日本は沈むか?TPPに参加したらどうなる

  by せいちゃん  Tags :  

経済の不安にズバッと答える!!

~TPPについて確認しましょう~

皆さんもうすでにご存じかもしれませんが、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)とは、太平洋周辺の国々の貿易自由化を目指し、関税を24の分野で完全に撤廃してしまおうという取り決めです。

もともとはシンガポール、ニュージーランド、ブルネイ、チリの小さな国々の貿易交渉でしたが、アメリカという大国が主導するようになり、大きな流れになろうとしています。

日本政府は、この流れに乗り遅れるな「第2の開国だ」という謳い文句で参加に乗り気になっておりますが、そのメリット・デメリットを推し量るための公開された試算は真っ二つに割れているといってよいでしょう。

<TPP参加による経済効果の試算>

経済産業省 +10.5兆円     農林水産省 -7.9兆円

これでは、国民は不安にならざるを得ないかもしれませんね。

 

~メリットはある!?~

あたりまえのことを言えば、参加してみないとハッキリとした影響はわかりませんから、試算の段階でバラつきが出ても不思議ではないのです。問題は「ハッキリしない」ということを利用して、各省、各団体が自分の都合の良いようにリーディングする傾向があるということです。

まず、先の試算の背景を言えば、

<経済産業省>は輸出主導で企業の利益に結び付けたいわけですから、TPPがうまくいった(うまくいきすぎた)と仮定して試算したがるものです。米韓FTAの発効等による日本の経済損失は最大値で計算するでしょうし(※)、TPP参加による「開国」の意思表明が功を奏してユーロとのFTA交渉が成功すると踏んで試算しています。

<農林水産省>は、反対に第一次産業を守りたいわけですから、TPPに参加することにより怒涛のように安価な海外農作物が流入してきて、壊滅的な損害を受けたとして試算しています。

互いに利益集団である以上は、自分の利益になる部分は表に出しますし、不利になる材料は隠してしまい、そもそも同じ材料で、同じテーブルで試算したわけではないのです。

 

※経済産業省資料「日本がTPP・EUと中国とのEPAいずれも締結せず、韓国が米国・中国・EUとFTAを締結した場合」

 

~どちらともいえる~

同じように、<見方>によって変わる議論は他にもあります。すこし見てみましょう。

TPP反対派の意見には、そもそも日本は開国済みなのだから改めて「開国」する必要などないのだというものがあります。

どういうことかと申しますと、日本の平均関税率は12%と世界的に見ても低水準(しかも、コンニャク1000%等の著しく高いものも含み、ほとんどがもはや0%)であるから、今さら下げる必要などないというわけです。

しかし、これは裏を返すことができるでしょう。つまり、もはや関税率0%が大半であり「自由化」してしまっているというのであれば、TPPに対し極度の恐れを抱く必要はないのではないでしょうか。すでに低いのですから、取り払ってしまっても大した影響はないともいえます。

また、自給率がカロリーベースで40%にすぎないということも反対意見の論拠になっていますが、これも同じように裏返すことが可能でしょう。(国連貿易開発会議はこの世界不況を乗り切るには、経済収支赤字国である米国が黒字国である日本を輸出先として、グローバルインバランスの解消をする必要があると結論付けています)

 

~意図的な憶測と希望的観測~

冷静な吟味を始める必要があるので、この記事では不安に駆られるために誘導に乗りやすくやや感傷的になっていると思われる反対意見を主に採り上げ、慰安を与えたく方向づけております。賛成派は政府が経済産業省の試算のみを採り上げ、その経済産業省の試算がパワーバランスにより片寄っていることはもうすでに触れたように正当性は無いのです。だからこそ、国民が冷静な仲裁者となって事態の真偽を見定めるしかないと思うのです。

それでは、憶測または希望的観測を軽く見ていきましょう。

<中国の動向>

「中国がTPPに参加したら、それこそ日本経済は立ち直れないほどの壊滅的な打撃を受け、手遅れになる」という意見に対しては「米国は中国に対し通貨の問題で折り合っておらず、戦争状態だ、仲良く参加なんてありえない」という反対意見がありますが「米中の人民元懸案の手の打ちどころがTPP」にならないと誰がいえるでしょうか。

<為替の動向>

また「アメリカの戦略を読めば、TPPに参加した後はドル安に誘導してくるにちがいない。これで浮いた関税分もパーだ」という意見もありますが、あまりに露骨な憶測(分析にしては安直)ではないかと思われます。安定的な貿易バランスを志向しなければ米国の未来も暗いわけですし、ドル安に対する動向の気になるウォンの比率はどうなるというのも気になるでしょう。また、そんなに為替の変動を確実に見極められれば為替で遊ぶ人は歓喜するにちがいありません(この人たちの存在も為替安定化にとっては気になるところです)。

 

~その他、いくつかの誤謬~

日本のとるべき戦略として、デフレでバランスを取っている最大の要因、経済収支黒字と貯蓄の増加に対する対処がいわれています。具体的には

1、思い切った投資(公共投資)

2、国債の買い取り

これらの施策は、なによりも重要であり、もっともな話ではありますが、TPPと両立することも可能だろうと思われます。

また、輸入の増加により、有事のことを想定すれば喉元にナイフを突きつけられることになるという意見がある。これはまさに国連開発会議において出された長いスパンのヴィジョンに恒久的に反するということを考えれば、デフレ解消後の話にもなり、TPPの問題からは論点がズレているか、蛇足に過ぎます。

まして、その恒久性を担保するために、食糧問題の本質は水資源の枯渇(=取り合い)と主張するに至っては、もはや無理が擦り切れて地が見えてしまっているとさえいえる。主張者が認めるように、水資源の枯渇は「地球規模」の問題なのです。であれば、日本がTPPに反対して自給率を維持(あるいは増加)したところで水の枯渇から逃れられるとも思えません。

それどころか、かつて1993年の日本が記録的な不作でタイ米に頼ったように、輸入にこそ頼らなければ回避できない問題であり、日本が鎖国しておけばOKということではないのです。むしろ、だからこそ食糧の補給源を分散して持っておくことが答えになってしまっている。

 

~まとめ~

以上のことから、TPP参加の影響は限定的(憂慮するほどのことではない)かと思われます。では、どれぐらいの規模の経済効果なのか、+か-なのかを問われれば、私は抜け道的(それでもああだこうだと空論を並べて述べるよりは理性的)にはなりますが、経済産業省と農林水産省がせっかく作ってくれた両極端なデータを足して2で割って、1~2兆円+になるのではないかと思う。

それも、これは一般的な話ではありますが、TPPの発効が即時ではないことから、為替の変動や世界情勢の変化等でまったく誤差の範囲に埋もれてしまうだろうと思われます。つまりは、TPPはなんでもない手続きで終わるだろうということです。安い買い物を楽しんでみてはいかがでしょうか。

 

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