【心理学】人の振る舞いが変われば犬の振る舞いも変わる

2016年3月4日。とても穏やかな天気で快適な散歩をしてきました。画像は私とその群れの一員です。犬たちは私を引っ張って歩くようなことはしません。皆、穏やかに私と歩調を合わせて歩いてくれています。
とても穏やかな犬たちですが、この犬たちの中にはリードを持つ人が変わるとガンガン引っ張る犬もいます。でも私がリードを持って歩くと一様にゆったりと歩くのです。これは別に私に何か特別な能力があるのではなく、このように上手に犬を扱える人がリードを持てば、犬は同じように振る舞うものです。

飼い主さんの中には、犬がガンガン引っ張ることを許している人もいます。私は必ずゆったりと歩けるように促します。なぜなら犬が主導で、いく道を決めている状態では、突然飛び出す車やバイク、または走ってくる子供達などに接触してしまう可能性もあり、そうした事故を防ぎたいからです。なにか危険が迫ったなら、飼い主がいち早くそれを察して危険から回避させてあげたいものです。
犬が穏やかな状態で、飼い主の横について歩いていれば、危険回避も容易となるはずです。犬を街の中にある危険から守るのは飼い主の務めでもあります。また、犬が嫌いな人もいるわけですから、そうした人に迷惑をかけないようにするのも、飼い主の務めでしょう。そのためには、犬が穏やかでいることが必要不可欠です。

では、どうしたら犬が穏やかに振る舞うようになるのでしょうか。これには様々な要因が関係しています。例えば以下のようなものが挙げられれます。

・動物福祉のスコアを高くする
・犬の生得的な欲求を適切に発散させる
・飼い主自身が犬に適切なトレーニングを行う
・飼い主の日頃の行動を適正にする

この中で、最後の”飼い主の日頃の行動を適正にする”が、犬の振る舞いを変えるのに大きな貢献をします。我々はつい、犬に対して誤った態度をとりがちです。誤った態度で犬と接すれば、犬は穏やかとは正反対の方向へ行動が変わっていきます。無意識にとる我々の行動は犬の振る舞いに大きな影響を与えることは、多くのドッグビヘイビアリストが指摘している通りです。

一例を挙げてみましょう。例えば、”犬が興奮している時に人も共に興奮して犬に話しかけたり、触ったりする”などのことをしているとします。犬は興奮すると飼い主に構ってもらえる事を学習し、頻繁に興奮するようになります。心理学的に言えば、報酬が得られる行動が条件付けされた状態です。こうした態度で日頃から犬に接していると、犬は興奮すると報酬が得られると学習します。そして報酬を得るために興奮するようになります。
興奮そのものが悪いわけではなく、必要のない時の興奮に意味はありませんから、興奮する必要のない時は、穏やかでいられるように促す必要があります。そのためには、犬が不必要に興奮している時に、飼い主は一切構わないようにすることです。そして犬が穏やかな時にのみ、話しかけたり、触ったり、食餌を与えたりと報酬を与えるようにします。こうしていれば、犬は穏やかでいれば報酬が得られると学習できるわけです。

散歩では、犬は「ガンガン引っ張る事で散歩に行ける」と学習していることが多くあります。これは、散歩という報酬を得るために飼い主を引っ張っているわけです。なので飼い主は「引っ張らなくてもちゃんと散歩に行けるよ」ということを行動をもって教えれ良いだけです。具体的な方法を書くと長くなるので、自著の”散歩でマスターする犬のしつけ術(amazon Kindle)”に譲りますが、日々の飼い主の振る舞い一つ一つが、穏やかな犬に育てるために必要不可欠な要素となることを覚えておくと良いでしょう。

日頃から犬が穏やかな状態でいられるようにすることもとても大切です。犬が興奮している時は、犬に構わず、報酬を与えないように気をつけます。人と共に暮らす犬は、家族や飼い主と強い絆を結びます。これは犬が心理的にとても発達した動物であるからこそです。そして絆のある相手(飼い主)の振る舞いが良くも悪くも影響を強く与えます。飼い主がこのことを意識すれば、愛犬の振る舞いも変わってくることでしょう。

犬と穏やかに散歩ができれば、安全なだけでなく、毎日の散歩はかけがいのない一時となります。リラックスした散歩を楽しんでくださいね。

ついでに一言。犬と朝の散歩を楽しんだ後の朝ごはんは格別に美味しいですよ!

※TOP画像は著者が撮影したもの。
 

 

DBCA認定ドッグビヘイビアリスト(犬の行動心理カウンセラー)・JCSA認定ドックトレーナー(家庭犬訓練士)・動物行動学研究者(日本動物行動学会)。 警察犬訓練所でドッグトレーニングを学び、その後に英国の国際教育機関にて”犬の行動と心理学上級コース(Higher Canine Behaviour and Psychology)”を修了。ドッグビヘイビアリストとして問題行動を持つ犬のリハビリを行っている。保健所の犬をレスキューする保護活動にも精力的に取り組んでいる。 動物行動学・心理学・認知行動学を専門とし、犬がペットとして幸せな暮らしができるよう『Healthy Dog Ownership』をテーマに掲げ、動物福祉の向上を目指して活動中。 一般の飼主さんだけでなく、行政や保護団体からの依頼も多く、主に問題行動のリハビリが専門。 訓練(トレーニング)やリハビリの事、愛犬との接し方やペット産業の現状などについて執筆している。 著書:散歩でマスターする犬のしつけ術: 愛犬とより強い絆を築くために(amazon Kindle)・失敗しない犬の選び方-How to Choose Your Dog-(amazon Kindle)

ウェブサイト: http://www.healthydogownership.com

Twitter: HealthyDogOwner