【衆議院総選挙2021】若手中堅議員の国会論戦を振り返る「介護・障害児者福祉と全世代型社会保障」

  by tomokihidachi  Tags :  

【「全世代型社会保障検討会議」最終報告@NHK】

衆議院議員総選挙の投開票が10月31日。これまでにマスメディアでは連日、与野党8党首の舌戦が火花を散らした。
ここでは各党首討論ではなく所謂若手や中堅議員の国会論戦から「介護・障害児者福祉と全世代型社会保障」のテーマを取り上げる。
 総選挙は国民が直に国会議員を選ぶことのできる場である。主権者運動でこの時ばかりは政治家と国民の力関係が逆転する。日頃から行政の執行権をチェックする国際法よりも上位にくる最高法規の憲法で権力に縛りをかけられる国民が主役であるべき選挙だ。
選挙カーで聞こえのいい人気取りや政策をウグイス嬢に呼び掛けさせたり、応援演説を力に辻立ちしてパフォーマンスする政治家候補者たちの言動を振り返る意味でも、皆さんが正確な取捨選択の眼差しを向けられる一助となれば幸いである。

【「野党共同で「障害者福祉3法案を提出」@立憲民主党HP】

【厚生労働委員会で「障がい福祉3法案」の趣旨説明に立ちました。@山花郁夫立憲民主党HP】

第201回国会衆議院厚生労働委員会(令和2年5月15日)で、立憲民主党の山花郁夫議員が筆頭提案者になっている「地域共生社会のための社会福祉法等の一部を改正する法律案」「介護・障害福祉従事者の人材確保に関する特別措置法案」「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律及び児童福祉法の一部を改正する法律案」並びに「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律の一部を改正する法律案」について野党共闘の所謂、「障害福祉3法案」が提出されたことを受け、同党の西村智奈美議員が質疑した。野党からは次の要望を求めている。

1)介護・障害福祉従事者の賃金の改善
2)ホームヘルパー等へのセクハラ、パワハラ防止。
3)食事提供加算の廃止をしない。
4)送迎加算については不利な内容の算定基準を定めない。
5)移動中の介護を重度訪問介護の対象とする。

【「厚生労働省委員会」質疑する「立憲民主党の西村智奈美議員」@立憲民主党HP】

「医療崩壊」と言われてきた病院にはやっと協力体制の手が回ってきた。しかし障害福祉施設は高齢者や障害者の現状について新型コロナウイルスのクラスターが発生しており、防護服やマスク、消毒など対応に追われ神経をすり減らした現場で勤務している介護福祉士や社会福祉士などの離職が深刻な問題だ。しかし、その問題の根本にあるのは、精神的、肉体的にきつく、利用者の排便や吐瀉物など汚く、その割には賃金が安すぎて、なかなか給与が上がらない。という「3K」の労働環境の抜本的改善が一向に為されないという現状だ。

衆法筆頭提案者の立憲民主党 山花郁夫議員は「離職の原因の核を成す早急な賃上げが必要だからこそ、介護・福祉従事者人材確保法案は、ケアマネージャーや現場の介護職員と管理部門の職員全体に平均一人あたり月額一万円賃上げすることを想定した給付金の支給に規定をしているところだ。給与以外の処遇改善も議論している。」

【「厚労相 加藤勝信氏答弁に立つ」@東京新聞】

厚生労働省の加藤勝信大臣(当時)は「『高齢者分野、障害、子ども、生活困窮』」の補助金や相談窓口を束ねて総合事業のように一本化する。市町村全体で支援機関による包括的な支援体制を構築することで全ての住民を対象とした支援を実現し、複雑化した支援ニーズに対応していく。すでに(※要確)『モデル事業』も実施している。『高齢者分野、障害、子ども、生活困窮』」各法の実施義務に基づき審議を重ねているが、いずれも施行が令和3年の4月から具体的な予算は令和3年度以降になる」と答弁した。

