【360度VR動画】『ゲンティンドリーム』マラッカ海峡航海日誌!海外発のクルーズ船という選択(中編)

  by 古川 智規  Tags :  

海外旅行のスタイルでクルーズ船による船旅という選択肢を検討されたことはあるだろうか。
クルーズ船というと高級な旅の部類に入るというのが日本での一般的な認識だろう。もちろん、それは正解でもあるが答えのすべてではない。比較的リーズナブルなクルーズ船もあるのだが、知られていないこともあり良し悪しひっくるめてイメージが先行しがちである。
そこでシンガポール発着のクルーズ船『ゲンティンドリーム』で3泊4日の船旅を取材したのでレポートする。

※参考記事
【360度VR動画】『ゲンティンドリーム』マラッカ海峡航海日誌!海外発のクルーズ船という選択(前編)
https://rensai.jp/279953 [リンク]

中編は最初の寄港地であるマレーシアのペナンを出港するまでの行程である。

リドに恋して~リドマスターと呼ばれた男(16デッキ)

レストラン・リドはスーパースターヴァーゴにも設置されてたカフェテリア形式の無料レストランである。同社クルーズ船の無料レストランは以前まで同一の食事時間帯には開業しているいずれか1つのレストランが利用可能で2度目以降は有料だった。しかし制度が変わり何度利用しても無料になっている。リドはそれに加え、正規の食事時間帯以外にも軽食やドリンクが24時間いつでも好きな時に利用できるレストランにアップデートされていた。
スーパースターヴァーゴでリドを利用しつくした記者はこのアップデートされた本船のリドをさっそく使い倒すことにした。キーワードは「男は黙ってリド」「困ったときのリド」である。
2日目の朝食はこのリドで食事と撮影をするスケジュールだったが、オープン時間を待たずに軽食を物色するためにリドを訪ねてみた。

■ゲンティンドリーム乗船レポート2 レストランリド
https://youtu.be/lCxNysjD-uA

このように、夜明け前でも深夜でも小腹を満たすことのできるリドは航海中の強い味方になるだろう。
では、朝食時間帯のリドを紹介する。

記者が乗船した日はインド人旅客が多いこともあり、インド系の食事が多く用意されていた。逆に言うとインド人が食べるローカルフードをインドではない場所で試す良い機会になる。こういうところが多国籍の旅客が乗り合わせるクルーズ船の面白いところでもある。

もちろん、焼きたてのパンケーキのような女性に人気のメニューもある。しかもバター、はちみつ、メープルシロップ、ジャム、バター、生クリーム等はセルフサービス。よって、いくらでも好きなだけ生クリームを乗せることも可能なのだ。

中国系旅客も多いので本格的な点心もふんだんに用意されている。クルーの国籍が多様なので、ローカル料理に精通した料理人も多く、どの料理をとっても本格的なものを提供してくれる。

ところで、このリドには数々の思い出がある。
スパースターヴァーゴで初めてリドに行った時には圧倒的多数派の中国人旅客と席取りバトルを繰り返し、2日間はうんざりしたものだ。しかし時間が経過するとともに、なぜか足はリドに向いていた。ごった返す旅客の喧騒は人間観察をするよいBGMとなり、好きな料理を好きなだけ好きなペースで食べることができるリドに居心地の良さを感じたのが原因だろうと後で分析したものだ。
それによりリドの特徴や、料理の傾向、本船で初体験となった24時間営業によるリドの快適な使い方をマスターしたことから、公式なものではないにしろ同行した他メディアの記者や広報担当者から「リドマスター」の称号をいただいた。

記者にとっては愛すべきリドなのだが、英語において船舶には古くから人称代名詞で表現するときに”she”を使用していた。さすがに現代ではニュース等の記事には中性の”it”を使用するようだが、航海日誌にはまだsheであることが多いと聞く。これは艦船でも同様である。
その意味からも、多少こじつけではあるが船舶のレストランであるリドを「愛すべき」と表現しても不自然はないと信じる。

