ソチ会談「アダナ合意」でシリア情勢の命運を手中にするプーチン 塗り替えられる勢力抗争図

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Full text of Turkey,Russia agreement on northeast Syria©️AlJazeera[Sergei Chirikov/Reuters]

今年10月22日にロシア南部のソチで会談したロシアのウラジミール・プーチン大統領とトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、トルコの軍事介入で混迷するシリア情勢で、「クルド人自治部隊の「シリア民主軍(SDF)」と「人民防衛部隊(YPG)」がマンビジとタル・リファットの町から撤退する」ことで譲歩し「アダナ合意」に至った。クルド人の新たな身元保証人は完全にロシアに委譲された。10月22日は米国のマイク・ペンス副大統領がエルドアン氏と2時間もかけずに無理矢理「停戦協定」を取り付けた失効期限日だった。

トルコにもロシアにも、同盟国だった米国からも「テロ組織」と呼ばれるクルド人部隊

 トルコ南部の都市アダナから引いた「アダナ合意」でまとめられたのは、10月23日正午からロシア軍警察とシリア国境警備隊がトルコーシリア国境のシリア側に入る。「平和の泉」作戦の管轄外だがYPGの部隊を撤退させ、彼らの武器を撤去することを最終的には150時間以内に遂行することで一致した。同月29日にはロシア側とトルコ側双方の巡回が「平和の泉」作戦の管轄内でカミシュリ市を除く東西地域で始まることなど10項目を明記している。
 具体的には「テロ組織」YPGはマンビジとタル・リファットから武器を投降し撤退する。
「AlJazeera」が報じた「アダナ合意」声明文に“terrorism”との表記があることはまだ理解できる。しかし、「CNN」の報道になぜ”the YPG that is considered a terrorist organization by Turkey and US.”と”US”=「米国」も入ってくるのがどうにも解せない。

トランプ政権後 シリア情勢勢力抗争図©️「【増補版】シリア戦場からの声」桜木武史著[アルファベータブックス]

 シリア情勢はKJ法でその勢力抗争図を示すとなると、かほどにも複雑だ。
 ロシアとイランはシリアのアサド氏を強力に支え、トルコはロシアと協力関係にある。そして米国は「クルド人労働党(PKK)」や「民主連合党(PYD)」と所縁の深いクルド人自治部隊の「人民防衛部隊(YPG)」、「シリア民主軍(SDF)」などを積極的に支援してきた。その米軍の差し向けた安全保障の抑止力の傘を警戒するトルコはクルド人自治部隊と積極的敵対関係にある。ドナルド・トランプ大統領率いる米軍を早期に撤退させるよう、米国と中立関係にあるトルコはロシアとイランに圧力をかけられ続けてきた。トルコにとってみれば、米国の抑止力の傘をクルド人自治部隊から引き揚げさせるか否かが鍵を握っていた。プーチン氏は欧州難民危機の飛び火で中立関係を保てなくなる事を懸念材料に抱えている。そのためエルドアン氏とは内実、協力関係を続けたい。米国の傀儡政権であるイスラエルもアサド政権とは積極的敵対関係にある。その勢力図が今、まさに塗り替えられようとしているのだ。

 トルコ側は侵攻当初の狙い通りトルコーシリア国境のテル・アビヤドとアル・アインの街に「安全地帯」を作り、約360万人のトルコが抱えるシリア難民(庇護希求者:asylum-seekers)をこれまでに少しずつトルコ本国から強制送還していた人数を増やしていく意向を示している。しかし360万人にも及ぶシリア難民をどうやってこの国境付近の2つの街というせせこましい「安全地帯」に移住させようと考えているのか甚だ疑問が浮かぶ。

歪んだ人権意識が自衛権を発動することに利用されたら国際人道法違反

 ならば、その360万人が逃れているというシリア庇護希求者(Asylum-seekers)最多国トルコがこれまでに抱えてきた課題とは何か?
今年、トルコ国内はインフレで失業率が14%以上増加した。トルコ人はシリアの庇護希求者をなぜ自国で受け入れたのかトルコ政府に疑問を抱いている。
 彼らはシリア難民に自分たちの仕事が奪われてしまう。また過剰な資源やサービス従事をトルコ政府が供与していまいか、と考える。シリア難民らに差別や敵対的風土が醸成され、レイシズムが高まっているという。
 かつては難民に労働市場への参入権は充分ではない時代が続いたが、現在ではトルコにシリア難民がオーナーの事業登録会社が公式に7000以上に上っている。
こうした背景から、今年7月末頃にも「France24」による、イスタンブールのシリア人が経営するビジネスに投石など一連の攻撃があった事件が報じられた。オーナーは6年前にアレッポからトルコに逃れてきたシリア難民。トルコのクチュクチェリメツェ地域の労働者階級のための理髪店が一部トルコ人のヘイトによる襲撃にあったそうだ。
 

