今年の父の日は6月18日(日)。この日を迎えるにあたり、1か月前ぐらいからどんなジャンルのお店も「父の日のプレゼントにどう?」と商品を勧め始め、私も毎年何かしらのプレゼントをしていた。しかし、毎度何かしっくりと来ない。私の持った違和感と同様に「父の日のプレゼントに何をあげるのか迷う」という声は結構聞く。
今年も何をあげようか迷った挙句私は、父の日に上から目線で恐縮だが“プレゼント”と称して「父の趣味である“アマチュア無線”に初めて興味を持つ」ということをやってみようと思った。
子どもの頃から「うるさい」と母に言われながら、大げさな機械の前で謎の暗号のようなものを一人でぶつぶつと唱えている父を見て、正直格好良いと思ったことはなかったがこれも“プレゼント”のためだと色々話を聞いたり、実際に交信をしてみてもらうことにした。
そもそもアマチュア無線って??
アマチュア無線とは「無線技術を利用して遠くの知らない人と通信する」という、聞いただけではちょっと怪しげな雰囲気が漂う趣味だが、最盛期には“趣味の王様”と呼ばれるほど崇高なものだったらしい。現代はインターネットの普及により電子掲示板やチャット、『Facebook』や『Twitter』などを使って誰でもつながることができる時代になり、今や完全に廃れているかと思ったが、それでも総務省の無線局統計情報によると、まだアマチュア無線局は約45万局残っている。
また、無線機を使い交信するには免許を取らないといけない。免許には1級~4級技能士まで種類があり、発信できる周波数や電波の強さが決まっているらしい。父は第1級アマチュア無線技士免許を取っており、アマチュア無線界では最上位のライセンスを持っていた。知らなかったけど、すげえな親父。
元々ラジオを自作する等、電子工作が好きな子どもだった父は高校に入り“アマチュア無線部”に入ったことがきっかけで、知らない遠くの人と通信することにロマンを感じ、ハマったらしい。実際にロシアや韓国ともつながったことがあるそう。そう言えば父の高校の時の部活動も初めて聞いた気がする。
実際にアマチュア無線で交信してもらう
いよいよ、実際に交信をしてみることに。とはいえ発信するにも免許が必要なので、私が発信することはできない。免許以外に必要な機材は、2万円ぐらい~高いもので100万円以上するそうだが、今の父の愛器はこの『アイコムID-51』だ!! うん、知らない。
私は勝手に、大きなチューナーのつまみを動かしヘッドフォンを付けながら周波数を探るイメージを持っていたが、最近は技術の進歩で小型トランシーバーもイケてるらしい。
実際の交信手順は〝呼び出し周波数帯にチャンネルを合わせて、交信できる人がいないか呼びかけ、いれば改めて交信する周波数を決めて交信する”というステップだそうだ。呼びかけたところ、この日は現在地から約40km離れた丹沢山地の仏果山とつながった。
アマチュア無線の交信内容については、“話して良い”内容が厳密に決められているらしい。あくまでも通信は趣味目的で使用することが電波法で決められており、何かしらの目的のために用件を伝えるなどはNG。お互いの状況(現在地や天気、声がクリアに聞こえているかどうかを伝える等のあたりさわりのない情報)の交信をするものなのだそうだ。交信の様子を見ていて、やはり通信して何を話すかという“内容”よりも、無線機を通じて遠くの知らない人とつながるという“技術”が好きな人がやる趣味なんだろうなあという感想を持った。
ここまでアマチュア無線について自分で調べたり父の話を聞いたりすることで、現代の通信技術の先駆けだったんだと感心。免許制などハードルが高めに設定されていることにより、共通の価値観に基づく強い仲間意識を持つ世界であることも強く感じたので、これからも爆発的に人気になったりすることはないのかな。
父の趣味に寄り添うことは良いプレゼントになることだと実感
父としては「日本の電子工学系のレベルが下がっていると言われる中、アマチュア無線の技術に触れることはレベルアップにつながるので様々な人に興味を持って欲しい」とのこと。早速、生後10か月の私の息子が無線機に興味を示し、父はすごく嬉しそうだった。
これを読んだ方(特に理系に強い方)で興味を持った方は、ぜひアマチュア無線愛好家の中でも聖地とされる秋葉原のショップへ!
あと、まったくアマチュア無線に興味が湧かなかった方も、親父の趣味に寄り添うことがプレゼントになると本当に実感したので、父の日だけではなく誕生日とかにもやってあげてみては。
イラスト画像:『いらすとや』より引用
http://www.irasutoya.com/
執筆:ABOVE