Jack’s ついに名物激安店が閉店 ◆ 大型店舗の激安商品は全品50%オフ

  by あおぞら  Tags :  

そこにいるのは生活者たち。しかも、一生懸命に生きている生活者たち….

 そう感じた場所は↑上記写真のJack’s。この店はかつては99セントストアーと呼ばれ、日本で言う百均の店だった。マンハッタン、しかも、40丁目と5番街に近い立地でありながら、大型店舗はひと区画分あり、40丁目の入り口から入店し、39丁目の裏口で抜けられるのだ。別にその逆の39丁目から入ってきても構わない。マンハッタンに数店舗あるが、どれも売り場面積は大きい。その内の一店が店じまいになる。

 ↓は映画のロケにもよく使われるニューヨーク公共図書館。今年の雪はよく振った。ニューヨーク市史上8番目の降雪量だったそうだ。その雪景色の図書館から歩いて、信号を無視すれば2分で到達するほどの距離。Jack’sはこの場所で私の知る限り四半世紀の最低25年は営業を続けていたはずだ。この家賃高騰まっしぐらのマンハッタンでどうやっているのだろう?と以前から気になっていた。

↓1895年創設のニューヨーク公共図書館 同年日本では日清講和条約が調印された…大昔!

 99セントストアーの時代は人がごった返していた。日本の百均のクオリティーを知る日本人としては、アメリカの百均と言える99セントストアーのクオリティーの低さには笑ってしまうが、それでも全ての商品99セントは楽しかった。

 しかし、そのアメリカの百均も経営が厳しくなったのか、99セントストアーではなくなり、微妙な値上がりの$1.29の商品が増えていったし、ブランドの知られていないコーヒーメーカーや、電気コンロ、電動野菜チョッパーなどの台所用品まで売り始めた。特にここ数年はだだっ広い店舗に、お客も少なくいよいよ風前のともしびを見た気がしていた。

 去年から今年にかけて多くの高級な店舗が店じまいをした。衣料のブルックスブラザーズ、化粧品のロクシタン、バレンタイン間近の1月にゴディバが全米店舗撤退を発表した。コロナ禍で高級志向の店舗が打撃を受けるのはわかるが、何も庶民の味方のJack’sまで…とは、寂しいし、侘しい。

 レジはL字型で千客万来のお客さんを迎えている時には、レジ打ちの店員さんがずらりと並んで客さばきをしていたものだが、年々客目減りで、目を覆いたくなるほどの惨状だった。レジ打ちの店員の中には随分のベテランもいて、一つの仕事をキチンと全うしているのだなと感心しながら見ていた。

 その雄姿もこの店舗閉店で見られなくなるだろう。インド系の中年女性でテキパキと働く姿が印象的だった。また、ちょっとドジっぽいセキュリティーの人も、コロナ過で仕事を失う人が多い中、ちゃんと仕事を維持していることを嬉しく思っていたけど、彼らもそのうちに仕事を失う。他店への異動はおそらく不可であろう。

 マンハッタン、イースト40丁目の3番街とレキシントン街の間に、銀行が2行もあった。ひとつは、チェイス銀行というニューヨークで一番店舗数の多い銀行で、この店舗のATMマシーンをよく使っていたものだが、数日、その通りを通らなかっただけで銀行は忽然と消えていた。もう一つの銀行はいつの間にか空き店舗になっていたが、このチェイス銀行の撤退は見事にもぬけの殻と化していた。

 タイムススクエアーだって、兎に角人がいない。現地ローカル紙のamNYでは『たった3カ月で人が消えた!』の記事が出た。確かに、ブロードウェイミュージカルは公演はこの夏まで中止だし、タイムススクエアーも人が圧倒的に少ない。本当にかつての賑わいが戻ってくるのだろうか?と心配するほどである。

↓ この賑わいがかつてのタイムススクエアー、ミュージカルの劇場が集中する一大繁華街

 それにしても正直者たちを多く見た気がした激安店Jack’s。その店じまいセールは全ての商品が半額でのたたき売り。実際、行って見た、買ってみた。長蛇の列に、陳列商品は半額セールの売り上げ上々で驚くほどに少ない。ティッシュペーパー、アルミホイル、電球、クレンザーの日用品から、長期保存のきくレモンジュースやスパイス、パスタ類を沢山かって10ドル強。申し訳ない気持ちになった。しかし、生活者には半額セールはありがたかった。

 Jack’sは激安店、しかも店じまいする店舗はマンハッタンの中心地にあった。その割に買い物客は、正真正銘の普通の人たち、見ていると面白いくらいに本当のニューヨーカーの姿がそこにあった。ある意味、本当のニューヨーカーが見れたその店が閉まってしまうのが残念だし、そこで働いていた人たちは、まもなく失業保険を受給するようになり、アメリカ政府もこれだけ失業者が増え、失業保険の支給で青息吐息なのだろうと思うとため息もでる。

 店じまいする激安店Jack’sの従業員たちが、出来る限り早く仕事がみつかるように願う。あの店は激安店だけでなく、そこにニューヨークの底力を感じた。もし、今更ながらに日本語店名を考えるとしたら『正直屋』と名付けたかった。

 

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