スウェーデンのユヴァ・ヨハンソン欧州連合(EU)委員候補公聴会©️European Parliament

 10月1日、欧州評議会でスウェーデンのユヴァ・ヨハンソン欧州連合(EU)委員候補が公聴会に召喚され、移民・難民政策について質疑応答が行われた。この際、オランダの政治家でマルティナ・エルミナ・アントニア・ストライク グリーンズのための欧州議会メンバーは「トルコでシリア庇護希求者が脅威となり、数百人が強制送還された」点について質疑した。数百人ものシリア人たちは戦場の中心地となっているシリア本国のイドリブ県を含む戦場危険地帯にまで強制送還された可能性がある。
一部入手した情報によれば、エルドアン氏が難民滞留による政情不安により地方議会の与党得票を落としている状況。その地方統治に失策が生まれているが故に難民をシリアへ強制送還したとの見方もあるようだ。

 現地首都イスタンブールで息長いシリア難民の支援活動を続けるNGO関係者は「シリア人が差別を受けているという話はよく聞くが、その一方でトルコ人がシリア人を支援している話もよく聞くのにあまり知られていない。強制送還の話は2012年くらいから聞いている。特に、難民キャンプで暴動を起こしたりした場合、強制送還をされるということはあったようだ。普通に生活している人たちが強制送還されるというのは聞いたことがなかったが、最近は喧嘩などで警察沙汰になり強制送還された、というケースがあるようだ」と語っていた。
情報が確かであれば、ノン・ルフールマン原則に則り、本来、難民の保護措置を定めている難民条約第33条1項で難民の追放は決してあってはならない。国際法である難民条約は保護法益を付与された難民の地位を守るもののはずである。

 だが、今般エルドアン氏が行なっているのは例外規定の難民条約第32条1項“締約国は「国の安全または公の秩序を理由とする場合」には難民を追放することができる”を利用していることになる。しかも情報筋が語るように「喧嘩レベル」の騒動で発動しているならなおさら深刻な事態であろう。これは国際法の「特別法優位の原則(lex specialis)」で難民保護条約が歪んだ人権保護法へと変質してしまっていることを示していることになりはしまいか?

 東京外国語大学大学院の伊勢崎賢治教授は「必要最小限度の国家の防衛で開戦していいとは、開戦法規(jus ad bellum)を指す国連憲章第51条『自衛権』には一言も書いていない。あくまでも交戦規定(jus in bello)として相手国の人権を守るために必要最小限の攻撃をしなくてはならないという国際人道法が制限する交戦法規のことを指す。人権侵害では戦争は引き起こせない。武力攻撃を受けたという証明義務を果たす時、初めて自衛権が発動できる。トルコの軍事介入はシリア領内であり、行政権もあり交戦状態だと言える。しかしトルコを通じて駐留していた米軍も撤退してしまったグレーゾーンの状態だ。過去にトランプ政権がトマホークミサイルを40発シリアに撃ち込んだ時、米国はシリアから攻撃を受けていなかった。個別的自衛権が成り立たない。極めて深刻な開戦法規の違反だ。それ以上に恒常的に武力攻撃を受けていないのに、国際法に明白に違反しているのがイスラエルだと言える。人権問題が自衛権を成り立たせるのは唯一、国連がその事態を取り上げてPKOで諸外国と共に対応しようとする時だけだ」と解説した。

The Latest Syria Map National Post of Canada ThingLink png.

 近年シリア政府軍と無数に乱立するシリア反政府軍との関係性が急激に悪化していた。またペンタゴンが支援しているクルド人自治部隊とかつてCIAが支援し、今はトルコが支援してきた反逆者たちとの間で起きた衝突こそが重要な動きだと言われてきた。失効期限つきの「停戦協定」合意が結ばれたとはいえ、トルコ単独による北東部シリア軍事介入で予てから予測されてきた難民の急増は深刻だ。

OCHA Syria Flash Update #8 NES 19-20 Oct 2019©️OCHA

 国連人道問題調整事務所(OCHA)の最新の発表情報によると、現在トルコの単独軍事介入により、10月18日にアル・アインで激しい戦闘があった。その結果10月19日にはアル・アインから30人の負傷者が避難し、4名の遺体がタルテイマーのロジ病院やアル・ハサカ地方自治体のカミシュリ市にあるファーマン病院に運ばれた。
トルコ国境地帯そばアル・アイン近くのマブルカ難民キャンプは現在、トルコ軍の統治下にあり、14の家族が取り残されている。南下したアリーシェ難民キャンプへの移住の計画があるという。
アル・ハサカ市の40万人以上が従事するアルーク給水場を修繕する作戦が成功裏に終わり、ライフラインの影響を10月19日までに回復させた。
 74,000人の子供を含む176,400人以上がアル・ハサカやラッカ、アレッポの地方自治体から国内避難民になったシリア人がさらにでてきた。また18,500人(アル・ハサカ市のカミシュリ市に2500人、ラッカ市のタル・アビアドに16,000)が元の居住地に帰宅したという報告もある。
 20日までに3,122人が庇護希求者(Asylum-seekers)となった北部シリアのコバニ、アモダ、カーミシュリー他、周辺村落からセイヘラとアルワリード村近くの非公式なポイントを通じてシリアーイラク間の国境からイラクに入国し150キロ東にあるバーダラッシュ難民キャンプへと逃げてきた。国連が過去7日間だけで逃げてきたシリア難民は166,000人と見積もっている。
 20日にクルド人自治部隊シリア民主軍(SDF)はアル・アインから撤退すると発表した。
 同月23日時点で総計して世界貿易機関(WHO)の発表によれば約18,0000人が国内避難民(IDPs)になったという。

