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どうも特殊犯罪アナリスト&裏社会ライターの丸野裕行です。
10月28日18時頃、人気の若手俳優・伊藤健太郎(23)が、東京渋谷千駄ヶ谷の交差点付近を乗用車で運転中、バイクと衝突する事故を起こしました。
伊藤容疑者が車で交差点内をUターンをしたところ、前方からきたバイクに衝突し、男性が軽傷、乗っていた女性が重傷を負ったといいます。そのあと伊藤容疑者の車は現場から立ち去ったという疑いで逮捕されました。
今回は、どんな行為が“ひき逃げ”になってしまうのか、さらにどのような罪に問われるかをレクチャーしていきたいと思います。
ひき逃げの定義とは?
どのような行為がひき逃げと見なされてしまうのか、ここでは解説していきたいと思います。
1.ひき逃げとは?
ひき逃げとというのは、交通事故を起こし、人を死亡またはケガをさせてしまったときに、適切な救助などの処置をせずに、現場から逃走する行為のことです。本来、交通事故を起こし、人をケガさせた時点で罪になるのですが、その場から立ち去ることによって、それ自体が罪に問われます。
2.まず救護義務違反に問われる
ひき逃げが罪になるのは、道交法の72条《救護義務》違反に当たるからです。《救護義務》というのは、自分が起こしてしまった交通事故でケガをさせた相手を道路から動かして安全な場所に移したり、人命救助をしたりする義務のことをいいます。
さらに、警察に対しての事故の報告や事故現場の現状維持まで行わなければいけません。簡単に言うと、警察に通報したあとに、警官が到着するまでその場にいなければいけないわけです。
相手が、軽傷だったとしてもこの処置については変わりません。周囲の人々が事故を起こした当人よりも救護活動を行った場合でも、本人がその場からいなくなることは、“ひき逃げ”とみなされます。
3.罰則について
ひき逃げの容疑で起訴されてしまうと、刑法での罰則があります。救護義務違反では、10年以下の懲役、もしくは100万円以下の罰金になってしまいます。
そのうえで、相手を死亡させた場合では、《自動車運転処罰法違反》に問われてしまいます。この法律の主なものとしては、過失運転致死傷罪と危険運転致死傷罪、準危険運転致死傷罪という3種類になります。
・過失運転致死傷罪
……自動車運転での注意を怠って事故を起こし、相手が死傷してしまった場合は、この罪に当たります。懲役7年以下、または禁錮、100万円以下の罰金になります。
・危険運転致死傷罪
……飲酒運転や過剰なスピート違反、信号無視など、基本的交通ルールを破った無謀運転を行って、事故が起き、相手が死傷してしまった場合は、この罪に当たります。前述の過失運転致死傷罪、もしくは危険運転致死傷罪の判断基準は、故意の有無が関係します。有期懲役で1年以上、最長で20年程度になる可能性もある罪です。
・準危険運転致死傷罪
……危険運転致死傷罪は、正常な運転ができない状態。それが立証できない場合は、正常な運転ができない状態の“おそれ”があるとして準危険運転致死傷という罪になります。懲役1年~15年以下という罰則になります。
危険運転致死傷と準危険運転致死傷の最長刑期はどちらも相手を死亡させた場合の刑期になります。
ひき逃げで逮捕されたあとの流れと相手との示談
ここでは、ひき逃げ逮捕後はどうなるのか、さらに相手との示談について綴っていきます。
1.ひき逃げは逮捕の可能性が高い
被疑者が逃亡したり、逃走したりする可能性がある場合に逮捕になります。ひき逃げでは、“逃げる”とみなされるので、現場で緊急逮捕される可能性というのが高まります。
ひき逃げに気がついているのであれば、まずは“自首すること”をオススメします。
2.ひき逃げ逮捕後はどうなるのか?
ひき逃げで逮捕された場合、勾留~起訴まで留置場や拘置所で身柄拘束されるのが一般的です。釈放という事態も想定できますが、ひき逃げ逮捕ではその後に釈放となる可能性は低いです。
留置場への勾留決定後には、最大で23日間、取り調べが終わるまで出ることが許されません。起訴になったという場合は、保釈許可されなければ、裁判が開始するまで1~2ヵ月ほど拘束されたままです。
3.起訴もありえる
ひき逃げ逮捕で不起訴という可能性はあります。ですが、ひき逃げ犯罪は検察官からの裁判請求(公判請求)の確率が高いといわれます。
ちゃんと弁護士に手を回して対策することにより、起訴であっても軽い処分にすることができます。
4.ひき逃げの示談交渉
起訴される前に、被害者とキチンと示談を行って、示談成立をすることが望ましく、それが起訴につながらない情状証拠になり、裁判官が刑を軽くすることもあります。
ですから、示談成立は刑事処分における重要なことになるんですね。
示談交渉に関しては、保険加入で保険会社や弁護士に任せることができますし、任意保険加入しておくことが賢明だと思います。
ひき逃げ、当て逃げは何が違うのか?
交通事故で相手が死傷してしまった場合は、“ひき逃げ”。物損事故の場合は、“当て逃げ”になります。補足ですが、物損事故を起こしてから現場から立ち去ったときは当て逃げとみなされて、懲役1年以下、もしくは10万円以下の罰金という処罰が下る結果に……。
ともあれ、事故は起こさないに限ります。
ムリなUターンをしてしまったであろう伊藤容疑者がすべてをきれいにして、無事に仕事復帰できることを心から願っています。
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