、国民の自由意志を表す。これはウクライナ建国に至る長い歴史を礎とし、またウクライナ共和国及びその国民による自決に基づく。これは「基本的人権及び自由」を保証し、又人間らしい生活が送れることを約束する。これはウクライナの国民に強い絆を築くものであり、民主的かつ社会的、法治的国家であり続けるよう努める。また我々は神及び過去・現在・未来に生きる人々、そして自己に対して責任を負う。この憲法は1991年8月24日の「ウクライナ独立宣言」に基づき、1991年12月1日の国民投票により定められた。この憲法はウクライナの基本法であることをここに宣言する。
[第21条]「人権及び自由の平等」
[第24条]「憲法に基づく権利と自由・法の下に平等」
[第34条]「言論・表現の自由」
[第35条]「宗教・信条の自由」
など、ウクライナでも国際法より上位の最高法規である「憲法」が「脱共産主義法(通称)」の過程を経て、「ウクライナ」という民族の国家に誇りを持ち、今のロシア侵攻を8年も前から戦ってきた「ウクライナ人の民族的意志の強さ」の礎となった、と言えるのではないか。
 ウクライナという民族国家の安全基盤に関する」ウクライナの法律でも、「言論の自由及び情報の安全の確保」を国益の一つとしている。同法第7条では、不正確であったり、偏ったりする情報の拡散による社会意識を操作する試みを国益や民族国家に対する脅威の一つとして規定している。「国家を守る」ことも「憲法」の役割と位置付けられている。
[出典:「ウクライナにおける言論の自由」田上 雄大著「出版研究 48 2017年」]

 また、「自由権規約B」第20条「戦争宣伝及び憎悪の唱道の禁止」では1項「戦争のためのいかなる宣伝も法律で禁止する」及び2項「差別、敵意または暴力の扇動となる国民的、人種的または宗教的憎悪の唱道は、法律で禁止する」と明白に国際人権規約で定められており「ウクライナ戦争」の現場では同条の法益侵害が堂々と横行している。

【4】中国がロシアに軍事支援すれば国際法違反の制裁対象か?

日本政府はウクライナとロシア両当事国、欧米のみならず、アジア諸国にも激震の走った「対岸の火事ではない重大事だ」と深刻に受け止めてきた。

《日本政府は(第二◯八回国会・決議第〇号)「ロシアによるウクライナ侵略を非難する決議案」を可決した》
ロシアのウクライナ侵攻に明らかにウクライナの主権及び領土の一帯性を侵害し、ウクライナ国民が有する戦争による恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を侵害するものであり、侵略戦争の放棄を定めた国際法の明確な違反であり、武力による威嚇及び武力行使を禁ずる国連憲章の重大な違反である。
 力による一方的な現状変更は断じて認められない。欧州にとどまらず、日本が位置するアジアを含む国際社会の秩序の根幹を揺るがしかねない極めて深刻な事態である。
 本院は、ロシア軍による侵略を最も強い言葉で非難する。そしてロシアに対し、即時に攻撃を停止し、部隊をロシア国内に撤収するよう強く求める。
 
4月28日に首相官邸で日独首脳会談を行った岸田文雄首相とドイツのオーラフ・ショルツ首相。ロシアのウクライナ侵攻でG7諸国と経済制裁などの包囲網で毅然としたロシア牽制を図ることを確認。中国を念頭に、東・南シナ海での力を背景とした一方的な現状変更の試みに反対することでも一致した。ポストメルケルの外交手腕が問われるショルツ氏は「開かれたインド太平洋戦略(FOIP:Free and Open Indo-Pacific)」にも関与を強めることを岸田氏は好意的に迎えた。その後、アジア諸国にも外遊し、インドネシアのジョコ・ウィドド大統領、ベトナムのファン・ミン・チン首相、タイのプラユット・チャンオチャ首相などと相次ぎ会談を行う。
 5月1日、親ロシア派でウクライナ侵攻に対する国連非難決議にも棄権した経緯をもつベトナムのチン首相との会談に臨んだ岸田氏は、「ロシアの力による現状変更」を認めないことを互いに確認した。公式な場でチン氏がウクライナに対する人道支援の必要性を「国際法や国連憲章のもと主権や領土の一体性を尊重する原則が守られなければならず、いかなる地域においても力による現状変更は認められない」として、即時停戦を求める声明を出したのは初めて。大量破壊兵器による威嚇や使用、国際人道法に反する民間人や民生施設への攻撃にも反対する意向を示した。