ちなみにいくらでも好きなだけ食べることができるので調子に乗って食べていると、他のレストランでの楽しみな食事ができなくなるのでほどほどにしたい。もう少し食べたいと思ったらコーヒーや紅茶を飲んでぐっと我慢するくらいがちょうどよい。それでもおなかがすいたら食事時間外にリドに赴き、軽食を取るのが正しい使い方といえよう。

また多国籍な料理が並ぶので、日本では食べることが難しいアジアのローカルな食事を狙って取るのもリドの面白い使い方だろう。

船内を施設の一部をまとめて紹介

朝食を食べているころにマラッカ海峡に朝日が昇る。日の出と日の入りの時刻は毎日キャビンに届けられる船内新聞に掲載されている。日本発着ではないので基本的には英語版だが、当日のレストランの営業時刻や各種エンターテイメント、ワークショップの案内、免税店やショップのバーゲンセール情報まで盛りだくさんだ。難しい英語は使用していないので店舗名称と時刻さえ確認できれば読むことは難しくない。もしわからなければ6デッキのレセプションに行けば日本語対応ができるクルーがいるので訪ねてみるとよい。

ファンネルマーク(煙突のマーク)は船舶の象徴である。商船にはほぼ例外なくファンネルマークがあり、航空機でいう垂直尾翼のマークに似ている。というよりも船舶の方が先輩だ。写真は18デッキより撮影。
では、船内施設の一部を順次紹介する。

本船にはその船体の大きさを生かして多くの施設を設置してる。
バスケットコート(スポーツプレックス)もその一つで、子供たちが楽しそうにバスケットボールに興じていた。(19デッキ)

ウォータースライダーは6基も設置され、子供用の小規模なものから大人用のスリル満点のものまで多数だ。(20デッキ)

透明なチューブの部分は船体の外に位置しており下は海。すべる速度を落として下を見ると本船の喫水にもよるが、海水面まで数十メートルの位置。そのスリルは想像に難くない。

アスレチック施設もあり、ハーネスを付けるとはいえロープコースの一部はまたまた船体の外。体力を全開にして渡りきらないと精神衛生上よくないのでトライする場合には十分に心の準備と気合を入れよう。(18デッキ)

サイズは若干ミニだがボウリング場もある。4レーンだけだが腕に覚えのある方は挑戦してみてはいかがだろうか。超巨大船とはいえ排水型の船舶は転舵する際にオートバイや滑走型の小型艇とは反対側に船体が傾く。その角度は人間にはほとんど感じられないが、球体は傾いた方向に流れる。よって陸上でのボウリングよりも難しいと思われる。(17デッキ)

クルーズ船にプールはつきものだが、写真のメインプールの他にも上級船室用のプールもある。プールの四隅にはジャグジーが設置され水着着用が必要ながらも大海原を眺めながらのお風呂気分に浸ることもできる。(メインプールは16デッキ)

上級船室・パレスのキャビン

上級船室たる「パレス」の旅客はすべてにおいて優先権があることはすでに述べた。
客室がある区画そのものに入るにもパレス客室のアクセスパスが必要で、専用のレセプションがある。いわばシティホテルにおけるエグゼクティブフロアと同等かそれ以上の区画なのである。上級船室用の専用レストランもあるが、そちらは後述する。

写真はパレスの最上級船室である「パレスヴィラ」である。
スイートルームであるので寝室や応接室が別になっているのは当然として、オープンエアの部分がありダブルデッキ構造の上層階にはキャビン専用のサンデッキもある。キャビンは船首部に位置しており、船橋(ブリッジ)とほぼ同じ視界が広がる。前方には備え付けの双眼鏡まであり、世界屈指の国際航路であるマラッカ海峡を行き交う船舶をキャプテンやオフィサーが見る同じ視点で一望することができる。

部屋を出たオープンエアのデッキにはテーブルが置いてあり、グラスを傾けたり風を感じたりとバルコニーとは違うぜい沢な空間が確保されている。

さらに専用のジャグジーが設置されており、日本人の感覚からすれば露天風呂付きの部屋ということになろうか。どこからも見えることはないので、実際に露天風呂として使用することは可能だろう。

