< 海から引き上げられたヴァイキング船 (ヴァイキング船博物館、ロスキレ、デンマーク/著者撮影/NikonD200)>
< ヴァイキング船製作中 (ヴァイキング船博物館、ロスキレ、デンマーク/著者撮影/NikonD200)>
ヴァイキング船は帆船というよりは「帆付きの大型手漕ぎボート」といった風情で屋根さえない。ヴァイキングが少なくともヨーロッパに最初に到達した(目的は当然略奪)のは8世紀終わり頃の英国リンデスファーン島の修道院と言われる。屋根もない船で雨風にさらされながら数週間かけて北海を渡ってくるわけで、それはそれは厳しい航海だったであろうことが想像できる。
この博物館でつくづく感心したのは、海底から引き上げられたヴァイキング船(ないしは船の破片)を展示しているのみならず、実際に作っている…ということだ。もちろんヴァイキングの造船技法など途絶えてしまって久しいわけで、この博物館でヴァイキング船の造船技術をなんとか習得して作れる船大工を育てようとしているわけだ。政府の予算で…。
ヴァイキング船なんて今更作ってどうするの?と言いたくもなるが、自国の強みになりそうなことに関してはとことん投資するというのがデンマークのような小国のやり方だ。
我が国を振り返ると、伝統的な技術は数しれないにもかかわらず、保護活動については民間に任せっきりのように見える。そりゃあ博物館となれば研究員の二人や三人はいるんだろうし、お金も出ることには出るんだろう。が、何よりも必要なのはヴァイキング船博物館のような伝統文化を発信するだけではなく、守り育てていくための拠点を作ってあげることじゃないか?
了