立憲民主党の小西ひろゆき参議院議員は「中国が軍事的な支援をロシアにすれば、中国政府も国際法違反になるのではないか?」と投げかけ、林芳正外相も「中国も国際法違反になるだろう。中国政府への影響も免れない」とコメントしたことなどを4月24日、自身の支持者らを前に報告した。
 
 兼ねてから外務部会、安全保障部会の野党側・副部会長を務める小西氏は、中国公船が日本周辺で頻回に見える活動量を危惧してきた。「海上保安庁の警察力は、船や船舶あるいは要員の育成に関する整備計画がない」と述べ、「法律に基づく海上保安庁の海上保安体制強化計画をしっかり作り、必要な海上警察力の常時優勢の体制を図るのが要」であり、「防衛省との連携を図る領域警備の基本方針や、いざという時の自衛隊との連携を図るための措置等を盛り込んだ体系的な法律」と説明したという。

 報告会の会場に足を運んだり、オンラインで参加した支持者からは、相次いで質疑の声が上がった。

―欧米が武器供与でクライシス・インターベンションをウクライナに行うのは、国際法違反になるだろうか?

戦闘機を飛ばすのは逆にロシアとの世界大戦になるリスクを高める。米国のジョー・バイデン大統領の言葉を借りればだが。しかしながら戦闘機を飛ばすことは現バイデン政権では行われていない。武器をウクライナ側に渡すということは武器の使い方を教えたり、訓練することも他国であるウクライナに対して米国が担わなければならなくなるということだ。その意味では米国とウクライナが共闘して同じ戦争をやっているということになる。

―日本が自衛隊を支援物資の輸送機としてウクライナに向かわせたり、ドローンを飛ばしたりしているというが、他国への最高法規憲法違反にならないか?

 武器の供与は日本政府の解釈改憲で一部許容する、という見方がある。どういった場合か?まさにウクライナ軍と日本の自衛隊が一体化(「武力行使の一体化」)している場合だ。具体的に言えば、例えばポーランドまで日本の自衛隊が行き、支援する場合は現在の安保法制の範疇ではぎりぎりのラインで違反にはならない。しかし実際そこが「戦闘地帯」の渦中にあれば、明白に違反だ。「重要影響事態法」「国際平和協力法(PKO)」という2つの法律で海外の他国と自衛隊が軍事支援することができる。その9条の合憲か違憲かの分かれ目は戦場にあるか?従来はいわゆる特措法の「非戦闘地域」であれば、お咎めなしだった。しかし「戦場のリアル」を熟知している専門家らに言わせれば、「突然、目の前の虚空に『非戦闘地帯』という見えない透明な銃弾の飛んでこない四角い空間が現れて中に入れば安全だ、などと途方もない絵空事だ」と斬り捨てる。
 もっと分かりやすく言えば、歴代日本政府の9条解釈改憲は、日本国民が今のウクライナ侵略のように軍事行使によって殺害されることは許されない。しかし集団的自衛権の行使が憲法上、許されないことであって不利益が生じるものではない。ゆえに、必要最小限の武力行使は許容されると考えられてきた。

【5】なぜ改名したい?「敵基地攻撃能力」 憲法上「集団的自衛権」行使免責の日本

 この際、問われてくるのが昨今の国会でも取り上げられた「敵基地攻撃能力」の改名に関する政府の狙いだ。
 
 ―「自衛権反撃能力」や「積極防御能力」など、いっそ「反撃能力」にしたい意図が明々な政府に、防衛費の増額も含めて全てボツにしてしまえばいい。どれだけ抑制的に日本が振る舞えるかではないか?

