【軍縮】北朝鮮の非核化・イラン核合意の行方―日本が担うべき役割は?

  by tomokihidachi  Tags :  

「写真は著者撮影」

2018年は「軍縮」の年だった。激動する朝鮮半島情勢の非核化を巡る「米朝首脳会談」が世界中の注目を集めた。また世界の問題児、米国のドナルド・トランプ大統領によるイラン核合意「包括的共同作業計画(JCPOA)」からの離脱は米国vs欧州諸国とイランの分断を生み、国際的な核不拡散の問題がグローバル市民の関心を引く主要なイシューとなった。

イランに「IAEA保障措置協定・追加議定書(AP)」第5条Cは暫定適用

12月13日、「原子力平和利用と核不拡散・核セキュリティに関する国際フォーラム『国際的な核不拡散の課題と強化〜IAEAの役割と日本の貢献〜』」が東京都内で行われた。
登壇者は座長に京都大学 浅田 正彦教授(国際法学)。IAEA フレデリック・クロード保障措置プログラム調整課長、米国国務省スティーヴ・ラモンターニュ氏。外務省参与 中根猛 科学技術協力担当大使、(国研)日本原子力研究開発機構/核不拡散・核セキュリティ総合支援センター(JAEA/ISCN)直井洋介センター長。

「ミサイル拡散」国防戦略を米国のマイク・ポンペオ国務長官に「国連安保理決議2231の国際法違反だ」と批判されたイラン。イラン特別代表担当のブライアン・フック氏もまた「イランの有害なミサイル活動は『包括的共同作業計画(JCPOA)』なしに取り組むべきだというのはミスリードだ。仏独英はイランの弾道ミサイルに取り組むべく米国と協働することをオープンにしてきた。だがイランとの交渉はJCPOAからは切り離されるべき議論だった」と非難してきた。

パネルディスカッションの座長を務める浅田氏は「イランはJCPOAを締結しているが、追加議定書は署名しただけで批准しておらず、発効していない状況がずっと続いている。ただ、JCPOAではイランに対して合意の一部として追加議定書批准までの間、暫定適用するよう内容は締約国間の2016年1月から暫定適用を始めているが、内容は暫定であっても締約国と同義だ。状況はどうか?」とクロード氏に質した。
クロード氏は「『IAEA保障措置協定・追加議定書(AP)』第5条Cはセンシティブで最も重要な規定だが、イランでは暫定適用されている。内容は24時間前または短期の通告によりIAEAが指定するところであれば、どこへでも行けるようイランは査察官を受け入れなければならないというものだ」と答えた。
ラモンターニュ氏はJCPOAとトランプ政権の対イラン政策について国務省の外交官ではなく、科学者としての見解を述べた。「8月と11月に米国が二度の経済制裁をしてもイランの振る舞いに変化が見られなかった。サンセット条項の問題がある。ウラン濃縮の問題はものによっては10年、15年の長期に及ぶ。そもそも濃縮ウランが開発されてからは国際社会に暴露されるまでは工業規模での短い期間では核開発することができなかった。改めてありとあらゆる手を尽くし永久的に核開発できないようにせねばならない。JCPOAの件はAP の普遍化をより包括的なディールとして模索していく」。
日本政府は基本的にイランのJCPOAに対していかなるスタンスを取っているのか?
中根氏は「国際的不拡散体制に貢献するものを引き続き支持している。英独仏EUと協力。イランが着実な履行をすることが日本を含めたこうした支援をIAEAとも協力しながらIAEAが十分なリソースを支援することを可能な限り履行することが重要だ。また、イランのJCPOA履行に対する協力も重要で、日本としてはJAEA /ISCNからの協力を今後も進めていく」と語る。

