平均年齢100歳超え?!「サルディニア」に学ぶ 日本の高齢者にも労働以外の幸せを

  by tomokihidachi  Tags :  

[コラージュ筆者作成]©️photodeposit.com、biz-journal、探しっくす、TED×TALKより筆者作成

 今年2月27日に始まった「後期高齢者医療制度」の議論では、半分が公費で賄われる「1割負担」ではなく、「3割負担」が議論の俎上に乗った。例えば単身世帯年収約383万円以上有り、課税対象となる所得145万円の75歳以上が「3割負担」の一例だ。公費負担がなく、代わりに「従属人口指数」分の現役世代の保険料で賄っている。この基準の見直しと、新設された「2割負担」が実態運用に適っているか否かを焦点に、政府は検討している。  

2040年には単身高齢者世帯15%増

 今年2月初め、政府は「70歳まで働く機会の確保」を企業の努力義務とする関連法案を閣議決定した。
 2040年には65歳以上の男性単身高齢者は全体人口比約15%増になると推計。所謂「団塊ジュニア」は第二次ベビーブーム世代に生まれた。就職氷河期に社会に出て今なお、非正規雇用や低賃金の辛酸を一部嘗めている世代である。
「家族減少(ファミリーレス)社会」の構成員として「単身世帯」や「老夫婦世帯」の半数以上を占めている。
「介護保険」制度では介護報酬が基本報酬に一定の要件を満たすと加算。逆ならば減産となる。だがこの制度は大規模事業者に圧倒的有利な代物だ。
 一方、認知症の医学的解明は進んでいる。米バイオジェンは2019年12月5日にエーザイと共同開発している「アデュカヌマブ」について、投与した患者の認知機能の低下スピードが2割ほど遅くなったとする臨床試験(治験)のデータを米国の国際学会で発表した。
 両社は2020年初めに米国で承認申請する方針だ。「@DIME」(2020年1月21日)
 だが、未だ臨床レベルに落とし込むには時間がかかるのも事実。新薬のコストも一般市井の懐事情を悩ませる頭痛の種だ。
 認知症当事者の要介護度認定が下がれば、事業者に「インセンティブ」が与えられる「成果主義」が導入される。家族が利用する訪問介護職の有効求人倍率は約13倍(2018年)。同時にヘルパーの高齢化が進み、慢性「人手不足」が課題となっている。
 介護事業所で職員の離職率が進むのも然り。家族が介護のため「介護離職」を選択せざるを得ないのも現実だ。
 少子高齢化社会の先進国であらねばならない日本は、世界に先駆けた規範を示し切れていない。
 
 福祉先進国とは?と問うて、デンマークやスウェーデンなどの北欧や、重税だが福祉国家として手厚い老後のサービスが約束されたカナダは読者の皆さんも見聞して久しいことだろう。

平均年齢100歳住民が住む島国「サルディニア」

 だが、コルシカとチュニジアの間で地中海に面したイタリアの島国、「ブルーゾーン」と呼ばれるサルディニアはご存知だろうか?この豊かな緑に囲まれて暮らす島民の平均年齢は、なんと100歳以上だ。300マイルしか離れていないイタリア本土と比べて実に6倍だ。彼らのことをセンテナリアン(100歳以上生きている人)と呼ぶ。
 2015年に「Lancet」誌が女性は男性より6〜8歳長寿になる割合が多いというエビデンスを実証した記事を発表した。しかしサルディニア島の男女寿命は世界で唯一、男女差がない。
発達心理学者のスーザン・ピンカー氏は実際にこの島に足を踏み入れ、聞き取り調査を行った。
少し気難しい性格のギュセッペ・ムリヌさん(102)にはマリアとサラという自慢の姪がいる。ピンカー氏はムリヌさんの姪にもインタビューすると…
「お爺ちゃんのお世話をできるなんて特権階級ものよ」と当たり前のように村のしきたりを教えた。新鮮なフルーツと野菜をキッチン・パーティーに持ち込み、家族の延長上に有る友人らや隣人、果ては僧侶、バーテンダー、食料品店の職員に至るまでムリヌさん一家は人との触れ合いを大切にしている。
 それこそ日本の少子高齢化社会で問題視される独居老人など遥か縁遠い。孤独は死亡リスクを高める主因だ。
 ピンカー氏はさらに聞き取りを進め、複数の他分野の研究者達の実証実験から生まれた疑問についても追求している。その研究結果を「TEDxTALK」の舞台で講演した。
 ブリガム・ヤング大学のジュリアン・ホルト・ランスタッド女史が中年の生活スタイルを研究。ダイエットや運動、どれだけの頻度で医師にかかりつけになっているか、煙草は吸うか、酒を飲むかなどの調査項目で7年間ウォッチした。
 澄み切った空気は素晴らしいがいかに長生きするかを予見する強い要因にはなり得ない。長生きに関わる遺伝子で説明可能な範疇はたったの25%。残りは生活習慣が75%を占めるからだ。
 問題は人と人との触れ合いがどれほど頻繁にあるかなのだ。
 「いかに多くの人があなたに話しかけるか?あなたが毎日、コーヒーを落としてくれるイカしたヤツに話しかけるようにしていたら?あるいは郵便配達員に話しかけていたら?あなたの家の近くを毎日散歩している女性に話しかけていたら?これらの触れ合いこそが、あなたが長生きするか否かの強力な科学的指針の導となる」とピンカー氏は強調する。