 「敵基地攻撃能力」の議論は古来から言われてきた「個別的自衛権」の議論。敵にやられてしまう前にその(盾となる)基地を持つということは許容されるのだ、という考え方。これには3分類ある。「個別的自衛権」「集団的自衛権」「(先制)武力攻撃(国際法違反)」。自らのためでなく、同盟国のためでもなく、今日の襲い掛かるロシアのウクライナ侵略は「先制攻撃」に該当する。
 今の日本はそれだけの能力を持っていない。もし日本が「先制攻撃」をできるようになれば、「国際法違反」となる。その争点こそが「敵基地攻撃能力」だ。では「敵基地攻撃能力」と「先制攻撃」とは何が異なるか?北朝鮮や中国などの「敵性国家」が日本領土まで届く「ミサイル・核」攻撃を行う場合。日本は「敵基地攻撃能力」をそのまま集団的自衛権を後付けではなく、初めから「集団的自衛権」として使う。
 そうなると、「敵性国家」に日本が攻撃できるようになってしまう。さらに日本の政治家がますます間違った舵取りをする国家に国民を導いていくことになってしまったら、米国と共にモニタリングしてどこを攻撃するか?という、とんでもない「攻撃機能使用可能・国家」になってしまう。過去の戦時中のような過ちを繰り返す国にしてしまって日本の国防の在り方を大きく変えることになってしまったら一大事だ。

 日米同盟の在り方も、問い直さなければならなくなるのではないか。今日の岸田政権下で「衆参憲法審査会」の野党側同会派代表委員を務める「立憲民主党」の小西ひろゆき参議院議員は「憲法9条解釈改憲」と「日本の安全保障政策」を次のように対置させる。

 「集団的自衛権」の行使は、単に日本が憲法9条の解釈において「集団的自衛権」ができないということではなく、主権国家同士の条約「日米安全保障条約第3条」によって、日本が米国のために「集団的自衛権」を行使することが法的に免責されている。ただし、憲法で「集団的自衛権」の行使は禁じられているので、憲法上の範囲内の規定に従うことを条件としている。

 本来ならば、米国政府は日本政府に対し、米国が日本を防衛する義務を負うことを定めた「日米安全保障条約第5条」により、日本も米国に対する防衛面の「相互協力」を求めなければならない。しかし日本は憲法上、「集団的自衛権」が発動できないので、「北大西洋条約機構(NATO)」と比較すると、逆に、条約の文言を特別に選んで、日本が米国のために「集団的自衛権」行使をすることが免責される規定になっている。(図表A・B)

「専守防衛とは、『相手から武力攻撃を受けたときにはじめて防衛力を行使し』」ここまでは二人称の世界で定義されている。ところが、時の安倍政権は次の文言を「同盟国のアメリカが、イランから武力攻撃を受けた時に初めて日本が防衛力を行使し」と三人称に読み替えてしまった。「二人称の世界で日本に攻めてこようとしている悪い国が相手ではなくて、日本の大切な同盟国に攻撃をしようとしている例えばイランなどの外国である」と「相手」なるものを位置付けるならばまだしも、小西氏が「この専守防衛の定義の冒頭の言葉は、先ほどの三者ですね、三カ国の関係でいうと、イランからアメリカが武力攻撃を受けたとき初めて日本国が防衛力を行使する、こういう日本語として読めるというふうに理解されているということでよろしいですね。」と質疑したのに対し、政府参考人(防衛官僚)は「…そういうふうに理解しています」とあっさり認める答弁をしてしまった。 

[©️「立憲民主党」小西ひろゆき参議院議員事務所]
「図表A」日米安保条約第3条・NATO条約第3条    「図表B」「専守防衛」の改変

さらに小西氏は「専守防衛の定義における『憲法の精神に則った受動的な防衛戦略の姿勢』の中の『憲法の精神』とは何か?」と疑義を呈する。「日本の防衛政策の文脈で憲法の精神と言えば、『平和主義』だということは自明の理。しかし、時の安倍政権は、『集団的自衛権』行使を絶対に禁止し、それを封じる力のあった『前文』の『平和主義』を斬り捨てて真逆の意味にしてしまい、『武力行使』を可能にしたと解釈できるよう読み替えてしまった」と憲法解釈の実態を暴露したのだ。(図表C・D)

