家を買う、とかく注文住宅となると「高い」というイメージが付きまとう。もっともそれは間違ってはいないのだが、どうしても夢と現実とが行き交い、とん挫するあるいは妥協の産物としての家になってしまいがちである。土地もお金もあるのであれば思う存分夢が実現できる家を注文すればよいのだが、現実はそうはいかない。
(写真は2階の1段高い和室コーナーからさらに上に伸びる屋根裏への階段)
最近は土地なしでやってきて、一緒にハウスメーカーが探してきて建てるというケースもあるという。まさに建売住宅を注文するノリであろう。それも金利が低いからできるのか、あるいはアベノミクスのおかげでじわじわと景況感が好転しているのか、実態は定かではないがマンションを購入するのとさほど変わらない負担で家を建てることができるケースもあるという。ただし、建てた後の税金負担や修繕改修や保守費用は大きく異なるので、そのあたりは専門家と相談していただきたい。いずれにせよマンションしか無理と思っていても、そうでもないという現実もあるようだ。
(写真は屋根裏へと上がる広報課の西口さん)
そこでなかなか難しい住宅の購入について、注文住宅が車を買う時のメーカーオプションやディーラーオプションのように付けたり外したりして、その都度金額が明瞭に分かるというシステムを採用しているというアキュラホームを取材した。
(屋根裏へ続く階段は取ってつけたようなハシゴではないので部屋として十分に使用可能)
さて、家を建てる際には様々な注文ができるし、同じ設計図を持っていけばどのハウスメーカーでもほぼ同じ家を建ててくれる。なぜ金額が異なるのだろうか?大手ハウスメーカーとローコストメーカーといわれるメーカーとは何がどう違うのだろうか?この際、間取りや家そのものの設計は置いておいて、写真では同社のこだわりを主に紹介する。前述したように設計図があればどこでも同じような家が建ってしまう。結局のところ間取りや設計はセンスの問題で、メーカーサイドにはあまり差異はないと考えたからだ。
(天井裏は立つことはできないが相当広い空間で子供でもパパの秘密基地的な書斎にも)
では早速、基本的なところから聞いてみた。
インタビューに応じてくれたのはアキュラホーム広報課の西口彩乃さんとアキュラホーム東京中央の木造ハウジングコーディネーターである野﨑雅人さん。
--いきなりですがアキュラホームは安いのですか?高いのですか?
「難しい質問ですね(笑)ローコストメーカーよりは高いですが、大手よりは安いです。あくまでも一般論ですが大手ハウスメーカーよりは3割安いと思っています」
(ドアは天井までが基本で余計な壁は付けないが跳ね上げとすることで通気性や静粛性も同時に確保する)
--では他社と何がどう違うのですか?
「そうですね。端的に申しますと見積もりのシステムでしょうか。当社は社長が元大工でして、会社を立ち上げたのも『日本の家はなぜ高いのか?』というところからスタートしています。つまりもともとの家の値段に職人として疑問を抱いていたわけです」
(広いクローゼットの扉はレースがないので床面とつらいちで他の引き戸もすべてそうだった)
--それはぼったくっていたということですか?
「いえいえ、そうではありません。家の値段を算出するのに膨大な労力が必要だったり、施工するのにも昔はそういうやり方しかなかったものが、今ではテクノロジーの進化でそこまでしなくてもいい個所がたくさんあるのです。職人としては、品質へのこだわりがある一方で、無駄がわかるので不要な施工は正直なところ無駄でしかないのがわかるわけです。そういう無駄を省いた結果です。施工の仕方で差が出るわけですね」
(子供部屋の天井の一部は屋根まで延び天窓が設けられて開放感あふれる設計に)
これは記者もハウスメーカーの営業を少しだけしたことがあるので経験上わかるが、見積もりのことを建築業界では「積算」と呼び、材料費はもちろんのことそれを施工するのにかかる職人の手間賃や、ビスやねじ、くぎ1本に至るまで全ての工費を設計や施工管理に携わる専門家が積み上げて文字通り積算して求める。これには膨大な時間と手間がかかり、たとえばライト1個を変更しようとするとそれだけで積算をし直すという手間がかかる。もっともコンピューターの導入で労力は削減されたとはいえ、施工方法が変わると手間賃も施工時間も異なるために、建材の値段だけを変えればいいという単純な話ではないのだ。
(都市部では近隣との近さをベランダの高い壁で覆う一方で上部は開放させて圧迫感をなくす工夫)
--それでも積算の仕方が変わるわけではないのでわずかなものでしょう?
「まさにそこなんですよ。見積もりのシステムを開発しまして、営業マンレベルでもその場でわかるのです。大雑把に説明しますと、このライトを取り付けるには材料がいくらで手間賃がいくらかかるかというというのがシステム上、値段が決まっているので、いつでも1個単位で自由に付けたり外したり変えたりできるのです」
(階段は1段多くその分傾斜が緩くなっている)
--まるで車の新車注文時のオプションを付け外しするような感じですね
「そうですね。車よりも自由度があり、すべてがオプションといってもいいでしょうか(笑)構造上の問題がなければ、どうにでもできます。ですから下世話な話ですがお金の話からズバッと入れるのです。やはりお客様にはご予算というのがあります。家を建てるのは一生に一度の夢ですから、最初は夢を追って設計します。ところがいざ設計が終わって積算してみるととんでもない値段(総工費)になっていて、もはや削るしかないわけですよね。それではあまりにも悲しいではないですか。ですので、設計といいますか構想段階から、これはいくら、これはいくらというように、付けたり外したりしながら、あるいはこれは譲れないというところはこだわりながら全体のバランスを取ってお金と同時進行で設計ができるわけです」
(キッチン手前にはリビングの子ども勉強スペースで奥はママのためのマルチルーム)
--なるほど。現実問題としてはお金は外せないですからね。でも家そのものの安心はどうなんですか?
「そうですね。この点についてはどこのメーカーさんも同じだと思いますが、住宅の構造について10年です。しかし、その後メンテナンスで保証を更新できます。また地盤の保証は20年(一般的には10年)です。保証体制はハウスメーカー寄りで、小回りが利くアフターサービスは工務店寄りとでも言いましょうか。要するに、建てればそれで終わりではハウスメーカーとしてはどうかと思っています。何もなくてもお客様の家を細かに訪問してアフターサービスを長く展開していくことが重要だと考えています」
(1階リビングの天井を高くとったしわ寄せは2階の和室コーナーがこあがりになるという利点に変貌した)
確かに新築段階ではどこで建ててもいい家には違いない。新築で入居していきなり瑕疵(かし)が見つかるという事例はほとんどない。よって、10年、20年と経過して初めていい家かどうかがわかるというのは理にかなっている。しかしながら、そのために10年20年と待つわけにもいかないし、それがために家を買って試してみるわけにもいかない。
そのためのモデルハウスであり、施主(家を建てる建て主)もそれなりのリテラシーが求められるところであろう。
多くのハウスメーカーがある中で、こだわりや無駄を省くという消費者にとって有利な点を勘案しつつ、車を買うような「明朗会計」であるという点を考慮するのでああれば、選択肢の一つに入れてもいいのではないかと思う。
※写真はすべて記者撮影