European Union on Syria – Media Stakeout (10 Oct 2019)©️United Nations

同月10日にシリアに関する欧州連合(EU)プレスブリーフィングを行なったドイツのユルゲン・シュルツ国連次席大使は「我々はトルコに今後もシリア難民の保護国として民間人を守り続け、持続可能な人道支援をしていくことを望む。軍事力ではシリア内戦は解決できない」とした上で、「本物の解決策とは速やかなアサド政権の移譲と国連安保理決議2254に沿った2012年のジュネーヴ声明に則った、シリア政府も参加した国連のジュネーヴ和平交渉プロセスの努力を無駄にしないことこそが各締約国に求められる」と述べた。

米露パワーバランスの敗者となる2つのトリガーを引いたトランプ

Ukraine president knew Trump wanted Biden probe back in May :report©️NEW YORK POST

 米国のドナルド・トランプ大統領がシリア情勢を「我々の問題ではない」と見限ったのには、2つの契機となるトリガーがあった。そもそも国内で「ウクライナスキャンダル」が発覚し民主党のナンシー・ペロシ下院議長がトランプ氏「弾劾裁判」攻勢をかけてきた第一のウクライナ入電。元コメディアン出身のウクライナのウォロディミール・ゼレンスキー大統領が、今だに親ロシア派と親欧米派で揉め事が絶えないウクライナ東部を巡る対ロシア戦争に米軍の支援を欲していた。それが故にゼレンスキー氏はトランプ氏の政敵の中傷の片棒を担ぐという重箱の隅を突くような米ジャーナリズム攻勢が第二の「ロシアゲート」としてトランプ失脚を焦点に連日始まる。
 その火の粉をトランプ氏は2020年米大統領選の最大のライバル、前米副大統領のジョー・バイデン候補の息子ハンター・バイデン氏が理事を務めるウクライナの天然ガス会社ブリスマ・ホールディングスに不正疑惑を責任転嫁したという。ゼレンスキー氏はトランプ氏からバイデンの息子の調査を急かされたが、ウクライナの検察官ヴィクトル・ショーキン氏は「ハンター・バイデン氏に不正や汚職を十分に裏付けるようなものは見つからなかった」と答えている。しかしその過程で父親のジョー・バイデン氏が大統領選の最大の脅威となる前に手を打とうとしてウクライナ検察官を解雇しようと圧力をかけたことが問題視された。

Fox News Poll- Biden and Warren gain ground in Democratic race©️Fox News

しかしペロシ下院議長率いる民主党も米メディアも狙いはあくまでトランプ氏なことは明白だ。トランプ氏はその後の追及も「全てはバイデン氏のやったことだ」と反発している。しかし「FOX NEWS poll」の下馬評を見れば、バイデン候補と同民主党のバーニー・サンダース、エリザベス・ウォレン両候補が10ポイント以上の差をつけてトランプ氏を下すファクトが突きつけられている。
 他方、ゼレンスキー氏はウクライナ本国でも国際的にも弱体化し、透明性を高めて支持率を取り戻すためロシアのプーチン氏と取引するしかなくなっているというのが実情だ。

Who reaps the rewards of Donald Trump’s chaos in Syria and Ukrine?Spoiler :it’s Vladimir Putin©️Reuters:Sputnik:Mikhail Klimentyev:Kremlin

 第二に、トランプ氏が10月早期にトルコにF35統合打撃戦闘機計画へ再加入させることを許可し、北東シリアに侵攻させないよう付随的にエルドアンと電話会談したものの、物別れに終わった。そしてトルコはシリア北東部に侵攻を開始したわけだが…
このワシントンポストで報じられた逸話には伏線があった。7月の早期にエルドアン氏はロシア製のS400地対空ミサイルをトルコに搬入しているのである。
トランプが撤退を決めクルドを見限った時、ロシアのセルゲイ・ラヴロフ外相はクルド人自治領内に航空機から降り立ち、クルドの上級高官と会談していた。そしてクルド人の指導者は素早く彼らの新しい取引について公表したのだ。
 これが第二のトリガーである。シリア北東部にトルコが軍事介入すれば、トランプ大統領が掌を返して米国が支援してきたクルド人自治部隊を捨て、経済的メリットの大きなNATO諸国や貿易パートナー国との関係性を深める。
トランプ氏はまさに文字通りディールの男である。予測不可能な行動は全て「アメリカファースト」の自国経済最優先主義で説明がつく。