[©️「立憲民主党」小西ひろゆき参議院議員事務所]
「図表C」専守防衛の「憲法の精神」      「図表D」「憲法の精神」の改変

また、兼ねてから「立憲民主党」の山尾志桜里 衆議院議員は「憲法の権利保障の主眼は、少数派、声の小さい弱者を大切にすることにある。しかし(時の)安倍政権の憲法観は最大公約数の『あるべき姿』を憲法で太鼓判を押す、それ以外の人を排除していくというものではないか」と与党政権を批判してきた。その上で山尾氏は「憲法が権力を縛るもの、という機能を回復する必要があり、『憲法裁判所』の創設を議論すべきだ。内閣法制局による事実上の違憲審査権の無力化。裁判官の人事権の独立性の担保とセットで司法による事前の違憲立法審査制を検討していく必然性がある」と訴えてきた。
山尾氏の掲げる「『立憲的改憲』とは憲法9条を変えることではなく、憲法で三権分立の歪みを正すこと。そして最も危険な権力を持ち得る自衛権の問題とは、『個別的自衛権』の任務を明記。日米地位協定の正常化。『集団的自衛権』を巡り1959年に砂川判決で在日米軍の合憲性が争われた訴訟で、憲法判断が回避された。法律や条約や政府の振る舞いに一定の違憲の疑いがある場合には、公正な判断が下され是正される制度として「憲法裁判所」を創設すべきである。」すなわち国家のビジョンに基づき社会課題を提示し、憲法規範を用いて現実的に解決することから始め、憲法改正はあくまで目的ではなく手段という立場だ。
国際法史上、「集団的自衛権」に基づく大国の武力介入の中で特に旧ソの56年ハンガリー介入、68年チェコ介入、79年アフガニスタン介入など軍事介入した他国が攻撃を受けていたわけではなく、政権交代を阻止するための大国の権益が脅かされた際の口実として、「集団的自衛権」が援用されてきた。
国際社会では「自衛権」を憲法が規範する国家はあまり多くない。だが、日本は「専守防衛」で「個別的自衛権」を憲法事項に限り将来世代まで引き継いでいくという哲学がこれまで国民に浸透していると考えられてきた。
憲法改正で修正を加えた良い先例としては、インドが挙げられる。権力に対する注文が最も多い条文の量という点でマハトマ・ガンディーに見られるように非暴力、非武装の国家憲法だ。改正案により1950年にイスラム教、ヒンズー教無関係に「宗教の自由」と「カースト制度の最下層」にも認められた「表現の自由」条項を作った。
 
 今、小西氏が暴露した「専守防衛」と「憲法の精神」の実態を以ってしても、日本周辺国の安全保障上の脅威論議には、ロシアの「ウクライナ侵攻」以上に、台湾や中国、北朝鮮の方が忌避できない脅威として日本人には卑近に感じる方もいるかもしれない。しかし、2018年に世界中の脅威だった北朝鮮の第4次核危機からロシアに移行したウクライナ戦争で、核のボタンが入っていると見做される「黒いカバン」を持つプーチン氏の側近がうろつく姿が連日報道され、その核のオプションをチラつかせて欧州諸国を恫喝するプーチン氏のえげつない戦法に憤るグローバル市民が各国で立ち上がり反戦デモを続けている。機能不全との批判も上がる国連やNATOがいかに今後、両当事国の首脳と直当たりする「平和外交」を繰り返し粘り強く展開できるか。プーチン氏による「核戦争」の衝動的な武力攻撃を何としても止めなければならない。
 
米国がトランプ政権だった時代に丁々発止でやり合った北朝鮮の金正恩総書記による「北朝鮮第4次核危機」の際、今のプーチン氏以上に衝動的に激情で行動するドナルド・トランプという大統領を止めることは、合衆国憲法が可能にするものだった。国際反核法律家協会副会長の浦田賢治氏は「(米国の報復)核兵器使用に関して『2名承認のルール』がある。一人は米国大統領で、 もう一人は米国国防長官である。もし国防長官が承認しなければ、大統領は国務長官に次ぐ資格者であり、承認する者に要請できる。しかしながら、(閣僚の中で)とりわけ副大統領は 憲法修正第 25 条(1965 年 7 月 6 日連邦議会が発議し、67 年 2 月 10 日成立)の 4 項の定めにしたがって、臨時大統領として職務をおこない、大統領の核使用命令権行使を封じ込めることができる」と指摘していた。「しかも大統領は『2名承認のルール』が充たされた場合でも、閣僚たちに大統領の核使 用命令権行使を告知しなければならず、軍部は大統領命令が令状で明示されかつ適法であ ることを決定する以前に、差し迫った脅威の兆候があることを見極めることを欲するであろう。なお、米国法に加えて、核兵器使用に関する国際条約(国際法・国際人道法)が存在するのであって、何時、どのように核兵器使用ができるかについて制限を加えている。 したがって大統領は単独で核兵器の使用を命じることはできない」と解説した。「政経研メールニュース」(2017.9.15)
 法的にトランプ氏の対北強硬姿勢から核のボタンに手をかける暴走を止めることができると筆者は「憲法」の抑止力に希望をみていた。