オンライン上のコミュニケーションより相対する方がより豊かな脳波信号を発する

 人はフェイス・トゥー・フェイスで全体的な連続した情報伝達を神経伝達物質を放出することで行なっている。
 そしてワクチンのようにあなたを保護し、単に誰かとアイコンタクトを取ることで、あるいは握手を交わすことで、またはハイタッチすることでオキシトシンを放出するのに十分なあなた自身の信頼レベルを増やす。それがあなたのコルチゾールレベルを低下させる。副腎皮質ホルモンである糖質コルチコイドの一種であるコルチゾールは、ストレスによって分泌が亢進される性質を持つ。
 家庭の医学としても常識を押さえておきたい。人間の身体機能を健康に保つホメオスタシス(恒常性)は「自律神経」「内分泌」「免疫」3つの機能のバランスによって成り立っている。ストレスなど、様々な外部環境の変化による影響を受けても、この体内環境のバランスを保つことで健康が維持される人体の調整機能がストレス度を低く抑え込む。ドーパミンが分泌されて私たちをハイにさせ、痛みを生み出す物質を殺すのだ。それは自然とモルヒネを生み出すことになろう。
 だが私たちは今日、より多くの時間をオンライン上で費やしている。睡眠時間も含まれるほど今やガジェットは私たちの生活に無くてはならない存在だ。場合によっては1日11時間に上る人もいる。
 こうした社会環境が浸透した中、なぜ人との触れ合いがソーシャルメディア上の交流と異なるのか?という次の疑問が沸いてくる。
 マリーランド大学のエリザベス・レドケイ神経科学者は、Emailやテキストなどのアルゴリズムよりも、人間の声やボディーランゲージ、考察、感情、郷愁に浸る方がより豊かな脳波信号を発しているエビデンスを実証した。
 

フェイス・トゥー・フェイスの友好関係は病気のリスクを減少傾向に

 フェイス・トゥー・フェイスのコミュニケーションの取り方をする女性達の一群の方が認知症の発症率が低い。また肺がんから女性達が生き延びるのは4倍にも上る。
 なぜポーカーゲームやコーヒー、ゲートボールに勤しむ男性の方が脳卒中に倒れやすいのか?
 女性が男性に比べて長生きする理由は、彼女たちが顔と顔を突き合わせて身嗜みを整え交流し合うことを第一義に置いているからである。
「斬新なエビデンスとは、人対人の友好関係とは病気の発症を減少傾向にすることができることにある」。
 文化人類学者のジョアン・シルクスは霊長類の関係性にも通ずるものと論じている。
雌のヒヒが親しい一群の中でも中核を成す集団がコルチゾールレベルでストレスレベルを減少に抑え込んでいることを証明した。それによって雌ヒヒも、その子供も長生きするという関係性を持っていたのだ。
 フェイス・トゥー・フェイスのコミュニケーションには実は驚くべき恩恵がある。生物学的に絶対に必須の人と人との触れ合いを構築していく中でも、我々の住まう都市部や職場で、この議題を支える免疫システムこそが血流と脳を通過する心地良いホルモンを急増させ、私たちを長寿にさせるのである。
 それを体現している良例こそが、サルディニア島の御長寿たちだと言えるのではないだろうか。
 

日本の高齢者に「労働」以外の幸せな生き甲斐を

 日本の高齢者は貯蓄を切り崩して生計を立てている。一方、金融機関は技術革新に必要な資金を企業に融資する。
 すなわち、貯蓄率の低下が技術革新の低迷を生み、生産性を低下させている。
 こう考えるのが政財界人のカネ勘定だ。
建前では全世代型社会保障会議を立ち上げて議論を交わすが、世界で最も有給休暇を取ることに罪悪感を抱く民族として日本人が不名誉な一位を冠している現実がある。今一度シニアの老後の幸せの在り方を抜本的に見直した方が良い。20代から50代の働き盛り世代ではなく、充分に社会にも家族にも貢献し尽くしてきた日本の高齢者も「労働」以外に第三の人生を豊かにする生き甲斐を見出して堂々と幸せを謳歌し楽しんでもいい生き方があるはずだ。

tomokihidachi

2003年、日芸文芸学科卒業。マガジンハウス「ダ・カーポ」編集部フリー契約ライター。編プロで書籍の編集職にも関わり、Devex.Japan、「国際開発ジャーナル」で記事を発表。本に関するWEBニュースサイト「ビーカイブ」から本格的にジャーナリズムの実績を積む。この他、TBS報道局CGルーム提携企業や(株)共同テレビジョン映像取材部に勤務した。個人で新潟中越大震災取材や3.11の2週間後にボランティアとして福島に現地入り。現在は市民ライターとして執筆しながら16年目の闘病中。(株)「ログミー」編集部やクラウドソーシング系のフリー単発案件、NPO地域精神保健機構COMHBOで「コンボライター」の実績もある。(財)日本国際問題研究所「軍縮・科学技術センター」令和元年「軍縮・不拡散」合宿講座認定証取得。目下プログラミングの研修を控え体調調整しながら多くの案件にアプライ中。時代を鋭く抉る社会派作家志望!無数の不採用通知に負けず職業を選ばず様々な仕事をこなしながら書き続け、35年かけプロの作家になったノリーンエアズを敬愛。

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