 シリア情勢でも、毎回クルド人を裏切ってきた米国は今、再び裏切った。トランプ氏は戦略なきシリア駐留米軍1000人部隊撤退を決断した時でさえ、シリアの石油欲しさにイスラム国(IS)から警護するようマーク・エスパー国防長官に命じて部隊の一部を突如としてシリアに残すことにした。
 トルコと合意した「停戦協定」を反古にしておきながらシリア系クルド人の手で作られたジャガイモやトマトを装甲車に積んで悠々と引き上げていく米軍に向かってイラク人が石を投げつける。トルコ軍に侵攻されたシリアートルコ国境近くのアル・アインの街でクルド人自治部隊の「シリア民主軍(SDF)」と「人民防衛部隊(YPG)」が辛くも応戦していた。
実際、「Reuters」通信などはこれまでイスラム国に対し空爆を主導するなどシリアで先陣を切って戦ってきたクルド人自治部隊のシリア民主軍(SDF)やYPGなどは「同盟国の裏切りにあった」という怒りで紛糾していると報じた。
 クルド人自治部隊の高官が「我々は掃討作戦を展開するとなれば、これまで米国の安全保障の傘で保護されていた防衛の間隙を埋め、トルコ軍の攻撃を阻止するためにダマスカスやロシア側と連絡を取り合い、会談する用意がある」と当初から声を上げていた。

 SDFは以前、トルコ軍ないしトルコ軍が支援するシリア反政府集団の寄せ集めである「自由シリア軍(FSA)」が民間人や負傷者、クルド人自治部隊の戦闘員の避難を妨害していると非難した。
しかしエイドワーカー「フリー・ブルマ・レンジャー」のデイヴィッド・ユーバンク氏がシリア北東部アル・アインの街で目撃したのは「私たちは何日間もかけて突破しようと試みていましたが、ついに人道回廊が開けました。驚くべきことに「自由シリア軍(FSA)」がチェックポイントで私たちを通してくれました。そして直接病院に行けた。37人が避難し、何人かは遺体になった」とCNNの電話取材に応じている。

なぜクルド政党「シリア民主評議会(SDC)」はD.C.に渡航?その時ロシアは…

SDC:New stage in Syria after defeat of ISIS©️KURDISTAN24

 トルコのフルシ・アカル国防相は SDFを非難したが、「クルディスタン労働党(PKK)」に比べあまり知られていないSDF直属の政党「シリア民主評議会(SDC)」のイルハム・アフメド代表はワシントンD.C.に渡航しトランプ政権の高官と北部シリアの将来について討議する場を持つため会談し逆に怒りを買ったと報じられた。
 だが、イルハム氏はなぜトランプ政権などに頼みの綱を引こうとしたのだろうか。
トランプ氏がクルドをエルドアンとの取引で「(クルド人の抱えるシリアの問題は)我々とは関係ないことだ」と裏切った。その時帰路に着く航空機の中で番記者に詰め寄られてもエスパー氏は米国―トルコ間の「停戦協定」違反を知りながら、「誰がそれを破っているか」については全く言及せず。米国は歴史的に常にクルド人を裏切り続けてきた。
 逆にプーチン氏はすぐにクルド人自治部隊と交渉を開始し合意の仲介役を果たした。
クルド人筋側の予測通り、ロシアの支援を受けたシリアのバッシャール・アル・アサド軍との間に合意が見られた。シリア北東部、クルド人自治部隊の「シリア民主軍(SDF)」と「人民防衛部隊(YPG)」が拠点とする一帯に、シリア政府軍が合流。2018年2ヶ月におよびトルコ軍と親トルコ派のシリア反政府軍「自由シリア軍」は北部アフリンを攻撃し、制圧した過去をもつ。
 このため、シリア政府とクルド人自治部隊の合意声明では「今回の侵攻に対抗し、トルコ軍と外国人部隊が侵入した地域を解放する」ためにシリアートルコ国境全域へSDF支援のシリア軍派兵を行うとしたのだ。
 大概、シリア反政府武装集団が含まれるトルコの地上部隊とは、その多くがイスラム過激派のクルド人が恐れる少数派民族に対して民族浄化(粛清)を断行するという束縛から解き放たれることができたのだった。シリア政府軍とこれらのトルコが支援する反武装集団は矢継ぎ早に残虐な戦争犯罪に約8年以上にも長期化するシリア内戦を通して手を染めてきた。
プーチン氏はそれを理解していながら、この危険な状況下で新しい指導力を発揮する役割を担おうと立ち上がったのである。
 そしてクルド人自治部隊がそもそも統治していた領内に、ロシアの主要な同盟国であり、支援してきたシリア政府軍を進軍させたのだ。
さらにロシア軍自体も駐留軍警察部隊もロシア国旗を掲揚し配備した。
 ロシアのラブロフ氏は「多くの年数を米国とその有志連合軍の一触即発の政策に数多くの年数、注意を払うよう努力してきた。その結果、シリアの崩壊を導き、ユーフラテス川の東岸に擬似州を生み、クルド人を分離主義者に押し付け、アラブ民族との全面対決に直面させることになったのだ」と指摘した。
ロシア政府はクルド人自治部隊が保護し続けてきた数千ものIS投獄者や近親者に蓋をするトルコの能力を疑っている。
 プーチン氏の関心はシリアとイラクのイスラム国(IS)に共鳴して入隊してしまったロシアのテロ組織「イマラート・カフカス(IK)」の戦闘員に政情不安定化するコーカサス地域に「必要悪」を統制するため戻ってくるよう望むことにある。トルクメニスタンのアシュガバット独立国家共和国フォーラムで、「これらの数百、数千もの反乱分子がCIS諸国(旧ソ連の独立国家共同体)のようになる時がきたとしたら、プーチン氏らロシア同盟諸国はいかにこの脅威に立ち向かうのかどこで指揮を取るのか?」と警告した。
 また天敵同士のイスラエルとイランがロシアを通じて関係性が変わり得る道も推測されている。ここまで読み進めてくると、あたかもプーチン氏が戦乱の中東和平をもたらす勝者のように思えてくる。だが、私たちは決して忘れてはいけない。