 北朝鮮が米国に向けて発射するミサイルが日本に飛来しても、平和憲法が撃ち落とすことを容認するかは定かではない。グアムを狙うミサイルは「集団的自衛権」の範疇に該当し、安倍政権は2014年に集団的自衛権を閣議決定して以降、米国から国防に関してとやかく言われなくなった。要するに、54000人の在日米軍部隊が駐留しているが、警察の捜査権や司法権すら日本に認められていない「日米地位協定」からも明らかなように、日本は米国に利用価値があるか否かの捨て駒としてしか見られていないということだ。北朝鮮にあるミサイルの発射台を先制攻撃する「敵基地攻撃能力」はそれよりもずっと平和憲法第9条2項「交戦権の否認」が容認しないだろう。

「憲法」とは、かほどまでに人類が手を染めてきた戦争犯罪を2度と繰り返さないよう世界中に火種をばら撒く独裁者に楔を打ち込む「伝家の宝刀」たり得るものなのだ。

【6】中国を強烈なまでに意識するNATO ロシアメディアの「QUAD(クアッド)」呼称

[©️BS TBS「報道1930」(4月25日)図表:NATO年表]

NATOはその役割を時代ごとに求められ、存続の価値があると長年、見做されてきた。当初と比べ、「仮想敵国」はいなくなったものの、チェコ・スロバキアやポーランドなどの東欧諸国が相次いでNATO加盟を求めた。ワルシャワ条約機構が解体されてもなお、NATOだけを維持する歴史が続いた。それは時代ごとに戦う相手が「対旧ソ」「対テロリズム」「対ロシア」「対中国」と明確だったからだと言われている。しかし2010年に打ち出された「NATOの新戦略概念」は、もはや現在では通用しなくなった。政治的な側面が及ぼすから長期的に存続するともいえる。

2019年になると、NATOは中国を強烈なまでに意識し始める。新たな機会、サイバー攻撃、戦狼外交など、コロナ以前から中国の習近平政権は、対欧州政策に野心的であった。米朝核戦争の瀬戸際までいったものの、米朝首脳会談で戦争が回避され、ロシアの元工作員のノヴィチョク神経ガスによる暗殺未遂事件で英国のテリーザ・メイ首相(当時)とプーチン氏が「新冷戦」に入ったとEUの戦争リスクが大々的に報じられていた。ところが、米国のINF条約離脱を受けて、NATOが警戒しているのは新冷戦の突入、ロシアと世界の国際共同体ではないか。NATOこそが公式に同盟国の戦略における軍縮の役割を定義する。NATO副事務総長のローズ・ゴッテメラー氏はINF条約について「米国は2014年以降、この条約とロシアの法令遵守について懸念してきた」しかし「全てのNATO同盟国は米国が十分に法令遵守するのであれば合意するが、それにはロシアの動向が鍵を握る」と語っている。ロシアの「TASS」通信によれば、NATOロシア理事会ではNATO―ロシア間の軍事的緊張を減らすことに急ぎ関係つけるよう圧力をかけることに焦点を絞った。ロシアはNATOロシア間でINF条約は欧州の安全保障に極めて重要な役割を担うと宣言し、中国が初めて参画した「ヴォストーク2018」や「トライジャンクチャー2018」の秋季軍事演習で危険な事件の未然防止に最善を尽くすと文書に記録され、実施された。

 「一帯一路」イニシアチブ構想で中国の習近平国家主席はインドのナレンドラ・モディ首相を激昂させたが、中国はそもそも「略奪的経済」の方針を前面に押し出し、4年前には「韜光養晦(トウコウヨウカイ)」路線を完全に放棄した。これは、国際政治学者のイアン・ブレマーと元豪州首相のケヴィン・ラッドのディベートからもつまびらかに明らかにされ、民間レベルでも共有されている中国の「対外政策認識」である。そのモディ首相が習氏と協調路線を取っている背景には何があるのか?インドは、ロシアとも合同軍事演習を実施している。「日米豪印」(QUAD:クアッド)の合同軍事演習だけでなく、南シナ海を脅かす対中軍事演習を日米豪とはイデオロギーの異なるロシアとも組んで実施している。

スコットランドの科学者アレクサンダー・グラハム・ベル氏によれば、「2024年には中国は米国のGDPより、さらにドイツ一国分に相当する、半分も増加し米国を抜かすとの推測がある。中国は2025年には無人自動運転技術やA.I.、ロボット、カンタムコンピューター技術他、10の技術を導入し市場に参画し国内での基盤を確かなものとする。2035年には技術先進国として世界の技術革新立国主導権を握る。そして2049年には中国建国から100周年を迎える」という。

 2022年にはロシアと中国、双方がNATOに入ってくる。中国が既存の勢力を維持して英国が軍艦でアジア太平洋地域まで乗り出し、米国や日本と合同演習するようなことを「NATOの戦略」として打ち出す。(AUKUSではないのか?)