ジャグジーの脇にはこれまた専用のサウナが用意され、部屋を使い切るのにどれくらい時間が必要なのだろうかと考えてしまうほどの充実ぶりだ。

もちろん閉鎖空間のバスルームもあり、女性はパウダールームとしても使用できるように椅子やジュエリーケース等が設置されていた。

このオープンエアデッキから階上につながる階段があり、そこにはキャビン専用のサンデッキがある。もちろん船首方向を向いているので横になりながら針路方向を見渡すことができる。

この上級船室であるパレスはさまざまなタイプの船室があり、パレスのうち最も安いキャビンは記者が宿泊したバルコニー付きのキャビン(バルコニーステートルーム)に1泊当たり1万円ほどのプラスで乗船することができる。これを高いと見るか安いと見るかはそれぞれだろうが、部屋の高級さのみならず前述したようにすべてにおいて優先権が与えられ、専用のレストランやプール等が使用でき、有料レストランを1日1回無料で利用することができ、バーやレストランでの標準的なアルコールも無料となれば、決して高いとは言い切れず、むしろ上級船室の恩恵を享受するのであれば安いのではないかとさえ思える。パレス専用のレストランについては別に紹介する。

ブリッジビューイングルーム(15デッキ)

本船にはブリッジを裏側から自由に見ることができる小部屋が設けられている。そこにはキャプテンやオフィサーの紹介、本船の模型が設置され、ガラス越しではあるがブリッジの様子をここから見ることができる。

モニターにはリアルタイムで本船の状態が表示され、針路や速力等の詳細、電子海図を見ることができる。
記者は小型船舶操縦士の免許を受有しているのである程度は理解できるが、船舶で使用する単位を覚えておくとより理解ができて楽しむことができると思われるので記しておく。
距離の単位は海里(マイル・シーマイル)を使用し、1マイルは1852メートル。米英で使用する陸マイルとは違うので注意。
船舶のスピードのことを速力といい単位はノット(kt)を使用する。1ノットは1時間に1海里進む速さで、メートル法で表記すると1ノットは1.852km/hということになる。つまり20ノットと表示されていれば時速37.04キロメートルということだ。
方位は360度表記で写真のヘディング(針路)347.6度の方位角は北北西よりさらに北寄りに針路をとっているという意味である。

各種ワークショップ

船内では様々なところで各種のワークショップが行われている。子供向けのものもあり、和食レストランでの巻き寿司を作るワークショップや写真のような日本で言うところの折り紙のようなものまで多種多様にそろっている。その日に開催されるワークショップの詳細は船内新聞で知ることができる。

レストラン・シルクロード(6デッキ)

ペナンで下船する前の昼食は有料中華レストランのシルクロード。
ステージもあり夜は各種ショーが開催されることもある。壁面に掛けられた「中国風美人画」とでもいうべき絵画はぜひとも見ておきたい見事なものだ。どんな絵なのかは見てからのお楽しみということにしたい。

北京ダックを包む実演は別に動画で紹介するとして、料理は言うまでもないが記者が感動したのはシルクロードで出されたジャスミン茶だ。こんなにおいしいジャスミン茶を日本で飲んだことがないので、がぶ飲みを推奨するわけではないが、ぜひとも味わってほしい隠れた逸品である。

マレーシア・ペナン島

本船はマレーシアのペナン島に着岸した。ジョージタウンはペナン島で最も大きな都市で、もちろん中心地。
特に入国審査を受けることはなく、アクセスカードを本船側でスキャンしただけで下船した。前述の通り入出国審査は船会社が代行してくれているおかげだ。
この航路に限らずクルーズ船の寄港地下船で注意しなければならないのは乗り遅れである。4000名もの旅客を乗せている客船はダイヤ遅延や遅発によるコストを考慮して原則、乗り遅れた旅客を待つことはない。乗り遅れれば次の寄港地まで自力で向かえばいいのだが、事はそう簡単ではない。この航路は、シンガポール・マレーシア・タイとすべての入出港地が違う国である。したがって次の寄港地に向かうには国境を越えなければならない。国境を超えるには旅券が必要なのだが、肝心の旅券は本船に預けているので出国ができないのである。出国ができなければ当然ながら次の寄港地に行けるわけもなく、そこですべての旅行を中止するしかない。旅券紛失の心配はないので最終的に手元には戻るが、乗り遅れれば旅程は大幅に乱れ、最悪の場合そこから帰国するしかないという過酷な運命が待ち構えているので十分に注意したい。