Total civilians death toll 2018©️The Syrian Network for Human Rights

 2017年初頭のBBCによる独占インタビューで、シリアのバッシャール・アル・アサド大統領は「私はイスラム国(IS)というテロリストを掃討するための正義の戦いをしている」と平然と言ってのけた。
 だが、実際にはシリア内戦で、アサド氏こそが最多の民間人やエイドワーカーを殺戮している。「The Syrian Network For Human Rights」の統計(2011年3月〜2016年11月)からも殺害された全民間人のうち92.92%の188,729人がシリア政府軍による犠牲者が出ていることが分かる。直近の2018年だけでも全民間人犠牲者数6964人のうち、4162人がアサド政府軍に殺害されてきたという数字は周知の事実だ。そのシリア政府軍はあの2018年ドゥーマの化学兵器使用疑惑事件時に、米英仏によって空爆された化学兵器製造拠点だった「シリア科学調査研究センター(SSRC)」爆破後も、民間人に化学兵器を使った。そして今回のトルコ軍事介入でも未だに化学兵器を使用し続けている。それを強烈に否定し続けているのもロシアのプーチン氏なのだから。

シリア科学調査研究センター(SSRC)の化学兵器開発史

 1971年に創立されたシリア科学調査研究センター(SSRC)は、建前上民生用の義務履行機関としている間に、その主要な機能の一つとしてシリアの化学兵器やミサイル開発計画を監視される対象であり続けた。これらの活動が含まれるものに巻き込まれることで、SSRCは公式に豪州やカナダ、欧州連合、日本、ノルウェー、韓国、スイス、そして米国に制裁を受け続けた。2017年2月にも国連安保理決議の草案として制裁勧告が発出されたが、ロシアと中国による拒否権で退けられている。
 フランスの調査ジャーナル「Mediapart」の報告書によれば、SSRCは西ドイツ全土からの化学兵器開発支援を受けていたという。1970年代や1980年代早期までシリアの科学者らはドイツの大学研究所や研究センターで訓練を受けていた。アルメニアからの支援も併せてVXガスの製造を行なっていたというのである。
このSSRCは近年シリア、イラン、アラブ首長国連邦、レバノン、北朝鮮、中国のみならず、フランスやカナダの民間化学産業からも物資調達を受けていたことが明らかになった。
 要はシリアで開発製造されていた主たる化学兵器とは、世界を震撼させた日本のオウム真理教が使用した地下鉄サリン事件(1995年)でも悪名高い「サリン」、北朝鮮の金正恩労働党委員長の実兄、金正男氏殺害事件(2017年)で使用された「VXガス」、ロシアのKGBの常套手段としても知られる毒物殺害手段「マスタードガス」の3種に大別されるようだ。
 何を隠そう2018年4月のシリア化学兵器攻撃疑惑事件の際にも、ロシア軍化学兵器保護部隊のアレクサンダー・ロディノフ氏が、その筋の専門家らの証言として「ドゥーマの謀反軍の研究所内で、塩素とマスタードガスを製造する成分が発見された」と語っている。

 国連調査メカニズムとOPCWが合同調査団(JIM:Joint Investigative Mechanism)として活動したシリア科学調査研究センター(SSRC)が担った役割を米英仏の空爆壊滅後も代替するネットワークか何かがシリアに根付いており、外国産業が物資調達協力をし続けている現状があるのか。
 

戦場ジャーナリスト 桜木武史氏のTwitter(2019年9月20日)

 戦場ジャーナリストの桜木武史氏の証言通りならば、被害者は今後も生まれ続けるということだ。
 そうであれば、今一度監視し、摘発しなければならないのは2018年以降も使用され続けている化学兵器攻撃の方である。

 今年9月27日、米国のマイク・ポンペオ国務長官は同年5月19日にシリア北西部イドリブ県でシリアのアサド政権が使用した「ケロセンガス」という塩素ガスの一種を「化学兵器」行使と結論付けた。大量破壊兵器の禁止機構で監視対象に入っていない毒ガスだ。
 9月の国連総会でも米国のジム・ジェフリー シリア特命全権大使は5月の化学兵器攻撃で4人が負傷したと述べた。ジェフリー氏は詳述することを辞退したが、ワシントンの回答はこれに準じたものだったであろう。ジェフリー氏は「もしトランプ政権期中に化学兵器を使用するなら、何が起きたかの記録を全て国連に提供する。非常に高いレベルの信ぴょう性無くしてこのような被害情報提供は十分に行えない。誰が愚かであることになるか信じるのは非常に困難だ」と続けた。国連パネルは、8年以上続くシリア内戦中、2017年4月と2018年4月を含む24以上にも上る化学兵器攻撃をアサド政府軍が行なったものと見なしている。

