日本が世界進出したものは、車・電化製品をはじめとして、食の寿司・神戸牛、映画に於いては黒澤明・小津安二郎作品などが挙げられます。時代はいつの世も変わりやすく、あれだけ勢いのあったソニーが年内に数千人規模削減するとか、産業に翳りにも見えてきて残念です。
浮世絵がゴッホやルノアールに影響を与えたことを考えると、アニメが世界進出することも納得です。宮崎アニメが10年前の2002年、ベルリン国際映画映画祭で最高栄誉の金熊賞を受賞したことをきっかけとして、世界中が注目し始めたと思います。
受賞作の「千と千尋の神隠し」はアメリカでは「Spirited Away」の題名で全米公開されました。私はタイムス・スクエアーの大きな映画館で見ましたが、客席は老若男女で埋まり、それこそ人種のるつぼの観客のご来場でした。あれから10年、今も宮崎アニメは人気で、2月17日に「借りぐらしのアリエッティ」が英語題「The Secret World of Arrietty」でディズニー配給により全米公開されました。
アニメファンなら誰もが知っている宮崎駿、では辰巳ヨシヒロは?
私はこの方の存在を昨日まで知りませんでした。辰巳ヨシヒロはアニメというより漫画家で「劇画」を確立した人物です。この方の存在を何で知ったかと言うと、近代美術館(The Museum of Modern Art)内にある映画上映ででした。
「Tatsumi」と言うドキュメンタリー映画で全編日本語で英語の字幕がスクリーン下にうつります。本人の自伝的な物語と共に、作品とを交互に織り成す構成です。ニューヨークタイムスにも映画評が出ていましたが、見出しはに「コミックがR(成人)指定」とありました。確かに日本の漫画としてアメリカの子供達に見せる内容ではありませんでした。
作品登場は、戦後の原爆後であったり、GIを相手にするパンパンと言われた日本の娼婦であったり、豊でない工員がバーの女性に騙されてお金を巻き上げられる等などのストーリーでは成人指定は免れません。
こういうのをシュールというのでしょうか、なんとも言えない気持ちになるのです。しかし、それが悪くないのです。ある意味快感なのです。会場にいるアメリカ人の観客も同じような印象だったのではないでしょうか。社会の底辺を描く作品は逆に理解しやすいかも知れません。
1時間34分の上映時間が終わりに近づいて拍手が静かに巻き起こりました。アメリカ人には珍しく上映が終わりかけていても席を立つ人が少なく、ホールは良い作品を見終わった余韻が漂っていました。
日本にはまだまだ世界に知られていない素晴らしい物があることが知れて素直に嬉しかったです。また、このドキュメンタリーはシンガポール人の監督作品と言う着眼点も面白いです。昨年、カンヌ映画祭で上映され、イスラエル、ヘルシンキ、ハンブルグ、バンクーバー、サンパウロ、プサン他の映画祭で上映されました。
知る喜び、そして日本にはこうして静かに世界に誇れるものがあるのです。
画像:frickr from YAHOO
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