なお本航路での船内時間はシンガポール標準時に統一されているので、現地でのローカルタイムとは1時間のずれがある寄港地もあるので時差管理にも注意したい。スマートフォンの自動時刻取得とタイムゾーン取得は切り、シンガポール標準時に固定しておくことを強くお勧めする。

では、ジョージタウンで乗車した人力車(自転車による三輪タクシー)の模様を動画で紹介する。

■ゲンティンドリーム乗船レポート3 ペナン島で寄港地観光
https://youtu.be/8cC2jH19VOs

チョコレート&コーヒーミュージアムはチョコレートやコーヒーの作り方を展示している小規模な展示と、製造直売が行われている。

ほとんどのチョコレートとコーヒーは試食・試飲ができるので、日本で見かけない珍しいものはぜひ試しておきたい。

このお店はオーナーが日本人ということもあるのだろうか、店員のほとんどは簡単な日本語ができるほか、おどろくべきは日本円の現金が使えるということである。寄港地下船は7-8時間程度でいくら使うかわからない現地通貨をあらかじめ用意するのは無駄になる可能性が高いので、日本円が使えるというのは非常に便利である。

記者が購入したのは低糖のコーヒーミックスと、コーヒーと紅茶がミックスされたものだ。低糖といっても日本のように人工甘味料が使用されているわけではなく本当に低糖にしているのでほのかな甘みでおいしかった。またコーヒーと紅茶のミックスは当地では比較的ポピュラーなもののようで、こちらもおいしかったので購入した。すべてインスタントなのでカップにお湯を注いで出来上がり。

夜のとばりが下りたころ、港に戻る途中で本船のイルミネーションが見渡せる場所があったので撮影。
このイルミネーションはバルコニー船室の上部に大きなLEDが埋め込まれており、これをすべて点灯させてメッセージを表示する。なお、このイルミネーションは有料で貸し切ることも可能だそうで、オリジナルのメッセージを表示することもできる。プロポーズのメッセージでも流せば最高のサプライズになるのではないだろうか。
では、この日のイルミネーションを動画でご覧いただこう。

■ゲンティンドリーム乗船レポート4 ペナン・ジョージタウンより本船を望む
https://youtu.be/c55QT7PQogA

レストラン・ブルーラグーン(7デッキ)

キャビンに戻って外を見るとジョージタウンの港の灯火が海に映り広がっていた。
夕食はジョージタウンで済ませたものの、観光で歩きとおしだったので空腹を覚える。
夜食目当てでレストラン・ブルーラグーンに向かった。

ブルーラグーンは主に東南アジアの料理を出す24時間営業の有料レストランだが、夜食狙いで来たのには理由がある。
23時から翌1時までの夜食時間帯は1シンガポールドルぽっきりメニューが登場するのだ。1シンガポールドルは約80円なので、激安メニューといえる。

これらが1皿1シンガポールドルなので、写真のものをすべて食べても7シンガポールドル(約560円)だ。
ちなみに船内通貨はシンガポールドルであるが、アクセスカードで部屋付けとして支払い、下船前にまとめて精算する。

中編の最後はバルコニーで収録したペナン出航後のここまでのまとめをご覧いただこう。

■ゲンティンドリーム乗船レポート5 ペナン出港後
https://youtu.be/EToSYkkHMbk

次回(最終回)は、タイのプーケットでの寄港地観光からシンガポールへの航海、そして帰国までの行程を紹介する。

※参考記事
【360度VR動画】『ゲンティンドリーム』マラッカ海峡航海日誌!海外発のクルーズ船という選択(後編)
https://rensai.jp/280077 [リンク]

※写真および動画はすべて記者撮影・収録
 取材協力:ゲンティンクルーズライン・ゲンティンドリーム

乗り物大好き。好奇心旺盛。いいことも悪いこともあるさ。どうせなら知らないことを知って、違う価値観を覗いて、上も下も右も左もそれぞれの立ち位置で一緒に見聞を広げましょう。

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