シリアでは何か問題が起きるとあらゆる当事者が相手を貶めて自分たちを有利にするための情報を発信するため、マスメディアの「Reiter」通信が「反体制派が化学兵器を使用した」と報じても、シリア国営メディアの「SANA」は「反体制派の部隊は化学兵器を使用したりしていない。そんな兵器を持っているのはアサド政権である」と互いに責任転嫁し合い情報戦の応酬を行うのが首尾一貫した通説だ。
 それは今起きている10月に始まったトルコの軍事介入後も同様である。トルコと米国と欧州連合(EU)が「テロ組織」と位置付けるクルド人自治部隊のYPGとPKKの支持者らがマスメディアではなく、ソーシャルメディアを使ってトルコ軍の続けてきた対テロ作戦中にリアルとフェイクの玉石混交した写真とビデオ投稿でトルコ軍が化学兵器を使用したと非難する中傷合戦を繰り広げてきた。
 トルコのアカル国防相は「トルコ軍は化学兵器など使っていない」と猛反発し、逆に「テロ組織が化学兵器を使用する準備をしている」と警告した。
 だが、マスメディアが「テロ組織」とラベリングするクルド人自治部隊を次の最終項で見てゆく「在日クルド人」の方たちが、いかにトルコ軍を見ているかでその真偽を見極める基準が読者の方々に混乱をもたらすことになるであろう。
 疑うべきはむしろ、マスメディアであるという現実が浮かび上がるからである。今やかつて外務省官僚だった孫崎享氏までもが新聞よりもSNSをチェックする時間が長くなっているという現実。世代間のデジタル・デヴァイドの解消が情報収集手段のトッププライオリティの変遷の重要性を世相に大きく映し出している。
 問題は化学兵器を一番多く使用してきた主犯格はアサド政権であるというファクトこそを見極めるメディアリテラシーの目を常に持ち続けることは無論。アサドにいかに正義の鉄槌を下し、被害者となったシリア難民(国内避難民・庇護希求者)に賠償と救済を保障していくかを国際法始め活きた司法で実現させるか。またグローバル市民一人一人が手にした表現の自由のポジティブ・エフェクトで国際社会を突き動かす変革をもたらすことにあると言えるのではないだろうか。

「シリア・アラブ共和国」は化学兵器禁止条約(CWC)に2013年、国連によって強制的に加盟させられたが、批准していない。さらに国際刑事裁判所(ICC)には署名も批准もしていない。ICCで「戦争犯罪」と判示された行為は、「国際的武力紛争」と名付けられる締約国間の枠組みを超えた国際犯罪となるのが常識だ。しかし化学兵器禁止条約(CWC)第一条一項(c)がシリアの「内戦」におけるICC規定の適用にそのまま該当するとは言えなかった。内戦の場合、あくまで国家にCWC第7条「国内実施法令」の関連から禁じていると言われてきた。確かに国際刑事裁判所(ICC)は特殊管轄権を持ち得る特別な刑事法廷だ。
 しかしICC「ローマ規定」第12条に規定されている「管轄権」は、同条2項で犯罪行為他国か被疑者国籍国がICC規定当事国であることが前提条件として定められている。これに対する例外として国連安全保障理事会による付託がある。しかし殊、シリアにおいては「拒否権」を常に発動するシリアの支援国ロシアの存在から「事実上」管轄権の下に置くことが極めて難しいのは明白だ。またシリアの経済復興支援に加担する中国も障害になる。

 果たしてICC第8条「戦争犯罪」2項(b)ⅹⅷ(毒ガス兵器の使用禁止)規定違反以外にも広義の「戦争犯罪」の戦犯として、国家元首であるアサド氏の裁きや被害者救済の賠償を断行することはICC下の締約国以外、本当に実現不可能なのか?
 僅かな希望がある。それは「国内」刑事裁判との関係で一部の国が採用している「普遍的管轄権」だ。「普遍的管轄権」とはジュネーヴ諸条約と第一追加議定書の重大な違反に該当・非該当を問わず、締約国の広義の「国際法上の犯罪(集団殺害犯罪・戦争犯罪・人道に対する犯罪)」を犯した者がある国で逮捕された場合、発生場所や容疑者の国籍を問わず行使することが認められている権利を指す。2011年にスイスが法改正に伴い「普遍的管轄権」を認めたものの、この権利が適用されてからこれまでに有罪判決を受けた人物は1990年代後半事件判決訴追一事案のみとされている。一方で「普遍的管轄権」には批判も多い。しかし、スイスの人権NGO「トライアルインターナショナル」と「シビタス・マキシマ」が戦争犯罪などの容疑でアフリカ人の元閣僚2人を刑事告発した。これをスイス連邦当局が逮捕した事案がある。中でもリベリアの反政府組織元リーダーのアリュー・コシア容疑者について告発したシビタス・マキシマのアラン・ヴェルナー代表は「検事総長がコシア容疑者をベリンツォーナ連邦刑事裁判所に起訴すれば歴史上初めての国際犯罪事件になるだろう」とスイス地元メディアに語っている。

