残念なニュースを目にした。2月14日付、日本経済新聞の記事を一部転記する…
ベネッセHD、語学教室「ベルリッツ」を売却
ベネッセホールディングス(HD)は14日、語学教室を手がける全額出資子会社ベルリッツを売却すると発表した。グループで語学教育サービスを手がけるカナダのILSCホールディングスが保有する特別目的会社に、同日付で全株式を譲渡する。譲渡額は明らかにしていない。
ベルリッツは米国に本社を置き、世界の約70カ国・地域で語学教室を展開している。近年は競争が激化したうえ、新型コロナウイルスの感染拡大も逆風となり、業績不振が続いていた。
意外に知られていないかもしれないが、語学学校のベルリッツはベネッセのグループ会社で、本部はニュージャージー州プリンストンにある。1993年に当時の福武書店が買収し、企業は飛躍的に伸び、後にベネッセと社名変更した。
ニューヨークには長い間、地価が異常に高いロックフェラーセンターにランゲージセンターを置いていた。日本人駐在員が多かった頃は、立地の良いそのランゲージセンターへ日本人駐在員が英語を習いに行っていた。言うまでもなく授業料は会社負担である。
ベルリッツの授業料は他の語学学校と比べ高いが、ニューヨークは教育にお金をかける人が多い為、そして特に日本人駐在員の生徒の比率は圧倒的に高かったはずだ。
時代は変わった。ニューヨークにある日系企業の数は減っている。例えば5番街に自社ビルを持っていた高級志向のスタイルで展開していた高島屋は、2010年にアメリカでの事業を撤退し、自社ビルも売却した。
90年代には西武百貨店の西武アメリカもニューヨークにあったし、三越と伊勢丹もそれぞれにニューヨーク事務所を構えていたが、令和に入った現在、西武アメリカは当の昔に当然撤退、日本でも株式会社そごう・西武は現在売却の憂き目に遭っている。
2011年には三越と伊勢丹は合併し、そのニュースを知った時、まさに驚愕したが、ニューヨークの両社のオフィスも統合されることになる。
例題をニューヨークにあった日本の百貨店のニューヨーク事務所でご説明したが、90年代には西武百貨店、高島屋、三越、伊勢丹がそれぞれニューヨークにオフィスを構えていたが、2022年現在三越伊勢丹しか存在していない。三社は無くなっている。
ベルリッツにしてみれば、こうして日本のニューヨーク支社、支店、事務所が閉鎖されるとドル箱の駐在員生徒を数多く失うことになった。
また、語学学校はオンラインが主流になり、ベルリッツより安い価格設定の学校が増えたため、更に生徒の流出を招いた。まだ、親会社のベネッセに勢いがあれば立て直しも検討されたかもしれないが、母体も思わしくないのでベルリッツは売却の道しか残されていなかったのかもしれない。企業イメージが良いベネッセだっただけに、ベルリッツを手放したニュースは少し寂しい。
ただ、一番の打撃は共同通信の記事にあった『ベルリッツを巡ってはオンライン授業を展開する競合他社の台頭に加え、新型コロナウイルス禍が業績上の重しとなっていた。』の一言に尽きるだろう。
全世界のベルリッツの社員たちは就職活動を始めなくてはいけないだろうし、プリンストン本部で働くベネッセからの駐在員は、残務処理を終えて日本へ帰国するだろう。ベルリッツを売却することで多くの社員たちは人生の岐路に立たされることになるのだ。
(Photo:https://www.flickr.com/photos/noway/540065970/sizes/z/)