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エブリスタ、なろう、カクヨムとウェブ小説投稿サイトが次々誕生して作品数もどんどん増える一方のウェブ小説業界。
短編小説、長編小説、詩、エッセイ等、どれを読むかは読者次第。ランキングの高い作品から読むか、自分の好みのカテゴリにするか、作品数の多さに迷う所。
今回取材させてもらったのは詩やエッセイをメインにエブリスタで執筆活動をしている女性、solfa。彼女は先天性の病気で目が不自由、一度も「見る」という経験をしたことがない。
しかし、その詩は文章表現力が巧みですっと心に入ってくる。感情を言葉で吐くように時に熱意のある詩もあれば、繊細な心情を紡いだ詩もある。
全盲という身体のハンディキャップを感じさせないように美しい言葉を紡ぎ、詩人としての強い自己表現が感じられる。
興味を持った筆者は今回solfaと喫茶店で会って話すことになった。
初めて会った第一印象は、普通の人、だった。
白い杖を持っていることと、眼がはっきり開かないところ以外はいたって普通の女性だった。おだやかな口調で、表情は緊張のためか若干硬かったが、あいさつの後は笑顔をみせてくれた。
詩人solfa自己紹介
未熟児網膜症として生まれて、光を知らずに生きてきた。中学のころは小説や童話を点字の本で読んで過ごした。
最初に小説を書き始めたのが中学生の時。17歳の冬には詩も書くようになった。
ネット上に公開したのは2007年。アメーバブログで詩を、野いちごにて小説を書いていたが、ひとつのサイトで集約しようと思いなおしてエブリスタでの活動に拠点を移す。
solfaが影響を受けた人や本、音楽など
本、というよりロックバンドの歌詞がまず先に影響を受けた、という。
アジアンカンフージェネレーションの歌に洗礼を受け、solfaも同じようなものをやろうとするが、音楽専門学校に行っても作曲ができず、作詞のみを書くようになった。
他に影響を受けた作家は田口ランディと金子みすず。学校でいじめの問題があったとき金子みすずを毎日朗読していじめをなくしたという教師のエピソードを読み曲がなくても詩だけで誰かの心を動かすことができるのだと思い、詩人を志すようになった。
音楽ではエルレガーデン、くるり、グレープバイン、特にバンプオブチキンに強い影響を受ける。
「アジカン」の後藤が書く詩に感銘を受け、グレープバインの「ぼくらなら」は愛していると歌詞になくても愛を伝えられるラブソングだ、と感動したという。
詩人solfaとエブリスタ
最初は投稿サイト「オリオン☆」で詩や小説を発表していたsolfaだったが、その後「野いちご」に発表の場を変えたが、野いちごの他の作品と比べてずれがある、と感じたらしい。野いちごは中高生がメインで詩作しているようで「野いちご」からアメーバブログ等転々とした末にエブリスタをみつけ、ここなら自分の書くものに合ってると決めた。
エブリスタにはデスゲームものというか、安易に人が死んだり殺されたりというホラーじみた小説が多く、solfaはそれらに否定的だ。
死ぬためだけにでてくるキャラを出すのではなく、死に意味を求めたい、という。
未熟児網膜症について
筆者は障害を持っていることでの良い点悪い点は?などと訊いてしまったが失礼な言い方だったと後悔した。
障害があることでのメリットとはなんだろうか?
solfaは嫌な顔もせず話してくれた。
「生まれつき目が見えないので障害について何が良いのかわからない、今探している。音には敏感になったというか、耳しか情報源がないから。楽しみは音楽とラジオ」
障害で辛い点については、
「みんなと同じことができない」
同じ障碍者の詩作家
solfaは同じような障害の友人にも詩を書いている人がいる、という。
詩を書くのが好きだが自分の詩は恥ずかしい、とも。
他の障碍者の書く詩や文章は綺麗なものが多いが、それについてsolfaは否定的だ。
「障碍者は綺麗で真面目、というイメージが間違っている。障碍者が綺麗というのこそ差別。障碍者こそドロドロしたダークな感情を書いたほうがいい」
社会への願い
「行き場がなくなって溜め込むこともあった」とsolfaは言う。
「パソコンや携帯電話でも音声によって全盲でも文章が書けるから1人の人間として受け入れられるようになりたい。障碍者にも詩や小説を書いている人がいると知られるだけで充分。盲学校に通う生徒たちもいる。こういう世界もあるんだなと、当たり前のように世間に受け入れてほしい。ものすごく特別なことじゃなくそういう人もいるんだな、って」
感動ポルノについて
昨年話題になった「感動ポルノ」という言葉。某チャリティ番組で障碍者が山に登ったりがんばる姿をみて視聴者が感動した、というがそれは一種のポルノではないか?
solfaは「ずっと違和感があって、ようやくそれだと思った」と感動ポルノという言葉に府が落ちたようだ。
「障碍者にとって当たり前のことをやるだけでも感動ととられる葛藤があった。この言葉はもっと広まってほしい」
それでは24時間テレビ自体なくしたほうがいいか、と訊くとsolfaは首を振って、
「あの番組がきっかけで難病について知ることもあるから芸能人を通じて病気のことを知ってほしい番組否定も違う。同情されているとわかっていながら素直にありがとう、といいたい」
障碍者同士による差別
solfaによると健常者が障碍者を差別するよりも、障碍者同士の差別心が強いそうだ。
solfaはかつて障碍の軽い子をいじめていて、今は後悔しているという。
障碍の重い人のほうが施設のスタッフから助けてもらいやすい。
知的障碍者が怒ってもスタッフは軽くたしなめられる程度。
障碍者の間には仲間意識もあれば対立もある、というあらたな問題がみえてきた。
solfaにとってこれからの目標
「自分の本を出版したい」
それがsolfaの一番の目標だそうだ。
「唯一できることが物書き。文章を色んな媒体で書きたい。有名人にはなろうと思わない。健常者、障碍者と分けられずわけ隔てなく書き続けたい」
誰しも障害を望んで生まれてくるわけではない。偶然生まれたときに身体に異常があったり遺伝的なもので障碍者と呼ばれてしまう。そしてそのことによる差別。
何十年も前から続く差別問題を解決するのは並大抵ではない。
それでも希望の光は、うっすらとだが見えることも確信した。
今回全盲の詩人solfaとの会話で一番良かったと思えたのがsolfaの前向きな姿勢、生きたいという気持ちだった。
障碍者だから仕方ない、となにもせずに人生をただ生きるのではなく、生きてきた以上何かやりたい、何か残したい、という自己顕示への欲求。
solfaは詩作をその手段として選んだ。夢を叶えることは困難だが絶対に不可能ともいえない。希望さえ持ち続ければいつか叶うかもしれない。
障碍を持って生まれ、周囲に蔑まれてもなお、夢を持ち、夢を叶えるためにがんばる。それが人が生きるということではないか。
すべての障碍者がそれぞれ目標を持って前向きに生きれるよう応援したい。
エブリスタsolfaのページ
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