 上記を踏まえ、2018年4月にシリアのドゥーマ地区で大規模な化学兵器攻撃を受けたシリア国内避難民(IDPs)による被害申し立てを2018年6月18日にICC予審局・予審部会Ⅰのロヒンギャ難民の人権侵害ならびに人道被害を異議申し立てた審理に同時に類似申し立てした事案がある。

シリアでおきている樽爆弾の使用や、病院・民間のインフラを標的にした攻撃、化学兵器の使用、そして民間人への直接の攻撃は民間人を国内避難民(IDPs)あるいは庇護希求者(Asylum-Seekers)にする意図の強いものとして、(ロヒンギャ難民問題と)同時並行的に尊重して付託されるべき問題であること。

バングラデッシュ共和国当局は領有管轄権をロヒンギャ難民の国外追放から生じる国際犯罪ないしは、「普遍的管轄権」の原則下であらゆる他の犯罪を訴追する意思も能力も保有していないであろうことを尊重して付託すること。

ミャンマーやバングラデッシュのロヒンギャ難民を含む最近置かれている難民の状況に類似したシリアやヨルダンに関心を寄せる状況を尊重して付託すること。

「ICC Date- 18 June 2018 PRE-TRIAL CHAMBER I」

 この審判の進捗は、シリア難民にとっても極めて厳しい闘いとなるだろう。予審局では主にロヒンギャ難民に対する人権侵害事案として「市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約B)」第5条「保護の基準」2項「基本的人権の尊重」に則り、第6条「生命に対する権利及び死刑」3項「集団殺害犯罪の防止及び処罰に関する義務」の規定に違反している。世界人権宣言においては第3条「生命、自由、身体の安全」により保障されるはずの生命が脅かされることへの国際人権法違反であることが申し立てられている。シリア難民の扱いは化学兵器攻撃被害も含めてあくまでこれに類似する問題という扱いだ。
 しかしICCに付託しようとしても「ロシア」の壁がこれを阻むなら、そもそもシリア「国内」の司法行政は司法省の管轄の下、ほとんど機能していない。最高憲法裁判所はシリアの大統領とバース党による収賄と汚職で塗れて独立性が全く保たれていない。また裁判官の数も圧倒的に少ない。
 軍事裁判所は原則的には軍人か警察の構成員を含む全ての治安を裁く。ところが刑法260条から339条まで定義された「国家安全保障のための攻撃」のために市民に対しても権威を持っている。
 とはいえ、訴追された個人は法廷に立たされた被告側の弁護士に代表される弁護される権利を保有している。
 しかし、シリアの軍事法廷においては弁護士は機能不全だ。裁判中、被告に接見することさえ認められていない。「全体の法廷を動かしている主体」はバース党である。「軍事諜報機関」の構成員の現在は、多くの場合、裁判官が無実の個人をあえて釈放しようとさえしない。軍事法廷そのものが機能不全なのである。

 だが、上述のスイス人権団体刑事告発の事案を見れば、昨年、欧州からもたらされた朗報にも希望が見出せる。シリア諜報機関職員の中から拷問の疑いで、ドイツとフランスにおいて逮捕者が上級職員含み3名出るという革新的な出来事があった。そしてスウェーデンやオーストリアも含む数多くの欧州諸国で24人の刑事告訴の要件を充たして令状や召喚状が取れるか否かが訴訟の最大争点となっている。
 今般、ドイツとフランスでの合同捜査で、ドイツ連邦共和国検察局とフランス検察局は、拷問の罪によるシリア諜報機関上級職員ら3名の逮捕状を発布した。それより早く2016年には国連調査メカニズムで担当だったフランスのカトリーン・マーシー・ウヘル元判事によりアサド訴追の一歩手前まで国連は迫っていたのだ。そのウヘル元判事が今、本国フランスで本件を任されているという。しかしそれは本稿の趣旨から大きく逸脱するため詳細は別稿に譲る。