 NATOは、その「加盟国」、「NATOパートナー」、「加盟準備国(高次機会パートナー)」に分類されると言う。
旧ソ時代から、欧州では「ソヴィエトを刺激するな」と安全保障の観点から「畏怖」し、こぞってNATOに加入したがる諸国が相次いだ。
だが、NATO第10条「加入」規定により、「北大西洋地域の『安全に貢献できる』他の欧州の国に対し、この条約に加入するよう、全員一致の合意により招集することができる」とある。つまり、「安全保障に有する実力行使のできる国として戦力になるか否か」という判定に合格しなければ「加入」できないと言うわけだ。この点、欧州諸国は「オープン・ドア・ポリシー」と言う開かれた経済市場として、のみならず、社会的にも文化的にも、外交面でも貿易取引国No.1の中国に、過剰なまでの熱視線を送っているといえる。
2008年にはジョージアとウクライナが「高次機会パートナー(現6カ国)」の豪州、フィンランド、ヨルダン、スウェーデンに次ぎ、加入した。
「NATOロシア基本議定書」「NATOロシア議定書」などの合意により、従来の「仮想敵国」とNATOは「対話」路線を打ち出した。
2014年のクリミア併合以降も対話による解決を望んできたと言う。
では日本には何ができるのだろうか?軍事同盟を目指す、と言うわけにはいかない。日米同盟のみならず、そういうと、中立国のインドを「QUAD(クアッド)」の枠組みに入れられなくなるし、米国主導だと本音を明かせば、対中牽制が名目だとも言えなくなる。日本は「技術協力」などIT人材の充実を図る「人材バンク投資」への貢献も一考される。米英豪の枠組みである「AUKUS(オウクス)」などにも、一つ一つ、できる範囲の協力関係を重ねて馴染みのある国々と安全保障面で共闘していく。

NATO加盟に日本が意欲的だという報道の後、これを受けるような形でウクライナ戦争の当の首謀者であるロシアが「QUAD(クアッド)」のことを「太平洋版NATO」と報じる傾向が最近顕になったことが伝えられた。

自民党の河野太郎 広報本部長が3月17日の「FNN系列」番組出演時に、「NATOをインド太平洋に広げてここに各国が加盟するという議論もできると思う。皆で平和と安定を守っていくという中に日本も入って行く。それは非常に重要だ」とコメント。
あえて入りやすくするため、是々非々で周辺国との妥協点を探り、緩やかな枠組みを目指す。9条解釈改憲や他国間同盟を築く上でも安全保障上の礎となる可能性を示唆した。

[©️BS TBS「報道1930」『北欧が怯えるロシアの影―日本のNATO加盟はプーチン氏に打撃?』解説・堤伸輔氏/ゲスト・小泉悠氏・東野篤子氏(4月25日)]

