東洋水産はカップ入り即席麺「マルちゃんもっと赤いたぬき天うどん」を、5月18日より期間限定で全国発売している。
赤いといえば「きつね」、緑のといえば「たぬき」と相場は決まっている。それが赤いのにたぬきとはこれいかに。
ピンときた方はかなりのマニアとお見受けした。
実は2018年に「あなたはどっち!?食べて比べて投票しよう!」キャンペーンというのを行っていたのを覚えているだろうか。これは、赤いきつねと緑のたぬきが総投票数で人気を競い合い、結果的に勝利したのが赤いきつね。その際にマニフェストに掲げていた「赤いたぬき天うどん」を同社が発売したというのが歴史的な経緯。
(1年だけだが)歴史は流れ、緑のたぬきがリベンジを誓った2019年は、「赤緑合戦~あなたはどっち!?食べて比べて投票しよう!~」と題して、47都道府県ごとに勝敗をつけるまるで米国大統領選挙をほうふつとさせる陣取り合戦を128日間にわたり実施。その結果は47都道府県中45都道府県を制した「赤いきつね」が圧勝。ちなみに緑が勝ったのは奈良県と愛媛県だけだった。それでも得票総数としてはさほどの差はなく、やはり総取り制での決着にはインパクトがあることを思わせる。詳細は末尾に特設サイトのリンクを設置するのでそちらでご確認いただきたい。
さて、赤いきつね一強のこの勝負は、例によりマニフェストが掲げてあった。その内容は、緑のたぬきの小えび天ぷらを赤いきつねが取り込み、さらに今年はその小えび天ぷらに紅生姜を加えた赤い天ぷらと赤いかまぼこを具材に使用した「もっと赤いたぬき天うどん」だった。
写真右が通常販売されている「赤いきつね」。そして写真左が今回発売された問題の「もっと赤いたぬき天うどん」だ。
パッケージはよく似ているが、よく見ると確かに赤いのに「たぬき」と表記されている。先入観とは恐ろしいもので、よく見てもやはり赤いきつねにしか見えない。
同社がここまでうどんとそばにこだわるので、こだわりついでに記者もうんちくを一つ。「きつね」はあげが入ったうどんで、「たぬき」は揚げ玉が入ったそばというのは日本全国の統一ルールではなくあくまでも一般論。よって「きつねそば」もあれば「たぬきうどん」も存在しうる。きつね・たぬきの違いはあげか揚げ玉かで決まる。しかし関西ではその常識が通用しない地域もある。メニューには多くの「○○うどん・そば」と書いてあり選択可能なのに、「きつね」と「たぬき」だけは単独。これは「きつね」とはあげの入ったうどんでしかなく、「たぬき」はあげの入ったそばでしかないのだ。では揚げ玉の入ったうどんやそばを食べたい人はそうするのかというと、「ハイカラうどん・そば」と注文する。これにはうどんとそばの区別があることが多いようだ。よって関西であげの入ったそばを注文しようと「きつねそば」と発注すると存在しないメニューを注文したことになり怪訝な顔をされることがある。
さて、パッケージを開封して中身を見てみよう。
あげは大きな油揚げはなく刻みだ。そして天そばから取り込んで赤くするために紅しょうがを加えたとみられる「赤い天ぷら」と、赤いかまぼこが確かに乗っている。
ちなみに記者は九州出身なのでしょうが天を食べる文化がほとんどない。関西から関東にかけては比較的ポピュラーだが、ラーメンにたっぷり紅しょうがを入れる九州でもしょうがを天ぷらにはしない。果たしてどんなお味なのか。
コシと弾力のある太目な麺と、全部入りと表現してもいいくらいの濃い目の出汁は薄口しょうゆ仕立ては満足感が高い。
そして、問題の紅生姜入りの小えび天ぷらだが、紅しょうがの風味が確実に感じられるが決してしつこい強みのある味ではなく、存在感だけを風味で際立たせた万人が好みそうな見事な出来栄え。みんな大好き小えびの味と歯ざわりはきっちりと出ている。しょうが天を食べる習慣のない記者でもおいしくいただくことができた。
このまま2連敗では引き下がれず緑が勝利するまで挑戦を続けなければならない状態だが、果たして同社がこれを来年も引き受けるのかどうかが注目される。いわば「勝利の味」を期間限定で味わう価値はありそうだ。
※参考
赤緑合戦特設サイト
https://dotti.akamidori.jp/ [リンク]
※写真はすべて記者撮影