「北朝鮮・IAEA保障措置協定AP」もIAEAにはマスト

浅田氏は「IAEAの重水関係もJCPOAでは入っている。果たしてどのような検証関係が入ってくるか?北朝鮮では「追加議定書(AP)」はまだ進んでいない。さらにはそれを超えるものは必要か?とりわけイランを見ると「包括的保障措置協定(CSA)」およびAPは当然適用することになっているが、それを超えた検証も入ってくる。例えば重水関係というのは、JCPOAに入っている。イランとの関係を念頭に置いた場合に北朝鮮の非核化について様々なレベルがあるが、どのようなレベルで何が必要なのか?北朝鮮に関してはIAEAの類似レポートでは核関連の活動が継続している」と質した。
ラモンターニュ氏は「非核化は完璧で完全でなければならない。前例で、国家が自ら核兵器を放棄する、あるいは発展・開発の段階は違うが、リビアや南アフリカも共通点はあった。成功ファクターとしてはまず国家が戦略的な決定を行って核開発を止めようとしたという点が重なるポイントだ。リビアモデルはリビアが自ら核開発を止めた時に米側、IAEA、多国籍チームと協力的で、計量管理をし、廃止するという努力をしていた。2つの前例の成功ファクターから学ぶべきものはある」と言う。
クロード氏は「北朝鮮の核情報について申告をさせて検証する上で既存の締結ではまだないが、『北朝鮮・IAEA保障措置協定AP』もIAEAにとってはマストだ。申告が正しいか否か追加議定書が発効しなければいかなる結論もIAEAは下せない。AP以外はJCPOAのようにアドホック「特定査察」になると思う。もし特定の物質、活動で保障措置対象下でないものについては、例えば重水などはアドホックで現時点では回答できかねる。しかし保障措置を北朝鮮に対して履行することになれば、まずは「追加議定書(AP)」が必要だ。安保理や加盟国からの要請、あるいは有志国、少数国からの要請があればIAEAはマンデートを持つ」と語る。
米国は「核軍縮検証のための国際パートナーシップ(International Partnership for Nuclear Disarmament Verification:IPNDV)』を主導している。では日本の原子力技術に基づき何ができ、いかなる検証をしていけばいいのか?
直井氏は「北朝鮮は転換工場、ウラン鉱山、エンリッチメント・プラントを所持している。六者協議の時に寧辺から除去されて違うところに燃料製造工場も保有。北朝鮮は寧辺に5メガワットの黒鉛減速炉を持ち、その炉で作ったものから彼らの放射化学施設でプルトニウム燃料を取り出して核爆弾を作るというルートがある。北朝鮮の非核化にはIAEAとは違うウラン濃縮工場で遠心分離機を無能力化する定義とリアクターをどうすれば完全に使えない状態にできるかという判断が必要だ」と指摘した。

大国パワーポリティクスではなく小国が主導権を握る初の朝鮮半島情勢

従来の朝鮮半島情勢は米中にしか解決できる問題ではないという見方だった。しかし昨年は朝鮮半島を中心に4月27日の「板門店宣言」、6月12日の「米朝共同声明」、そして9月19日の「平壌共同宣言」が下した小国がイニシアチブを握る新たな時代の米朝中韓の外交が展開された。
「新しい日中関係を考える研究者の会」代表の天児慧 早稲田大学名誉教授は東京大学で講演し「今日の朝鮮半島問題は①「非核化」実現、②統一へ向けた基本的な枠組みの構築、③北東アジア地域の「平和構築」の3つの課題を内容として事態が推移しており、「非核化」のみの視点から捉えるべきではない。北朝鮮問題と米中の直接対決という貿易戦争と文在寅大統領の朝鮮半島統一戦略を見ていくと、朝鮮半島の近・現代史で、『南北コリア』が主役として状況打開に取り組んだ大国パワーポリティクスの場にしない初のケースだ。北朝鮮は『並進路線』の復活をにおわせながらも来年早期に予定されている第二回米朝首脳会談で米国との交渉に臨むだろう。日清戦争、朝鮮戦争などの過去から現在に至るまで大国に翻弄された史実から、今回、鍵を握っていたのが韓国の文在寅大統領だと言える。ASEAN首脳会談の場でも文氏が『ASEAN+1(韓国)を来年ソウル市で開催したい』と提案し、インドネシアのジョコ・ウィドド大統領が『金正恩氏を招待してはどうか?』と反応した。米中という大国の意向と離れた独自の動きだ」と注目していた。しかしその後の動向を俯瞰すると「⑴中国がかなり強力に北朝鮮に「飴と鞭」を使ったと推測される。⑵トランプ政権の対北政策に柔軟性が見られなかったことによって、時間が経つにつれて北の米への猜疑心も増大し、米朝関係は「膠着状態」に陥ったようだ。現在の状況は、小国の主体外交と大国のパワーゲームのつばぜり合いの状態に入っていると見做すのが妥当だろう。第二回の米朝会談が今後を占ううえで重要な会議となることは間違いない」と天児氏は解説する。
北朝鮮の非核化を巡る動向は遅滞化している。第三回南北首脳会談の場で、金正恩氏が爆破した東倉里の核実験場や寧辺の核施設にも国際査察を受け入れる意向を明らかにしたことが韓国の文在寅氏を通じて明らかになった。こうした南北朝鮮の外交プロセスが賞賛に値する本質的な信頼醸成と通常兵器の脅威の低減という成果を生んできていても、北朝鮮はその核戦力を維持し、さらに活動的に増え続けてきた。

