難解な芸術作品を観ると「なぜ評価が高いのか」と首をかしげることがないだろうか。ベルギー・ブリュッセルに現れた、前衛的なクリスマスツリーを目にした人々は、首をかしげるどころか、怒りを示す事態に。今、欧州を代表する街では、クリスマスツリーを「撤去すべきか否か」という論争が起こっている。
すべてのはじまりは、現地行政の有力者が「私たちが普通イメージするクリスマスツリー」ではなく「キューブ状のライトを組み合わせてつくったツリー(に見立てたもの)」を選んだことから。『X-mas 3』と名付けられたツリーは、高さ25mまで積み重ねたキューブで構成されており、緑色の光を不規則に放つ。
なかなか実験的なイルミネーションだが、ブリュッセルに住む人々の評判はよくないようだ。国民の大多数がキリスト教徒という背景もあるのだろう。ツリーの価値と伝統を守るために立ち上がった2万人以上は、問題のツリーの撤去を求めて、オンラインの署名に参加したとのこと。
署名に関しては様々な声が上がっている。キリスト教民主フラームス(党)の議員は「非キリスト教徒の歓心を買うためだ」と賛成の意向を示す。逆にネット上では「本質は多文化主義への攻撃だ」「イスラム嫌悪症ではないか」と言う声も。論争から距離を保っているのはムスリム・コミュニティーの代表者で「我々はキリスト教国家で暮らしている。伝統的なツリーにとやかく言う気はない」とコメントしている。
結局、行政側は「モダンと伝統をブレンドしたツリー」と批判を一蹴し、撤去には応じない考えを示した。どうやら今シーズンいっぱいは撤去されない模様だ。
画像: ブリュッセルのクリスマスツリーをめぐる一悶着を伝えるサイトのキャプチャー
http://rendezvous.blogs.nytimes.com/2012/12/01/christmas-tree-controversy-fires-multicultural-belgium/?partner=rss&emc=rss