ある大御所の作詞家が、自身の生まれ育った青山周辺をぶらぶらしている古い古い動画を見ていた。70代前半の氏が30代の半ばだから、35年ほど前。作詞家も若い、声もなんだか幼い、30代半ばでも。
顔は映っていないが、若い女性の声がした。それがとても耳障りで、当時は松田聖子がアイドル路線爆走中で、若い女性はぶりっ子しているのが主流だったにも係わらず、それにしてもベットリ粘りつくような作詞家に媚びる甘えた声、喋り方には虫酸が走った。
その声の主が画面に現れた。当時、人気の若い女優だった。その昔の動画を見ながら『こんなにぶりっ子して、自分も他人も欺いて、若い内は大丈夫でも、このままなら人生結構キツイものになるよ…』と、ぺこぱじゃないけど、時を戻してその小さな画面に言っていた。
その女優も今は50代半ば。このタイプの女優はどんな人生を歩んでいるのだろうと検索すると、既に鬼籍に入られていた。死因は自殺だった。
元局アナが今月、レギュラーでコメンテイターを務めている情報番組をいきなり降板した。これはどちらかと言うとクビのようで、所属事務所からも解雇された。
この元局アナもぶりっ子で有名で、若い内はチヤホヤされたであろうが、独立し、結婚し、引退し、唐突に復帰と掴みどころがない暴走振り。
結局、ぶりっ子は人を欺いているので、自分が不幸になるのだろうか?と思った。松田聖子がぶりっ子を広めたが、それはあくまで商業ベースに乗ったもので、話し口調を変えてみたりのウソはなかったと思う。せいぜい写真のポーズが当時のキャピキャピのカワイコぶりっ子であって、ぶりっ子は仮の姿でしかなかったと思う。
困ったぶりっ子は、そのフェイクが完全に自身に憑依してしまうのだ。
これは不幸を呼び込む。人間には自然のモノがフィットする。酷暑にポリエステルの服を着たら卒倒するくらい気色悪い。自然な素材の木綿が酷暑には耐えられる。
人間は不自然では生きていけないのだ。それは着るもの、食べるものから始まって、人間関係や職種にまで及ぶ。
中には無理して合わない仕事を続けたり、辛い人間関係を修正しつつ維持できている人たちも多い。忍耐力は立派だし、そこから何かを学び取り、大きく成長する人もいるはずだ。ただ、小さい靴を無理やり履き続けるとしたら、足も変形するだろうし、それ同様に精神が歪むと思う。
35年ほど前の動画に出てきた、嫌悪感満載の若き女優が自殺していたことを知りショックを受けた。
フェイクでは幸せになれないのだ。ぶりっ子で理想の結婚をした人たちの離婚率は高いと思う。
令和の時代もぶりっ子は健在だろう。ただ、ぶりっ子で成就する恋愛は男性側もフェイクだと思うので長続きはしないだろう。
人も自分も欺かないことだ。
欺いていては結局自分自身が不幸になってしまうのだ。
画面: from flickr
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