21歳で脊髄症を発症し、引きこもりになった佐藤選手。きっかけはリオ・デ・ジャネイロ五輪大会で3大会連続出場の車椅子アスリートの松永仁志選手(WORLD-AC)に師事してからのこと。世界選手権初登場の400m金メダルに輝き、返り咲いた。自信をつけた佐藤選手が日本中が切望した金メダルの二冠を誇らしげに掲げた。
【パラ×コロナ×自然破壊】
東京パラリンピック2020が盛況だ。
あれほど「やめろやめろ」と日本国内外から妨害されても蓋を開けてみたら、パラ陸上車いす400M競技金の佐藤友祈選手が1500Mでも金メダルを獲得するなどメダルラッシュは続いている。過去に戦争が原因で中心になったオリンピックは3度ある。第一次世界大戦を起因とする1916年の夏期五輪。そして第二次世界大戦で中止になった1940年の夏季五輪と1944年の冬季五輪だ。その感染症を過去の事例から見ていけば、パンデミックを挙げるとすれば2009年の新型インフルエンザ(H1N1)が流行し延期して開催された2010年のバンクーバー冬季五輪が過去にある。またリオ・デジャネイロ夏季五輪の前にはジカ熱流行問題が浮上した。
昨年初めに勃発した新型コロナウイルス感染症の第五波で、貧困は途上国だけの問題ではなくなった。
「相対的貧困率」は世界の国別に見ると、経済協力開発機構(OECD、37カ国)の加盟国では、平均で11.7%(2016年)の人々が「相対的貧困」に該当する。厚労省によると、日本は平均よりも高い15.8%(18年)。シングルマザーなど一人親世代では48.2%に上る。雇用形態が不安定にある人や女性など立場の脆弱な人ほど経済格差が生まれやすい。
2021年8月29日。東京で今日、新たに3081人の新型コロナウイルス感染者が確認されたことが分かった。新規感染者は7日連続で前週同曜日と比べて下回ってだった前日比296人と80%/3784週比。過去最多は東京都基準で重症者は前日比10人増の2070人連続で最多だった。
小児が「相対的貧困」の中で「重症化」しているのは何も日本だけに止まらない。
アメリカ疾病対策センター(CDC)は、「抗原検査は感染早期を中心とした42%の陽性者を見落としていた」と「米内科学会誌」に打ち明けている。
小児ワクチン接種で最大の課題は「心筋症・心膜炎」であろう。8月25日にイスラエルの研究者が発表した研究結果で、「心筋症・心膜炎」のリスクは34.24倍上昇するが、コロナに罹患した時18.3倍増加する。
中国は武漢初のコロナウイルス発祥の地としての負の連鎖を巻き返すべく、2020年3月頃に経済パワー外交「一帯一路(BLI)」で沿線国家であるイタリアやセルビア、東南アジア、アフリカ、中南米に緊急医療支援に乗り出した。暴れん坊ドナルド・トランプ前米大統領から交代したジョー・バイデン新米政権で
インド太平洋調査官を担当し、米国のアジア政策キーマンのカート・キャンベルはコロナウイルスの渦中にある今、あえてポスト・コロナ時代を見つめる。
キャンベルらは米国の従来の世界の指導者として支柱になってきた3つの分析を指摘する。
①優れた国内統治の実施
②国際社会に対するグローバルな公共財の提供
③危機に対する国際対応を掌握する
厳密な分析と言えるだろう。
翻って、中国の習近平国家主席の動向を見てみよう。2020年1月25日に中国共産党中央政治局常務委員会を催した。翌日には中央新型肺炎対策指導小組が招集された。習氏は「治療薬とワクチンの研究開発を急げ」と語気を強めた。
2020年5月18日、世界保健機関(WHO)第73回世界保健総会(WHA)で習氏は述べている。
「中国が新型コロナウイルスワクチンの研究開発を終え、その使用を開始したら、世界の公共財とする」。
習氏の鶴の一声で、中国国営のシノファーム(中国医薬集団)やシノバック・バイオテック(科興腔股生物技術)などを主体に大規模なワクチン開発を行なってきた。その治験はパキスタン、サウジアラビア、ロシア、インドネシア、ブラジルなどで実施されてきた。
2021年6月「New York Times」紙は中国製ワクチンの接種をすでにセーシェル、チリ、バーレーン、モンゴルなどコロナの拡大が畏怖される危機的傾向になるとして、別種のワクチンに切り替えた。
このような中国対外政策を「ワクチン外交」と呼ぶ。2021年2月までに50数カ国の開発途上国に無料提供した。
またWHO主導のCOVID-19 Vaccine Global Access (COVAX)ファシリティーを通じ、1000万回のワクチン提供はすでに済ませた。
「集団免疫」を早く獲得すべくワクチンの確保を目的に「ワクチン・ナショナリズム」と冠する「先進国と開発途上国」で「二極化」が進んでいる。
中国の「ワクチン外交」に並び、近年言われるのは「エコノミック・ステイトクラフト」だ。ワクチンを逆手にとって地政学的に脅威を翳す。
中国は新型コロナウイルス対策における主導権を発揮する。そしてポスト・コロナ時代を見据えた米中覇権争いを自国に優位にしようとしているのではないか。
東京大学グローバル・コモンズ・センター石井菜穂子は「なぜコロナの感染が起きたのかを考えることが重要だ。それは無計画な森林伐採や土地の利用が野生動物の領域に食い込んだ結果だった。だから人間の経済活動が自然の体系を壊さずに済むようにしなければならない。『人新世』の世を生きているという自覚が必要だ。人類の活動が生態系や気候に与える影響が膨らんだ結果、地球の状態を人間が支配する新たな地質年代に入ったとする考え方。経済・社会活動による環境負荷により、地球の限界(プラネタリー・バウンダリー)を踏み越えているとする指摘もある」という。「朝日新聞」一部抜粋。
茹だるような熱波の中、その地球温暖化の影響で東京五輪パラ選手の耐熱訓練は想像を絶する。
しかし2020年10月に日本政府はすでに「2050年カーボンニュートラル宣言」を発布した。グリーン購入法とクリーンウッド法相並び、インドネシアの湿地帯、泥炭のパーム油が生産拡大に伴う違法伐採対策としてインドネシアのパーム油の生産拡大に伴う環境負荷低減策から着手した。1)熱帯雨林伐採に伴う生物多様性の損失、2)温室効果ガス排出を欧米からまず日本へと着手した。IPCC第四次評価報告書において温室効果ガス排出量がさらに今以上の速度で増加し続けた場合、より気候変動を巻き起こすと予測。一方でIPCCは早くから2050年までにバイオエネルギーにより化石燃料燃焼に伴う年間54億トンの炭素排出を代替した上に森林伐採量の減少と効果的な生産を行う1985年比による温室効果ガス半減シナリオを明示していた。
コロナとも、その起因としてそのような地球温暖化とも闘い続けてスポーツの祭典を盛り讃えている東京五輪パラの選手団は「もちろん南スーダン」からの難民選手一団の逞しさにも「コロナと障害者差別」に負けるな!とこちらが励まされているようではないか。
東京五輪は終幕した。東京パラリンピックも健康に留意し、コロナ禍を全世界で乗り越えていこうじゃないか。