「毎日毎日、毎日、繰り返されるジェノサイドを止めさせよ!」在日クルド人が反戦デモ


日本で荒れ狂う台風19号(Hagibis)が列島を縦断した直後、再び福島が激甚災害の水害の憂き目にあっていた只中。
10月14日国連大学前では雨天の中、在日クルド人と彼らを支援する日本人学生らが集い、およそ1時間に及ぶスタンドマイクパフォーマンスを行った。
パフォーマンス前に集会に集っていた一人の在日クルド人男性チョウ・ラク・マームさん(40・建築業)に話を聞くと、彼は興奮した口調でまくし立てるではないか。
「自由シリア軍はトルコ軍が支援してクルド人を虐殺しているイスラム国(IS)から分派したテロ組織だよ!トルコ軍=IS=自由シリア軍は皆、同じ考え方のテロリストだよ!そのトップにいるのがエルドアンだ!!」
 確かにクルド人からすればそうかもしれない。だが、マスメディアはむしろクルド人自治部隊を「テロリスト」と一斉にラベリングして報じている。また自由シリア軍はアサド軍から逮捕されたり、捕虜になって拷問を受けているシリア人や外国人義勇兵を最も多く救出しているとの情報も得ていた私には腑に落ちない点もあった。しかしマームさんが言うように、クルド人からすれば上述の組織や国家は皆、積極的敵対関係にある。だが、シリア人や外国人義勇兵からすると、そうではない。その辺りの差なのではないか。
 シリアで長年取材経験のある戦場ジャーナリストの桜木武史さんがKJ法であそこまで完璧な勢力抗争図を作成できるということは、相当偏りなく様々な立場の人々を調査報道しているからだろうなと。これはご本人に裏取り取材が必要そうだと強く感じるものがあった。

 SDFやYPGがシリア軍やロシア側に支援を求めるのは、彼らに利用されてしまうリスクが極めて高いのではないですか?と聞くと、マームさんは「それしか生き延びる道はないよ!みんな戦闘機の空爆でやられて全滅してしまう!」と叫ぶように言った。

 白髪の在日クルド人女性のゴララさん(40)は「トランプタワーとエルドアンのビジネスの結び付きでクルド人のジェノサイドを可能にしてきたと言える。トルコ政府の政策の中にはクルド人を考慮したものはないと断言できる。過去にトルコーアルメニア間であったアルメニア人虐殺の負の歴史的悲劇が、今まさに『毎日、毎日、毎日、毎日』クルド人を虐殺することで繰り返されている。5年前に北部シリアの(クルド人自治政府統治地域)コバネであった出来事と同じことが起きている。イランが殺し、イラクが殺し、トルコが殺し、シリアが殺し、米国が裏切り、金を奪った。誰も生き延びることはできない。」

―日本の安倍晋三首相に何を望みますか?
「世界の首脳と対話し、トルコのエルドアン大統領にはジェノサイドを止めさせる。人道支援物資も送らず、武器も売却しない。全ての連絡手段を断つことです。」

―トルコのエルドアン大統領に対しては何を訴えたいですか?
「私はグローバル市民です。国連に対しオルタナティブな考え方を持つ人々の中の一人です。国連は今すぐジェノサイドを止めるべきで、沈黙していることはできないはずです。第二に世界に強大な力を持つNATOもジェノサイドを強制的な力で止めるべき。私はエルドアンに語るべき言葉など持ちません。彼は驚くべき奇策に打って出ただけで、人間がどう、あるべきかということに全く心を砕いていないからです。」ゴララさんは流暢な英語で言葉を紡ぎ出す。さらに次のように付け加えた。
「欧州、アジア、豪州。これらの諸国にはその国が主体となって有益かつ継続的に動けるだけの力や声がある。それこそが国境を超えた無慈悲な心というものであるはずなんです。」

 白髪であるためか、ゴララさんは一見、高齢者に思えてしまう。そのため、クリクリとした輝く瞳を持ち笑顔の弾ける聡明な顔立ちのシャイエンちゃん(9)を「お孫さんですか?」と思わず尋ねると、「いいえ。娘です。」と即答で返ってきた。
 日本人の40代と比べるとゴララさんの白髪は際立つ。あえて染めでもしないならば、相当なご苦労をされてこられたからなのか。深く考えさせられるところが大きかった。

 10月22日、新天皇皇后両陛下の「即位正殿の儀」に訪日するはずだったエルドアン氏は同月17日、急遽訪日を取りやめた。
 日本では台風の進路の爪痕の処理が。シリアではプーチンがトルコを操り、クルドを利用しイスラエルを畏怖させ、中東を掌握していくだろう。クルド人や難民の命運を握るイニシアチブはもはや米国のトランプにはない。

tomokihidachi

2003年、日芸文芸学科卒業。マガジンハウス「ダ・カーポ」編集部フリー契約ライター。編プロで書籍の編集職にも関わり、Devex.Japan、「国際開発ジャーナル」で記事を発表。本に関するWEBニュースサイト「ビーカイブ」から本格的にジャーナリズムの実績を積む。この他、TBS報道局CGルーム提携企業や(株)共同テレビジョン映像取材部に勤務した。個人で新潟中越大震災取材や3.11の2週間後にボランティアとして福島に現地入り。現在は市民ライター(種々雑多な副業と兼業)として執筆しながら21年目の闘病中。(株)「ログミー」編集部やクラウドソーシング系のフリー単発案件、NPO地域精神保健機構COMHBOで「コンボライター」の実績もある。(財)日本国際問題研究所「軍縮・科学技術センター」令和元年「軍縮・不拡散」合宿講座認定証取得。目下プログラミングの研修を控え体調調整しながら多くの案件にアプライ中。時代を鋭く抉る社会派作家志望!無数の不採用通知に負けず職業を選ばず様々な仕事をこなしながら書き続け、35年かけプロの作家になったノリーンエアズを敬愛。

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