これを受けて西村議員は「4分野に是非予算をつけてください。生活困窮者自立支援法の拡大バージョンを見本に。この支援法で柱になっているのは就労準備支援と家計改善支援であって、今のこのコロナ禍で起きている現状にはその二本柱で対応できないものがたくさんある。例を挙げれば、緊急小口資金の終了後もどうするのか、大きな課題だ」。

これを受けて加藤厚労相は「生活確保給付金等、緊急小口資金の貸付け、場合によっては社会的弱者である生活保護を紐つけていく」と回答した。

また、次に質疑に立った立憲民主党の山井和則議員は「議員立法の子ども支援法案、一人親家庭の低所得層の児童扶養手当を半年間に限って事実上倍増するという法案を提出した。並びに貧困家庭のお子さんたちの支援については公明党の高木美智代 衆議院議員も安倍晋三首相(当時)に児童扶養手当の増額を要望していた。また自民党もこの法案に前向きであると聞いた。逢坂政調会長、岸田政調会長の与野党協議の5つのテーマのうちの一つにこの児童扶養手当の拡充が上がっているとの声もある」。

【山井和則を応援する会@Facebook】

当時、まだ政調会長だった自民党の岸田文雄議員は、この時点から与野党共闘を社会保障・児童福祉に重きを置いて活動していた。
後にこれが菅義偉首相に交代し「全世代型社会保障検討会議」が立ち上げられ、満を持して自民党総裁に就任した岸田氏はこの安倍、菅路線の社会保障政策を踏襲した。

山井氏は続けて質疑した。「『しんぐるまざあず・ふぉーらむ』という団体からヒアリングしたが、シングルマザーの二人に一人が非正規で、そして派遣やパートで切られてしまった。非正規雇用の給与がほとんどなくなり、このままいくと時間の問題で親子心中が起きてしまうのではないか。児童扶養手当の大幅な増額、あるいは特別な給付金措置をしなければ、コロナ禍で死者を出す前に与野党共同で救済していくべきではないのか。また全ての介護現場に『危険手当』というものを出していただけないか。なぜかというと、欧米でもコロナによる死者の約半数は介護施設における集団感染だからだ」と危惧していた。

これを受け加藤厚労相は「総理からも令和2年度第二次補正予算に取り掛かると伺った。令和2年度の第一次補正、二次がある。一次補正予算において休業要請を受けた事業所、感染者が発生した介護施設の職員の確保に関する費用や消毒の費用などかかり増し経費についても助成を行う。」と答弁。

安倍、菅政権から岸田文雄首相に引き継がれる「全世代型社会保障」の「骨太の方針2019」は令和元年6月21日に閣議決定された。
本方針の中に明記された「医療提供体制の効率化」では、2040年に向けて人材不足等の新たな課題に対応するため、地域医療構想の実現に向けた取組、医師偏在対策、「医療従事者の働き方改革」を三位一体で推進し、総合的な医療提供体制改革を実施するという。
地域医療への移行は「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築に係る検討会」においても、長年の精神障害者運動が現場レベルで求めてきた歴史があり、重要な議論として認識してほしい。また「地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会」が立ち上げられ「令和5年度末で期限を迎える医療計画の見直しに向けた精神保健医療福祉体制」が検討事項として挙げられている。「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」の理念を踏まえた医療提供体制、医療計画の基準病床数及び指標が議論の俎上に乗っている。この件については前述「骨太の方針2019」でも、諸外国と比べて高い水準にとどまる入院日数の縮小を特に精神病床の現状改善目標としても議題とされている。

2020年12月17日には「全世代型社会保障」の議論とも分けて考えられない前述の目指すべき目標として「医療提供体制」の中に精神障害者にも対応の地域包括ケア、と求められる人材像を提示し、並びに同体制に「21年度の障害福祉サービス等報酬改定は0.56%引き上げる」とした。

