今月に入りニューヨークの美術館はようやく再開されました。半年以上に渡り美術館が閉ざされた状態と言うのは、ニューヨークの歴史の中でなかったことだと思います。
ただ、以前のように美術館に行けるのではなく、オンラインでの事前予約で美術館側も人数制限を含めて管理する必要があります。これが面倒なんですね。各々の美術館サイトに行き、まるでエアラインチケットを購入するかのように日時と時間の空きを調べて購入します。それも入力の際、一般であるかメンバーであるかの選択があります。またメンバーでも美術館の個人会員の場合と法人の会員もあるので、それによりまた入力方法も変わってきます。美術館のサイトでは『予約なしでは入館できません』とフラリと訪れる人たちの入館を拒否するようけん制されています。
それらの規制の厳しい中で、ニューヨーク近代美術館(通称MoMA)は、メンバーであれば予約なしで入館できますとサイトにありましたので、久しぶりに出かけてみました。↑写真は美術館の入場券です。国際色豊かにいろんな言語で書かれています。MoMAには入場券の言語同様、いろんな国の人が働いていて、勿論日本人スタッフもいらっしゃいます。
半年以上振りに訪れたニューヨーク近代美術館で驚くのは、先ず、人が少なすぎるのです。こんなに人が少ないと言う事はいままでなかったので、不思議な光景です。なんだか特別に招待されたような気分になるほど人が少ない。ちょっと選ばれた人たちのような意識になりますが、ただ、人数制限されているだけなんですけどね。
閉館されていた期間に模様替えはされていました。それに美術館内のギフトショップが取り壊されていました。人も少ないし売り上げが見込めないからでしょうし、その分スタッフ減らしをしているのが目的だと思います。売れないショップにスタッフを置いておくこと自体がナンセンスと思うアメリカ流と言うか….
ニューヨーク近代美術館所有の有名な絵にゴッホの『星月夜』があります。以前はこの絵の前には大勢の人が集まり、なかなか見られない状態でした。しかし、本日はガラガラ状態で拍子抜けでした。浮世絵好きのゴッホはこの絵にその手法を取り入れ、葛飾北斎の『冨嶽三十六景』の大きな波の部分を真似て描いたそうですね。ゴッホは1890年に亡くなりますが、この『星月夜』が描かれたのは1889年。亡くなる1年前の作品と知ると心に迫るものがあります。
ピカソの作品は世界中どこにでもあると言ってもいいでしょう。制作作品は50,000点とされています。これは絵画、彫刻、陶器、ドローイング他を含みます。ただ、やはりその中でも名作は限られてきます。1907年制作の『アビニヨンの娘たち』は大きな絵画です。ピカソがアフリカ彫刻に興味を持ち描かれた絵で、右の二人はアフリカの仮面をつけているそうです。因みにこの絵の女性達は売春婦。題名も当初は『アビニヨンの売春宿』だったそうですが、不道徳と物議をかもして『アビニヨンの娘たち』に変更したそうです。
ニューヨーク近代美術館閉館中の約7か月で、以前展示されていた作品が取り外されているものもありましたが、日本人美術家の河原温作品『日付絵画』は健在でした。海外で高い評価を受けた日本人。私は河原作品をシカゴ美術館とフィラデルフィア美術館で見たことがありますが、日本人として誇らしく思いましたね。
かつてのように、自由に美術館に行ける日はいつ来るのでしょうか?美術館を予約して行くというのは、やはり億劫です。その点、ニューヨーク近代美術館はメンバーに厚遇してくれるのは嬉しいです。メンバーには高齢者割引がきくのでお年寄りも多く、パソコンを操作しない人もいるかもしれないので、改めてニューヨーク近代美術が’メンバーに予約を強要しないことはグッドアイデアだと思いました。