12月4日に大学入試センター試験に代わる新テストの試行調査の結果速報が発表された。
難化しているという報道が多いが、本当に難しくなったのだろうか。
数学1A第2問(3)の分析
正解率3%の数学1A第2問(3)を解いてみよう。
簡単に説明すると、Tシャツを1枚400円で120枚仕入れて、いくらで売れば利益が最大になるかという問題。
Tシャツの価格xと売れる枚数yの関係がx+10y=2500になっていることは、これ以前の問題で算出することになっている。
利益は(Tシャツ1枚の価格ー仕入れた価格)x(売れた枚数)になるのはわかっていただけると思う。
Tシャツ1枚の価格はx、仕入れた価格は400円、売れた枚数はyなのだから、利益は(x-400)yになる。
数学が得意でなければこの辺りで混乱してくるはずだ。
逆に数学が得意なら、手拍子で計算してしまう。x+10y=2500を利用して利益を計算して最大値を出せばx=1450と。
x=1450なら正解率がここまで下がることはない。数学が得意でなければ、仕入れたのは120枚なのだから、x+10y=2500に代入して、x=1300と答えを出すだろう。これが正解になる。
利益が最大になるxを求めよと言われているのに、利益を計算する数式ではないx+10y=2500を使うのはおかしいと感じるはずだ。おかしいと感じるのは正解である。
簿記の知識があれば正解に近付く
簿記を少しでもかじったことがあるなら、仕入と売上を別に処理することに慣れている。
仕入れの段階で、借方に仕入48000、貸方に現金48000と記入する。
売れたら、借方に現金・・・、貸方に売上・・・と記入する。
利益=収益ー費用という関係があるから、収益に当たる総売り上げと費用に当たる仕入れに使った48000円を代入すれば、利益=総売り上げー48000という式ができる。
数式にすれば利益=xy-48000なのだが、yは120を超えることができないという条件が付く。
xyはxが1250の時に最大値を取るのだが、この場合y=125となって不適。
yが120以下の時の表を作る必要がある。
x=1250 y=120 売上150000
x=1300 y=120 売上156000
x=1350 y=115 売上155250(x+10y=2500からy=115)
1400以上は売り上げが落ちていくし、xは50刻みという指示があるので、この3つがわかれば良い。
利益=総売り上げー48000なのだから、x=1300の時に利益が108000になって最大値を取る。
高度な数学ではなく、幅広く実務的な数学が必要
このように分析していくと、3%とという正解率の低さは、数学の内容が高度になったからではなくて、簿記という実務的な数学の知識が必要になったからと結論付けることができる。
今後は幅広い数学という名のもとに、教科書以外の様々な数学的知識を学ばなければならなくなるだろう。
簿記が資格なので、他の資格を考えてみると、FPや社労士で出題される年金の計算、FPや証券アナリストで問われるポートフォリオ理論などの知識が有利になることも考えられる。
数学の教師ができることは限られているので、親ができる範囲で伝えていくことが重要になりそう。
例えば、馬券の控除率が25%で、1枚100円の馬券が100枚売れて75人が的中した時、配当はいくらという問題。
競馬ファンなら即答できるだろうが、どのように考えて、どのように計算するかを子供に説明すれば、役に立つケースがありうる。
今以上に数学を捨てる受験生が増えそうで、今回の変更は逆効果な気はしている。