アメリカのニュースで見聞きする パーソン・イン・カラー(person in color)という耳障りの悪い言葉

  by あおぞら  Tags :  

 アメリカにはいくつもの主要都市がある。ニューヨーク市、ロサンゼルス市、シカゴ市、それにボストン市も主要都市である。ハーバード大学があるアカデミックな大都市でもある。そのボストン市長に初の女性市長が誕生する。

 政治の世界も徐々に女性に門戸が開かれ、主要都市の女性市長当選は明るい兆しを感じる。ところが、ボストンに女性初の市長誕生のメディアの記事見出しが気にかかる。以下は主要メディアの記事で、見出しは『女性初のボストン市長』に関してだが、person in color がとても気にかかる。先ず、各メディアの記事見出しをご覧いただこう。

Wu becomes first woman, person of color elected as Boston mayor
ロイター通信
Boston Elects Its First Woman Of Color As Mayor
フォーブス
Michelle Wu makes history as 1st woman and person of color elected as Boston’s mayor
ナショナル・パブリック・ラジオ
Michelle Wu becomes first woman and person of color elected mayor of Boston, AP projects
NBCニュース
Michelle Wu makes history as first person of color and woman to be elected Boston mayor
ワシントンポスト

 このパーソン・イン・カラー(person in color)を引用していない記事は、ニューヨークタイムズとウォール・ストリート・ジャーナルだった。他にもあるかもしれないが、流石この2紙は見識が高い。

Michelle Wu is elected mayor of Boston.
ニューヨークタイムズ
Michelle Wu Is First Woman Elected Boston Mayor
ウォール・ストリート・ジャーナル

 ニューヨークに生活している中で、この街は世界各国からの移民により成り立つので、アジア人であることで人種差別を受けたことはほぼないと思う。小さいことを言えば全くないとは言えないが、ニューヨーク自体は人種に対しては寛容に思える。

 しかし、人種差別を感じるイヤな言葉が先のパーソン・イン・カラー(person in color)で、所謂、有色人種のこと。私は勝手ながらこのイヤな言葉は主に黒人に使われると思っていた、これも随分失礼な話ではあるが、それにしても耳にして気分の悪くなる言葉で、ニュースではよく引用される。因みにアナウンサー、キャスターはやはり白人の比率がこの国は多い。

 ボストン市長に中国系の女性が選出されたのは喜ばしいことだが、記事見出しのパーソン・イン・カラー(person in color)で『そうか、アジア人はそれ程肌の色は濃くないが、白人からみれば有色人種なのだな…』と、差別される側の気持ちに一気になってしまった。
 
 アジア人は中途半端な人種で、白人でも黒人でもない中間のような印象。肌の色はどちらかと言うと白人に近いので、パーソン・イン・カラー(person in color)は、チョット衝撃的。しかし、このような表現もいずれなくなるのではないだろうか。

 言葉は時代と共に変化する。例えば、アジアという呼び方は数十年前はオリエンタルなどと呼ばれていた。しかし、そのオリエンタルは蔑視にあたると、オリエンタルの呼び方は消え、アジアに変わった。

 …..ここまで書いて、ニューヨークタイムズのボストン市長誕生のニュースに掲載されている写真の解説を見ると『Michell Wu is the first woman and the first person of color to be elected mayor of Boston.』としっかり書かれていた。

 ああ、人種差別はされてみてその立場が分かる。アジア人は有色人種でよかったのだ。だって、非白人の立場ならこうしてキチンと差別されている。21世紀に入っても、未だに肌の色を記事見出しに記さなければいけないのか❓ 

 この国、アメリカは人種差別が無くなるのには、まだまだ途方もない年月を要するだろう。

(Photo: 次期ボストン市長、ミシェル・ウー氏の公式ツイッター@wutrainより)

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