カメルーン生まれ、日本育ちの不思議な漫画家、星野ルネ

  by マツダ草介  Tags :  

世界に誇る日本の文化である漫画。その作者はほぼ日本人で外国人漫画家の作品が日本で売れることは稀でしょう。
時々中国や韓国の漫画が日本の漫画雑誌に掲載されることはあってもいまいち人気が出ない模様。
これは漫画というカルチャーが国によって受け入れ方が違うからではないでしょうか。
国ごとに漫画における規制があり、表現の違いがある。

どんなに素晴らしい内容の漫画があってもセリフが読めない文字では内容がわからないし絵の好みも違う。
外国人漫画家が日本で売れるのは難しい現状です。

その漫画の国境を超える作品が今年出版されました。

「アフリカ少年が日本で育った結果」

作者は日本人の父とカメルーン人の母を持つ男性、星野ルネ氏。カメルーンで生まれ育ち父親の仕事の関係で日本で暮らすことになった彼が、成長して大人になって描いた漫画――と書いた時点で一部の人は内容も知らずに「肌の違いでいじめられたつらい体験談じゃないのか」「日本人にもアフリカ人にもなれない不幸な男性の悲しい内容だろう」といったネガティブなイメージで受け取られるかもしれません。

ところがこの星野ルネさんの漫画はそういった悲観的な描写はなく、肌の違いや言葉の違いをあくまで関西風お笑い話として笑えて、常識の違いを考えさせられ、読み終えて心に残る作品となっております。

外国人に対しては英語で話す、という奇妙な日本の常識。英語のわからないルネさんは困りつつも日本語ができるといえず英語で対応してしまったり、有名な黒人の名で呼ばれてもあえて物まねをして笑い過ごしたり、とにかく前向きに笑っていこうという本人の性格がそのまま書籍化されたような漫画です。

とくに印象的だったのが相乗りが当たり前のカメルーンであちこち寄り道しながら進む話にあった言葉「寄り道は人生の醍醐味」これ以上前向きでカッコいい言葉もなかなかないと思います。

今回、記事にするにあたって星野さんに気になったことをいくつか尋ねてみました。

――好きな日本の漫画家は?自分の漫画に影響を与えた人は?

好き、というか影響を受けた漫画家は
手塚治虫先生、宮崎駿先生(漫画版のナウシカ) 鳥山明先生(ドラゴンボール)
井上雄彦先生(バガボンド) 三浦建太郎(ベルセルク) 岸本 斉史先生(ナルト)
あとは、浦安鉄筋家族、稲中なんかも影響受けてますね。
数えだすときりがないのですが。主には上にあげた先生の影響が強いと思います。

――他の日本漫画とくらべてコマワリが変わっているのは独自のアイデア?

アイデアというより、制約や規則などがあまり好きではないので、真っ直ぐの線は狭苦しく感じます。
今のジグザグのランダムな線は、フリーダムな気分にさせてくれるので好きで。

――今の日本漫画界について思うこと、今後こうなってほしいという願望は?

僕は漫画一筋で突っ走ってきたタイプではないので、途中下車して漫画駅に今いる状態なので大きな要望はどは実はありません・・・。
ただ、漫画を描くために漫画の勉強をするより、漫画以外の事をして蓄えた経験を漫画に投影したので、色々な世界、業界を渡り歩いてきた人の漫画を読みたいと思いますし、
そういう外部から漫画駅に立ち寄って来る人は、今までになかった文化を運んで来ると思っています。
自分もこれから様々な経験をしてゆきそれを漫画で表現したいと思っていますので、今後とも漫画駅付近にお住いのみなさんとは良いお付き合いをしていきたいですね。

――これからのルネさんの創作の目標は?

今回は「アフリカ少年が日本で育った結果」でアフリカ人が日本で育った日常を描いたのですが、実はこれは、アフリカ系以外にも共通するポイントをたくさん含んだ漫画です。
つまり「マイノリティとマジョリティ」が共生する際に起こりうる出来事をリストアップしたものなんです、だから日本のみならず、どこの国のどんな種類のマイノリティやマジョリティにも当てはまる話を多く含んでいます。

これからも、多くの人の参照になるようなワークショップ的な漫画を世に放ちたいと、意気込んでおります。

――ありがとうございました!

質問への回答から星野ルネさんの漫画に対する情熱や真剣さ、なにより漫画を描くのが大好きという印象を受けました。

最近面白い漫画に出会ってない、少し変わった味のある漫画が読みたいという方へ、新鮮で笑えて驚かされてじんわり暖かい気持ちになれる「アフリカ少年が日本で育った結果」をお勧めします!新しい発見ができて、日本と外国の常識の違いがわかり、アフリカ、カメルーンへのイメージが変わること受け合いです!

【星野ルネさんより告知】

アフリカ少年の読む異文化交流の世界を小さなお子さんも読める様にアレンジした「アフリカ少年毎日が冒険」を毎日小学生新聞にで毎週火曜日に連載中。
書籍版の第二弾も現在制作中!Twitterで色々な漫画企画ほぼ毎日更新中です!

購入されたい方はこちらからどうぞ!
https://www.amazon.co.jp/gp/product/4620325368/

(文責 マツダ草介 画像 星野ルネ @RENEhosino )

糖尿病など厄介な病気を抱える新米WEBライター。静岡在住。 本業の労働のかたわら、ネットのあちこちに文章を書き散らす日々。 サブカルチャー、オタクカルチャー界隈のゲームや同人音楽を研究中。 「つまらない時代に面白い人が面白いことをやっているので取材して記事にする」がモットー。

Twitter: soosuke_m