【7】NATOの核共有政策「ニュークリア・シェアリング」協調は被爆者への「裏切り」

 この抜き差しならぬ、ウクライナとロシアのご時世の時に、「核共有(ニュークリア・シェアリング)導入議論」を「すべきだ」と57%も求める世論調査がある。この空気感は北朝鮮核危機の際の「既視感(デジャブ)」である。当時、自民党参議院議員の松川るい氏は「核抑止力を拡大抑止まで高めることが必要であり、欧州のニュークリア・シェアリングも参照すべきだ」と訴えていた。
 「ニュークリア・シェアリング」とは、「北大西洋条約機構(NATO)」の核抑止における政策上の概念である。核兵器を持たないベルギー、イタリア、ドイツ、オランダ、トルコが米国と組んでいる条約のことだ。有事の際、この4カ国はアメリカの核を使って反撃することができる。平時から米国の核を行使した軍事訓練も行う。
 この議論には、確かに北朝鮮の脅威に対して核武装論を展開する論者も一部には存在する。「『北朝鮮の脅威』というよりは『中国の脅威に対抗するため』」という論である。
 安倍政権下で「集団的自衛権」を容認することで、ニュークリア・シェアリングという軍事外交カードを使える段階へと踏み出した。
日本が核を持つということは何を示すのか?日本が核武装することによって欧米並みの国防を使えることに直結する。
 安倍首相は自民党改憲草案に「自衛隊のあり方」を加憲しようとしていた。
 確かに「国際法」上、日本は「戦争加担国」だ。「イラク人は米軍が日本のどこから出撃してくるのか皆、知っている」という。それは「OKINAWA」だ。1996年当時、内閣法制局長官だった大森政輔氏は安保法制に強く反対してきた人物の一人である。
 だが、その大森氏は「憲法そのものは終戦後にGHQが作成した終戦直後のものであるため、変えなければならない」と述べたことがある。
 私は「修正的護憲派」の立場をとる。自衛隊の存在を認めない日本の市民など、もはやいないだろう。特に現在では志願者が減ってはいるものの、3.11以降、自衛隊による災害救出活動は市民の注目を集めてきた。  「服務の宣誓」に基づく自衛隊の任務が、憲法の例外を定めた条文、憲法13条2項「国民の生命、自由、幸福追求の権利を保護する義務」が政府にはあるから、自衛隊の存在も認めるし、「個別的自衛権」と「日米安保」も合憲と認めるのが「修正主義的護憲派」の立場だ。
 しかし、「憲法9条は平和国家日本のプライド」をかけて守らねばならない。
 憲法9条は1999年5月に世界の平和NGOがオランダで主催したハーグ平和会議の100周年の議場で「各国議会は、日本国憲法第9条のような、政府が戦争することを禁止する決議を採択すべきである」と世界的にも認められた消極的平和と積極的平和の両方の実現を誓った徹底した「非暴力主義の憲法」であり、日本の国宝だと言える。 
しかしながら、日本の自衛隊が民意に反し、軍法会議も自衛官の地位も確立する以前に安保法制の議論がなされてもいないうちから、2011年の民主党・野田佳彦政権下で、PKO5原則に基づき南スーダンに自衛隊が第1次隊から第11次隊まで派遣されて帰国できない状態になっていた。このような前例がありながら、「北朝鮮の脅威」を煽り、自衛官の命を軽視した国策を安倍政権が続けることは断じてあってはならない。と反対してきた。
 司法の場では、札幌地裁で国を相手取って争われていた「南スーダン自衛隊派遣差止訴訟事件」という実例もある。最高裁判所に前例がないことから「イラク訴訟名古屋高裁判決」を判例として参照し、原告側代理弁護団は「平和的生存権の具体的権利性」を主張している。「憲法9条に違反する戦争の遂行等への加担・協力が強制されるような場合には、平和的生存権の主として自由権的な態様の表れとして、裁判所に対し当該違憲行為の差止請求や損害賠償請求等の方法により救済を求めることができる場合があると解することかでき、その限りでは平和的生存権は具体的権利である。」と主張した。
 暴走する国策に対し、憲法9条が自衛官の命と日本の市民の安全を守る上でストッパーとなっていることは明らかであろう。
 松川氏が提言したニュークリア・シェアリングに対して、当時シンポジウムのパネリストだった慶應義塾大学法学部政治学科の西野純也氏(現代韓国朝鮮政治学)は当時の自民党政策の間隙を突いた。
「国防には防衛費がかかることを忘れてはならない。圧力が重要な時だが、対話も重要だ。韓国の文在寅政権は圧力だけではなく、関与も重視している。米国のトランプ氏も同様だ。日本にも同じ圧力と関与を強める外交政策が取れるのか否かが問われている。北朝鮮に核を捨てさせるにはどうすべきか。4つの概念としてあるのは①凍結②延期③停止④モラトリアムがある」と指摘したのだ。
 日本原水爆被害者団体協議会は2017年7月9日に「72年間 被爆者が求め続けてきた核兵器廃絶の実現のために」と題した声明を出した。松井一実広島市長は同年7月に国連で採択された核兵器禁止条約を参照し、原爆投下時に17歳だった被爆者の声を紹介した。核兵器禁止条約が2021年に発効してから早一年以上を経た今、いささか時を戻すが、「広島は核保有国の首脳に核抑止の概念によらず、核廃絶への道を歩むことを望む。さらに地球上から完全に根絶するための努力を期待したい」その本心から核廃絶を願う松井市の語った言葉には嘘偽りなどなかろう。
 唯一の「ニュークリア・シェアリング」とは、核保有しないで米国の核の傘を借りることができるという一見、聞こえだけはいいが被爆者の方々への「裏切り」に他ならない。
 2021年1月22日、核兵器禁止条約が発効した際には、「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」のベアトリス・フィン事務局長が「核兵器禁止条約の発効は重要な意味を持ちますが、これはスタート地点です。日本の皆さんにとって次の課題は、日本政府をこの条約に参加させることです。日本が道徳的権威を持つだけでなく、世界に対し『米国の同盟国でも核兵器を拒絶できるのだ』という例を示すことになる。それが世界の核廃絶運動に大きな影響力をもたらします」とオンラインで世界中に呼びかけた。
今、情報統制が平然とまかり通るロシアとウクライナ両国の戦場で、マスメディアのみならず、発信力を強める市民はなんのために書くのか、誰を後ろに守って闘うのか、その傷ついた人たちの顔が見えにくいロシアに隠蔽された「真実」の掘り起こしに「草の根の力」が「国際平和世論形成」の一翼を担っている。命懸けで戦場を取材するジャーナリストが報道する「ウクライナの真実」をただ受動的に見聞するだけでなく、異国の日本からも何か行動を起こすことが重要だ。国の安全を守るために権力を縛る「憲法」。そして戦争を未然に防ぐか、即時停戦させるには国際政治を監視下に置く必然性がある。
私も一介の書き手として、常に戒訓として記憶している言葉がある。作家の村上春樹氏がエルサレム賞受賞スピーチで語られた次の言葉だ。

