熟成か。鮮度か。
そんなキャッチコピーで今夏、茅場町に出現した「不二楼(ふじろう)」。“ニッポンを感じる日本食飲食店ビル”という別名を持つ5階建てのビルは、1階が炭火焼鳥フロア(35席)、2階が鉄板焼き・天麩羅フロア(64席)、3~5階が「非公開」という、まさに“前人未到の和食の頂”。まず、そのビジョンはこうだ。
「ビル1棟、全4フロアに日本食を代表する炭火焼鳥・鉄板焼き・天麩羅・鮨などを集約。新たな金融街として再開発される日本橋茅場町に『大人の社交場』を誕生させた。日本人はもちろん、東京2020に向け、年々増加する訪日外国人をもターゲットにとらえ、新たな日本食のアプローチをするために職人が結集させ、日本食の総合テーマパークを完成させた」(不二楼)
客単価は1・2階が5500円。運営は和僑ホールディングス(東京都中央区)。不二楼は、同社代表取締役会長を務める高取宗茂氏が、「食に馳せた想い」「食の未来に対して提示した答え」を具現化した空間という。
今回まず、2階で焼き鳥や穴子の天ぷらなどを試す。鹿児島出水市にある提携養鶏場の専用飼育鶏(日齢120日以上)を使う赤鶏系の焼き鳥は、肉質も食感もしっかり。「私ども不二楼の美学がこの焼鳥に宿っている。15年以上の研鑽を重ねた熟練の焼き師が真心込めて焼き上げている」と高取会長。
穴子の天ぷらは、雑誌記者が「こんなに透き通った穴子は初めて。目隠しして食したら、最初の印象は穴子とは思えないほど。穴子のしっとりした食感と、外の衣のサクッとしたコントラストに初体験」と唸る。
この2階「藤の間」限定の不二楼焼鳥コースは5000円。「海の幸、山の幸、季節の味覚を散りばめた八寸、卓越した技法で焼かれる炭火焼き鳥や、当店自慢の天扶良(てんぷら)を食すコース」で、季節の先付け三品、旬と不二楼名物の相盛 八寸、焼鳥五本 順出し、不二楼の天扶良 三種、板そばorおまかせ細巻き二種、デザートと続く。
そして未体験の胸の高鳴りを感じさせるのが、公式ホームページなどでは「非公開」と表示される3階。「どうぞ」と案内するのは、なんと高取会長。「熟成鮨」をテーマにした3階は、高取会長が想い描いてきた“日本食と対峙する時間”を具現化した空間。
「鮮魚を握る鮨ではなく、江戸前、博多前、熟成を突き詰めた熟成鮨を体感してもらう空間。会員制のため、内容は非公開だが、鮮魚を真に熟成させることで生み出される、圧倒的な旨味とねっとり感は、一度食べたらもう、忘れられない。口に入れたとたん『ねっとり、旨すぎて呑み込めない』ともらすほど」(高取会長)
「不二楼の世界観を、心ゆくまで楽しんでもらいたい」という想いから会員制にしたというが、その閉ざされた空間を体感できる「一般開放イベント」も設定している。直近では9月22日。「不二楼の魅力を味わい尽くす3階一般開放イベントは、曜日一切関係なく毎月22日(不二の日)に開催。熟成鮨はもちろん、天扶良、焼き物、鉄板焼きなど、不二楼各フロア自慢のお料理をコースにてお召し上がり頂けます」(公式Facebookより)。
「代表の高取が握る天然本マグロの熟成は、切り付けを少し厚めにして、1貫の裏表に細かく50以上の隠し包丁を入れております。口に入れた瞬間、ねっとりとまとわりつきながらトロけていく口当たり。旨味、香り、コク、甘味。口の中で一瞬で儚く消えていく不二楼の鮨の美学」とうたうコースの値段は、2万円。この一般開放イベント参加特典として、不二楼3階以上を利用できる会員になれるとか……。
さらに非公開の4階もシレッと見せてもらったが、この空間がまた驚く。1階から3階までの不二楼イメージを覆すほどのラグジュアリーでプライベートなつくり。どんな空間とサービスが目の前で展開されるかは、不二楼という山の頂をめざすように、1階から登りつめてみて。
撮影:GazinAirlines