トランプ氏の「北朝鮮危機は『解決済み』だ」と主張し続けてきた姿勢故に、混乱したほとんどの分析官や監視官たちが、彼は閉鎖している実験場が何ら軍縮に関する結実を生まなかったことや、注意を払っていなかったと理解している。北朝鮮の核兵器の増大に新たな焦点を当て続けてきた堅実な動向として、トランプ氏が単に、北朝鮮は単独で軍縮してこなかったということに注意を払ってこなかったという証拠になった。それがミサイルや核兵器の実験をしてこなかったという限りにおいては公的に彼の妨害をしたり、その人気取りを奪い去ろうとしたわけではないがためだ。金氏はシンガポールに軍縮をするために行ったふりをし、トランプ氏はその彼を信じるふりをしてきた

「WAR ON THE ROCKS」(2018年12月24日)

北朝鮮の戦力というものが育まれ続け、トランプ氏は公式にそれを否定している。そこにはいかにその準備期間を遅らせるか、北朝鮮が核ミサイル技術を他国に拡散することを防ぐかについての議論はほとんどなされていない。
意味のある軍備管理目標とはー配備されたミサイルと核分裂性物質製造能力の破壊のようなより多くの野心をミサイル実験一時停止から譲渡することだ。平和が続くことを生みがちなその道のりのほとんどは、朝鮮半島の非核化が長期に及ぶ目標として始まるものだが、短期的には北朝鮮の核兵器の発展と輸出を管理することに焦点を当てている。特に単独で北朝鮮の軍縮に関して主張する外交努力は間違った扉を押して動かすことになる。