「もしここに硬い大きな壁があり、そこにぶつかって割れる卵があったとしたら、私は常に卵の側に立ちます。
そう、どれほど壁が正しく、卵が間違っていたとしても、それでもなお私は卵の側に立ちます。正しい正しくないは、他の誰かが決定することです。あるいは時間や歴史が決定することです。もし小説家がいかなる理由があれ、壁の側に立って作品を書いたとしたら、いったいその作家にどれほどの値打ちがあるでしょう?
爆撃機や戦車やロケット弾や白燐弾や機関銃は、硬く大きな壁です。それらに潰され、焼かれ、貫かれる非武装市民は卵です。」

 現在のウクライナ戦争を生き抜くウクライナのウォロディミフ・ゼレンスキー大統領を筆頭に戦火から逃げ惑うウクライナ市民という「卵」の側に立って戦況を見れば、いかなる政策を執り行う政治家を支持するべきか、が明らかになるはずだ。そして監視しなければならない国際政治の「壁」であり続けるロシアのプーチン氏という独裁者には、ドイツの女宰相メルケル級の外交手腕の手練手管でやり合う「強い信念」が必要だろう。
 日本の岸田首相もインドのみならずアジア諸国各国の首脳と包囲網を作り、この正気の沙汰ではない「プーチン氏の核戦争への恫喝」を止める被爆国ならではの「平和外交」で世界の中の日本人を正しい方向に導く舵取りができるか。日本の行く末にも注目が集まっている。

tomokihidachi

2003年、日芸文芸学科卒業。マガジンハウス「ダ・カーポ」編集部フリー契約ライター。編プロで書籍の編集職にも関わり、Devex.Japan、「国際開発ジャーナル」で記事を発表。本に関するWEBニュースサイト「ビーカイブ」から本格的にジャーナリズムの実績を積む。この他、TBS報道局CGルーム提携企業や(株)共同テレビジョン映像取材部に勤務した。個人で新潟中越大震災取材や3.11の2週間後にボランティアとして福島に現地入り。現在は市民ライター(種々雑多な副業と兼業)として執筆しながら21年目の闘病中。(株)「ログミー」編集部やクラウドソーシング系のフリー単発案件、NPO地域精神保健機構COMHBOで「コンボライター」の実績もある。(財)日本国際問題研究所「軍縮・科学技術センター」令和元年「軍縮・不拡散」合宿講座認定証取得。目下プログラミングの研修を控え体調調整しながら多くの案件にアプライ中。時代を鋭く抉る社会派作家志望!無数の不採用通知に負けず職業を選ばず様々な仕事をこなしながら書き続け、35年かけプロの作家になったノリーンエアズを敬愛。

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