我が国ニッポンの公衆便所が、駅のトイレが神社仏閣の御手洗いが飲食店の洗面所が、二分されているのにお気付きだろうか。
ビフォーな便所に、アフターなトイレ。
アナタが心を奪われるのは、便所なのかトイレなのか、ビフォーなのかアフターなのか、見極めてみられたし。
【アフタートイレ】感じるそしてきっと広がってゆく
SF世界への入口のような、扉の向こうに広がるきっと先進的で近未来的な、トイレの世界。
カプセル型の個室内は壁に幼児を着席させることも出来る。
先進的なシートは設置位置が高い。
母親が座る便器から微妙に向こうのなかなか手の届かないところで、幼児の足は躍動的にブランブラン。
先進的な手すりの高さは、より高く。
身長2m80㎝くらいまで対応可能とみた。
もし宇宙人がやってきても、その異様に長い腕でも問題ないと言い切れるほど自信に満ちた手すりの高さである。
宇宙人がトイレを使うかどうかは不明だが。
地球外知的生命体ともなれば足の小指の先から排泄するようになっているのかもしれない、いやいや、摂取した栄養素を無駄なく使うとか、はたまた食物から効率良く必要栄養素のみを摂取出来る身体で、排泄という行為自体が必要ないのかもしれない。
さすがは、地球外知的生命体。
クチがそもそもなかったような気もする、見たことはないが。
だとすると臓器がないかも。
ひょっとして、脳も。
だったらもはや知的生命体ではなくなってくるが。
考えてみれば進んだ知的生命体である宇宙人がわざわざ地球のトイレを利用しにはるばるやって来ることこそが一番の無駄であろう。
先進的な荷物フック。
メタリックで無機質で、良く言えばおしゃれ。
悪く言えば、狭い空間にも関わらず、荷物フックを探す意識で探しているのに「ああ・・・これか」と軽く見落とすフック。
デザインに先進的感覚を取り入れた商品の多くがそうであるようにご多分に漏れず先進的荷物フックも、使い勝手の悪さは一目瞭然である。
実用性はお気持ち程度のオブジェ寄り。
これはどう考えてもフックが短かいこと、この上ない。
フックの上も下もさも荷物が掛けられる風ではあるがどちらかのフックが長いわけではないので、下に荷物を掛けてしまったら上に掛けてもスペースの取り合いとなり、上の荷物がおそらく負ける。
掛けたそばから床までキレイに荷物が落下するのは嫌なので、どちから片方に荷物を掛けた時点でこのフックは定員オーバーということである。
最初から上か下かのどちらかにしか荷物が掛けられないフックなのだ。
先進的な鍵もメタリックで無機質。
そしてトイレの鍵が先進的デザインを極めると、月のうさぎの餅つきのような昔ながらのフォルムになることが判明した。
先進的な殺菌灯の光は見てはいけないし、長時間皮膚にあててもいけない。
皮膚。
長時間皮膚。
確かに五文字も漢字が続くと目が疲れる。
画数も多めで読みにくい。
そのためかあえてのカタカナ表記。
ヒフがカタカナになるだけでムヒと同じイメージになることに注目したい。
だがしかしムヒとは違ってヒフはかゆみが出てきそうである。
だから、ヒフに長時間あてないで。
最近の表現にはひとこと余分に添えられていることが多い。
おいしい牛乳。やさしい麦茶。大人の塗り絵。
まるでおいしくない牛乳が存在するかのような、きびしい麦茶が存在するかのような、ひとこと。
『大人の』の枕詞に至ってはそのあとに何が続こうがもう怪しい雰囲気しか漂ってこないではないか。
そんなひとこと余分な表現を取り入れたアフターな快適といれ。
快適かどうかは、用を足した本人が決める。
着替えるための台がある先進的なトイレ。
だが、靴下しか履き替えていないようだ。
これなら台なんか使わなくても私は玄関先でやってのけるが。
日本人がハロウィンに浮かれはじめて久しいが、とうとうコスプレをして楽しむだけでは飽き足らず、トイレにまでハロウィンテイストを取り入れてきた。
お化け屋敷への入り口のよう。
ゾンビなんかも出てきそうで、USJ気分が楽しめる。
想像してもらいたい。
このような演出を実際に施している生身の人間がいるということを。
当初の予定よりだいぶ血塗られてしまった演出を盛った感じがするのは気のせいか。
『現場でちょっとやりすぎた』というテンションの高さを感じるのは私だけか。
こんなに楽しげなホラーが漏れ出てしまっていいのだろうか。
【ビフォー便所】伝わるそして予感がする
昭和レトロ調明朗会計仕立ての店内でおでんを注文するかのように縄のれんをくぐって、居酒屋に入るつもりで便所へ。
「よ、大将!いつもの」
各個室前に設置されている青いバケツには、水は一切入っていない。
入ってはいないけど各個室前に確実にある、何かの備え。
神様風イラストに出迎えられ恭しく個室のドアに手をかける。
トイレのドアが外に開く場合にしてはドアが開かなさすぎの壁との距離感。
さっそく壁にぶち当たる。
幅が狭いのは明らかで、それをどうすることもできないのも明らかなので、個室に入る人間が工夫をして入るべきである。
ここはひとつ、斜めになってカニ歩きで。
かようにビフォーな便所はコツが要り、カンが冴え、人間の順応性の高さをしらしめる結果となるわけである。
ビフォーな便所には人間力を引き出させるチカラがみなぎっている。
想像力を磨かせ、疑問を持たせるビフォー便所。
隣り合わせているフックの幅が狭い。
横幅のあるふたつの荷物だとアウト。
高い。
最大限にまで高みにあげた荷物フック。
ここまでドアの一番高い位置にあると、もう背は届かない。
荷物をかけさせる気が一切ないお飾りのフック。
そしてその下に、それもなぜかドアの内側に貼られたプレートには、いったい何と書き入れるつもりだったのか。
ココが推理小説の殺人現場なら何か重要な証拠にでもなりそうな「痕跡」である。
おそらくこれは、初歩的なことだよ。
スライドをするのに若干のチカラが必要なほど軋んでいる鍵を指の腹でしっかりと握りしめて鍵をかけると、約3ミリ伸びている私の爪は木製のドアをえぐることとなり、このような傷痕が残ることになるのだよ、ワトソン君。わかったかね?
一見なんのことはない洋式の便器。
傷が物語るかなりの年季の入りよう。
根元にまかれた雑巾マフラーが漏れ出た水の量の多さをも物語る、ビチャビチャ。
ボタンをズラして取り付けたらよかったのに、同じ位置にするからややこしい。
ちょいちょい間違いが起こっているからか、ご丁寧に表示までされているではないか。
非常用ボタンは赤
便器洗浄ボタンは青
と、覚えよう。
赤いボタン、赤の矢印、とにかく赤い色のモノは不用意に触るな。
【甲乙付け難いBeforeとAfter】
心を鍛え体を鍛えるのが武道であるなら、頭を鍛え頭を柔らかくするのが武道便所である。
まさに武道の心得、便所に見る心技体なのだ。
便所の隅々にまで目を凝らし、目を向け、意識をせよ。
※全画像筆者撮影