ミュージカル「新テニスの王子様」The Second Stage、「ハイキュー!!」シリーズなど、人気の舞台やミュージカルで活躍する秋沢健太朗さんがすべての作品で主演を務める『人生の着替えかた 秋沢健太朗主演3部作』が公開となりました。<人はいつからでも、人生を新しくすることが出来る>をテーマに3つの視点で描かれたショートストーリー集で、自分の殻を破り新たな人生に向かって歩もうとしている若者たちを描く短編3作品からなるオムニバス映画。多彩な表現力でそれぞれの主人公を好演する秋沢さんの演技力にも注目です。その一編『お茶をつぐ』のメガホンを握った篠原哲雄監督と秋沢さん本人に、作品に込めた想いをうかがいました。
■公式サイト:https://joji.uplink.co.jp/movie/2022/12707 [リンク]
●今回の主演3部作という企画を聞いた時、率直にいかがでしたか?
秋沢:当初は短編映画を作ることから始まり、ただ、映画館で上映するとなると1本だけだと短いので最終的にこの形式になったのですが、本当にうれしいことだなと思っています。撮影も3作品とも別な時期で、「ミスりんご」はコロナ禍の前、「お茶をつぐ」はコロナ禍の始まりの頃、「MISSING」は完全にコロナ禍でやり方も変わったので、思い入れがありますね。時代の転換期をまたいで作品に入ったという感じです。
篠原:僕が参加した時は「ミスりんご」がもう出来ていた状態で、健太朗君と新たな作品を撮りましょうという状態でプロジェクトに入りました。僕はたまたま彼を主役にするならば、おもてなしをする男がいいだろうと思っていましたのですが、偶然お茶の世界に近しい人がおり、その話をやりたいとも思っていた頃だったんです。
●どうしておもてなしをする男がいいだろうと思ったのですか?
篠原:彼はスマートで、彼のファンクラブなどを見ていると女性が多く、ファンサ、リップサービスも多いんですね。今回の場合、彼のファンにどう受け止められるかがまず重要ではあるので、それがまず大きく広がっていくことが目的であると。2017年の撮影の『君から目が離せない ~Eyes On You~』という前作をやった時は、ファンが何度もリピートしてくれていたんですよ。なのでまずはその人たちに、作品を打ち出していきたかったですね。そして新しい顔を見せていくことも大切になってくる。
●その意味では3作品ともまるで別人のような表現力で、成功したと言えますよね。
篠原:ジャンルもまったく違いますしね。「ミスりんご」はブラックなコメディで活劇的なもの。「お茶をつぐ」に関してはもてなしの男という出発点から、聴覚障害の話も加わっていく。単に親から継ぐだけでなく、ある種のハンデを背負った男が挑み、本当は理解したかった父親との軋轢、そこがドラマの軸になっていく。「MISSING」も含めて、偶然のような必然のような形で3本とも違う作品になったので、確かにこれならいけるとは思いました。
秋沢:篠原監督は映画に限らず、僕のことを見てくださる機会が多くて、僕はいつでもそばに感じている存在なんですよね。なので、映画である役柄をやったからあるイメージが残っているのではなく、本来の僕の中にあるものを見てくださっている。がむしゃらで、自分の発する言葉などがわからなくなる瞬間が僕の中にはあったりするんですけど、そういうところをひっくるめて魅力を引っ張り出そうとしてくれるんです。それは今回も、はっきりとわかることでした。
●3本観ていかがでしたか?
