ボタンだけを作っている?『島田電機製作所』で本物のボタンをゲット!

  by 古川 智規  Tags :  

世の中にはいろんなものを作っている会社がある。トップ画像の通り「エレベーターの表示器」だけを作っている会社というのが存在するので取材した。
どんな世界にもマニアがいるもので、そんなエレベーターのボタンのヲタさん向けの「本物」商品も紹介するので、ご覧いただきたい。

やってきたのは東京都八王子市にある『島田電機製作所』。あらかじめ取材に行くことは伝えてあったが、いきなりディスプレイで「名指し」の歓迎。こんな取材の出だしは初めてである。

事務所に入るといきなりエレベーターが。ボタンを押すと音とともに表示器が光る。しかしそれだけだ。なんとこの「エレベーター」は完全なダミーである。早速だまされたのだが、事務所がある2階へ階段で登っていく。

同社では内外のエレベーターの表示器を作っているのは前述したとおりだが、ボタンだけではなく接近表示(上に行くのか下に行くのかの表示)や、階数表示等も手掛ける。ギャラリーには昔懐かしいボタンも展示してあり、工場見学の際には子供がこの部屋に入ると出てこなくなるほどの魔力がある。ボタンが押せて光るのだから子供には天国なのは覚えがあるので理解できる。

最新のタッチパネル型のボタン(もはや物理的なボタンは存在しない)を配した制御装置もある。

しかし疑問に思うのは、エレベーターメーカーは多くあるのに、ボタンは作らないのかというということである。
日本だけに限った話だと年間21000台のエレベーターが設置され、うち5000台が特注品であるという。約4分の1が特注だというのもおどろきだが、その特注品だけを作っているのが同社だ。
簡単に言えば各メーカーのカタログに掲載してある規格品はもちろん各メーカーで製造しているが、デザイナーが設計した高層ビルやタワーマンション等のデザイナーズマンションは、エレベーターを含めてのデザインであるためにボタンや表示器は特注品でり、それだけをメーカーが作っていてはコストがかさむので各メーカーからの特注品だけを作る同社の出番だというわけだ。

上海タワーも島田電機製作所の仕事

高層ビルやタワーと言えば、上海に取材に行った際に上った上海タワー。

地下2階から地上118階まで直行で駆け上る自慢の高速エレベーターは日本の三菱電機製。この取材の際に乗ったエレベーターで撮影した写真だ。

エレベーターガールの頭部向こう側に1つだけ写っているボタンが同社の「仕事」だとはこの時には知る由もなく、あとで探して見つけたのがこの写真だ。確かにそう言われれば操作系全体が日本的ではある。

マニア垂涎のキーホルダー

さて、このような世界的な「仕事」をするのにも関わらず、ボタンに社名が入っているわけではないので一般には知られていないのも現実だ。そこで同社ではこの特注のエレベーターボタンを使用してキーホルダーを作ってしまった。
これらは本物を使用しているので、それなりにコストがかかっている。お値段はなんと税込1360円という高級品。通販で購入可能だ。
この高価なキーホルダーにもかかわらずマニアに知れ渡り、買い求める御仁が続出するというマニアを甘く見た同社の誤算だ。

エレベーターのボタンを横や裏から見る機会はほとんどないが、よく考えると何十年も不特定多数の人に延々と押され続けるエレベーターのボタンは、デザインも大切だが耐久性も重要だ。ボタンが押されている間に文字が消えては用をなさないのである。
このキーホルダーは実際に職人が作った「本物」なので、よく観察してみると樹脂を彫って塗料を流し込み、コーティングしている様子が確認できた。これならば物理的に擦り減らない限り文字が消えることはないだろう。
そんな本物を求めてマニアが殺到するのだという。

さて、本来は作らなくてもよいキーホルダーを作ってしまうほど遊び心いっぱいな同社は、女性用アクセサリーを試作中だ。
広報担当の大森早智さんが見せてくれたのは、彼女が身に着けているイヤリングとネックレスだ。
エレベーターのボタンのを小型化したものをアクセサリーにしている。これほど小さいものは本物のエレベーターのボタンにはなり得ないので、これぞ個人向けの「特注品」と言えるのかもしれない。
彼女によるとまだ開発中で発売するかどうかを含めてまだ未定とのことだった。

同社の島田正孝社長によると会社の合言葉である「難しいは新しい、だから面白い!」をモットーに、一般の消費者にも面白いものを提供できればとの思いで作ったと語ってくれた。
同社では平日であれば随時工場見学を受け付けている(予約必修)とのことなので、マニアな方や小さい子供がいるご家庭ではご家族で行ってみてはいかがだろうか。ヲタさんも子供も思う存分ボタンを押しまくっていただきたい。なお、工場見学で同社を訪れた際には1360円のキーホルダーが500円のガチャで購入可能だ。選ぶことができないのと、わざわざ来てくれたお礼に500円で提供しているということなので、買い占められないうちにちょっと違った工場見学をしてみてはいかがだろうか。

※写真はすべて記者撮影

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