2019年早期の第二回米朝首脳会談にイランカードを持ち出す可能性

今年12月14日、(社)先端技術安全保障研究所(GIEST)が公開シンポジウム「北朝鮮と中東」を都内で主催し、基調講演を行った放送大学の高橋和夫名誉教授は第二回米朝首脳会談のトランプ政権の狙いはどこにあると見るのか?
「トランプ氏が合理的、整合的にそこまで外交を動かしているとは考えていない。北朝鮮が出してくるメッセージは、明らかに米国が制裁を発動した時や、交渉する時、少なくともトランプ政権はイランと言うカードを使って切るつもりはない。しかしながらトランプ氏が何を考えているのかは誰にも読みきれない。トランプ氏の周りの人の議論を見ると当面、イランには経済制裁するというが、トランプ氏自身は整合性がない」と高橋氏は断定的にトランプ氏の外交政策を掴むのは間違いだと指摘する。
高橋氏と共に登壇したジャーナリストの阪堂博之氏は「北朝鮮が核技術、ミサイルを提供し、代わりにイランから石油を得るなど互いに実利がある。また、第二次世界大戦では共に大国の植民地だった史実がある。大戦後は非同盟の連帯感を作ろうとした」と投げかけた。
これに対し高橋氏は「実は北朝鮮の核・ミサイルを中東に輸出することに一番神経を尖らせているのはイスラエルだ。イスラエルは北朝鮮と話をして結局この話はまとまらなかった。核技術・ミサイルにしたら当初の活動を止める。実利だけでは理解しづらい」と応じた。
また阪堂氏は「今月、北朝鮮の代表団の李容浩外相が南アフリカに行った途中、シリアに寄りバッシャール・アル・アサド大統領とワリード・アル・ムアッリム外相と会談している。鍵を握るのはイランーシリアの二国間関係(bilateral relation)だ」と指摘。
高橋氏は「イランを米朝首脳会談のディールの詳細にしたいトランプ氏のイランに対する圧力があるのではないか?ミサイルと核の取引についてもっと注意深く戦略的に考えて北朝鮮はロシアとの関係性も考え対米、対ロ、対中と置いてシリアを位置づけているように思える」と読む。
イラクのサダム・フセインは核を持っていなかったために米、英国に国際法違反の先制攻撃を仕掛けられ殲滅された。「リビアモデル」と呼称されるリビアの核開発放棄は欧米に協力した見返りとして制裁を解かれたが、アラブの春でリビアのムアンマル・アル・カダフィ大佐が民衆に殺害される。国際ジャーナリストの堤未果氏がカダフィ後のリビアを歩いて取材し明らかにしたのは、カダフィ氏は先進的な福祉政策を行っており、市民からの支持率も高かった。単なる暴君だとラベリングしたのはむしろ、欧米メディアの同調圧力からだったということだ。
阪堂氏は「中東諸国の前例を見ていると、無防備に核放棄はしないと言うのが北朝鮮の政策方針だ。もし、核放棄するとすれば『行動対行動原則』。米国が終戦宣言をし、ステップバイステップで進めていく。米国と北朝鮮に大使館ができ、お互いに今の米国、韓国、日本の関係のようにがビザなしで行き来でき、外形的にも米国から攻められる恐れが全くない状況にならなければ、核放棄できないのではないか」と解説した。
実はイランは「核兵器禁止条約」の交渉の場で条約採択へ向けた活発な役割を果たしていた。日本は「橋渡し役」を大義として振りかざし、肝心の「核兵器禁止条約」の交渉の場にさえ出席しなかった。「軍縮・不拡散イニシアチブ(NPDI)」外交で一定の軍縮努力を図っているという政府見解に終始するだけだ。

賢人会議の有識者委員でもある前出の浅田教授は、「核兵器が絶対悪」であるからといって、

「『軍縮は絶対善』であるとは言い切れない。軍縮の目的は国家安全保障であり、国際安全保障である。軍縮措置によって安全保障の根幹が危険に晒されたら、軍縮は安全保障を担う外交にその解決策を委ねねばならない。無論、米国の核の傘によって差しかけられる「核抑止」とは、安全保障に資するわけでもなく、機能するかと言えば、それは幻想だ」

と斬り捨てる。「国際問題」No.672(2018年6月)

このディベートは北朝鮮と歩む可能な生産的かつ進歩的な道のりに取り組んできた。トランプ政権の短期的に述べられた「最終的かつ完全に検証された非核化(FFVD:final, fully verified denuclearization)」の目標と「包括的核実験禁止条約(CTBT)」への同意を取り付けると掲げられた目標は、北朝鮮がその年の終わりに非核化抜きの外交を展開し、単独で軍縮しなかったであろうことがつまびらかに明らかにされたのである。

2003年、日芸文芸学科卒業。マガジンハウス「ダ・カーポ」編集部フリー契約ライター。編プロで書籍の編集職にも関わり、Devex.Japan、「国際開発ジャーナル」で記事を発表。本に関するWEBニュースサイト「ビーカイブ」から本格的にジャーナリズムの実績を積む。この他、TBS報道局CGルーム提携企業や(株)共同テレビジョン映像取材部に勤務。個人で新潟中越大震災取材や3.11の2週間後にボランティアとして福島に現地入り。現在は市民ライターとして(株)「ログミー」編集部やクラウドソーシングでも執筆しながら16年目の闘病中。NPO地域精神保健機構COMHBOで「コンボライター」の実績もあるが、目下プログラミングの研修中。時代を鋭く抉る社会派作家志望!無数の不採用通知に負けず職業を選ばず様々な仕事をこなしながら書き続け、35年かけプロの作家になったノリーンエアズを敬愛。

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