精神障害者の課題は高齢障害者にもスポットが当たる。厚生労働省は2040年までを見据えたモデル事業として「医療・介護・福祉サービスの生産性向上に向けて」と題し、その一つに介護ロボット活用による特養での効率的な配置の推進を全国展開する。その例示として「見守り機器導入後、夜間の入所者への訪室回数、巡回などに係る時間が減少。ヒヤリハット・介護事故件数も減少」を挙げた。

 (社)日本精神科病院協会の政策委員会委員長の櫻木章司氏は「地域医療構想ガイドライン策定に関する意見」として、「地域医療ビジョンは精神疾患を含む地域の医療計画の一部であり、一般医療との連携が密接不可分である。(精神障害者は)次第に高齢化が進み、生活習慣病など罹患率の高い身体疾患との合併症の援助が必要である。認知症を初めうつ病、ストレス関連障害、依存症等精神疾患を持つ患者の地域生活支援。また自殺対策としてうつ病対策のみならず睡眠障害や食欲低下の身体症状にも一般医療と精神科医療の連携が重要である」との要望書を提案している。

障害者権利条約に詳しい池原毅和弁護士の言質を引けば「新自由主義国家における福祉は、弱肉競争の社会から見て勝者がどうしても提供せずにはいられない時だけ提供される傾向にある。それは社会的に周辺化され、ついには犯罪へと陥った人が社会の周辺で再犯罪化しないでなんとか暮らしていくことができる範疇で提供される。本来の生存権保障とはナショナルミニマムを保障し、憲法第13条「幸福権の追求」を保障するものだが、新自由主義国家では常に就労化に向けた圧力をかけて生活自助責任を果たさせようとし、ナショナルミニマムの保障は国家の義務のミニマム化へと変質している。福祉の役割はマジョリティーの懸念する犯罪や社会の不安定化を防ぐことが必要十分条件になる。」と障害者が本人の意図しない軽微な犯罪に警察から誘導尋問を受けるケースが常態化していることを憂う。
【「障害者権利条約からみた障害のある人の法的手続きにおける権利」@池原毅和】

精神障害者の症状の例で幻聴の解明においては高度に哲学的な議論が入ってくる問題であり、司法精神医学では「可知不可知論」が。
そして前述の池原氏の「新自由主義(自己責任と応益負担)」という社会保障のこれまでの思潮との関連性が礎としてあり、当事者や現場レベルから問いかけたり問題が起きた後でなければ、政治の国策は動かない。

遅筆で大変申し訳ないが、西村智奈美議員の「バックアップがないと小さな声が届かない」と厚生労働省委員会で訴えた言葉が今後の皆さんの清き一票に関わってくると思う。

tomokihidachi

2003年、日芸文芸学科卒業。マガジンハウス「ダ・カーポ」編集部フリー契約ライター。編プロで書籍の編集職にも関わり、Devex.Japan、「国際開発ジャーナル」で記事を発表。本に関するWEBニュースサイト「ビーカイブ」から本格的にジャーナリズムの実績を積む。この他、TBS報道局CGルーム提携企業や(株)共同テレビジョン映像取材部に勤務した。個人で新潟中越大震災取材や3.11の2週間後にボランティアとして福島に現地入り。現在は市民ライター(種々雑多な副業と兼業)として執筆しながら21年目の闘病中。(株)「ログミー」編集部やクラウドソーシング系のフリー単発案件、NPO地域精神保健機構COMHBOで「コンボライター」の実績もある。(財)日本国際問題研究所「軍縮・科学技術センター」令和元年「軍縮・不拡散」合宿講座認定証取得。目下プログラミングの研修を控え体調調整しながら多くの案件にアプライ中。時代を鋭く抉る社会派作家志望!無数の不採用通知に負けず職業を選ばず様々な仕事をこなしながら書き続け、35年かけプロの作家になったノリーンエアズを敬愛。

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