秋沢:今みたいに映画に携わってる方が観た時に、「なんだ、舞台でちょっとファンがいる人の映画だ」と思われたら終わりだなと思っていました。これが何回かイベント上映して終わりであれば、それはもうファンイベントなんですよね。そうじゃなくて、前に監督が別の作品で登壇した時におっしゃっていたのが、旅をする作品になってほしいと。作品の撮影は1回きりだけど、残り続ける。そして今回、そういう意味での作品にちゃんとなったなと自分では思えたので、すごくうれしかったです。
●改めて映画を待っている方へ一言お願いいたします。
秋沢:客観的に観た時に、これをきっかけにいろいろな作品に出たいという欲は俳優であれば誰しもあると思いますが、それはもう度外視です。作品は残ってほしいし、たくさんの人に観てほしいです。僕のファンの方はもちろん、男性でも子どもでも、どこかで機会があれば観てほしいです。「これは僕の作品です!と胸を張って言える、そういう作品になりました。
篠原:映画はシンプルな話、観られて初めて存在するものではあります。旅という意味では、それはこれからなんですよ。生まれたばかりなので(笑)。これから上映されて、全国に行くことが望ましいです。どうなるかはわからないけれど、こういう形でひとりの俳優が3本の作品で主役で世に出ることは、あんまりない。この流れは今後、重要になっていくのかなと。そういう楽しみも感じる3部作でもあります。
■ストーリー
「MISSING」
天ケ瀬透(秋沢健太朗)の兄・翔(中村優一)は、妻とそのお腹の子の死の原因をつくった男に暴行して、指名手配されていた。その手配書のせいで、透はどんな仕事についてもうまくいかず、憤る日々を送っている。透には、幼い頃、シャボン玉で遊んでいたときに兄に殺されそうになったという微かな記憶があり、兄への不信感と嫌悪で溢れていた。知り合ったばかりの彼女・ひまりにも言い出せず、剝がして捨てていた兄の手配書を見られてしまう。隠そうとする透に対して怒ったひまりは出ていくが、透は「また兄のせいだ」と落ち込む。そんな折、翔が傷つけた男が町に戻ってきた。それは翔の耳にも届いており、決着をつける前に透のもとに現れる。そんな兄に怒りをぶつける透だが、翔のある覚悟を感じ取り、後を追う・・・。
「ミスりんご」
ひと山あてて金儲けを企む大沢健二(秋沢健太朗)と横山雄介(反橋宗一郎)。健二の地元でもある秋田で、二人はうっかりオレオレ詐欺の手伝いをしてしまう。お金を引き出して元締めのヤクザに手渡そうとする矢先に、ハプニングに巻き込まれ、そのお金を持って逃げ回る羽目に。逃げる途中、秋田美人「ミスりんご」を決めるコンテスト会場をみつけ、いい隠れ蓑になると参加したところ、なぜか二人とも優勝をしてしまった!? しかも同じくミスりんごに選ばれた遠藤エミ(加村真美)に同時に一目ぼれ。成り行きで逃げ込んだ家の初老の男・遠藤洋一(大谷亮介)は、なんと エミの父親!!右往左往の運命は吉とでるか、凶とでるか・・・。
「お茶つぐ」
本堂雷太(秋沢健太朗)は、日本茶店・ムツミ園の長男。彼には聴覚障害があり、父・耕三(篠田三郎)が亡くなってからも家業から目を背けて過ごしていた。姉・瑞穂 (美紗央 は店を雷太に任せたいのに、何を考えているのか分からない弟がもどかしくて仕方ない。ある日「この店、俺が継ぐから」と父の知人だという川上貞二(木村達成)がやって来る。父は合組という技術で独自の茶葉<ムツミ>をブレンドし、常連客たちに提供していた。その父が亡くなり、<ムツミ>を合組できる者が今はいない。貞二が持ってきた父の遺言には「店の全権を貞二に譲る」とあるが 、最後の一行に「長男・雷太が遺言書の存在を知ってから 24時間以内に<ムツミ>の合組に成功したら、店は雷太に譲るものとする」と書かれてあった。雷太は、怒りと焦りのなかで奮闘する。翌日、常連客たちに合組した茶を振る舞い、判定してもらうが、簡単に完成するわけがなく、雷太は貞二に敗れてしまう。だがこの一連は、聴覚障害の息子とうまく会話ができず、自分の本当の気持ちを伝えられずにこの世を去った父の願いがこもった企みだった・・・。
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