在日中国人向けメディア『日本新華僑報』が日本のトイレ文化についての記事を掲載しましたが、それを『中国新聞網』が転載しており(「日媒:中日“厕所文化”差异与交流」日本マスコミ:日中”トイレ文化”の差異と交流)、なかなか面白かったので、これについて少し。
1 日本のトイレ文化
私も知らなかったのですが、11月10日はトイレの日で、元々の記事はこれを踏まえて書かれたもののようです。日本はトイレに対する独特の思い入れがあり、「トイレ文化」を有しており、トイレの日、トイレの神様、日本トイレ協会まであるという記述から始まっております。
因みにネットで調べたところ、11月10日が「トイレの日」というのは「い(1)い(1)ト(10)イレ」の語呂合わせで、日本トイレ協会が1986年に制定した日だそうです。確かに日本には八百万もの神様がいるので、トイレにも神様がおり、妊婦がトイレを綺麗に掃除すると、健康で美しい赤ん坊が生まれるという伝承を聞いたことがあります。
そしてこの記事によると、日本人は国内だけでは満足せず、この「トイレ文化」を海外にも推し進めようとしているそうです。その証拠として2010年の上海万博で未来のトイレが展示されていたことや、横浜でトイレの国際フォーラムが開催され、留学生などが参加したことを挙げております。
これについては単にTOTOが中国における輸出拡大を狙っただけではなかったのかとか、トイレ以外にも日本では数多くの国際フォーラムを開催されているが、それも同じく海外進出を目論んでいるのか等いろいろつっこみ所満載ですが、とりあえず先に進みます。
2 日中トイレ文化差異
トイレ文化の「差異」という標題通り、日本と違う中国のトイレ事情の説明も行っております。何でも日本人が中国に来て最も耐え難いのは公衆便所で、ドアが無い、紙が無い、隣の人はいきなり「ご飯食べた?」と聞いてくる(因みにこれは中国の通常の挨拶用語ですが、トイレで使うのはどうかとこの記事は言いたいようです)。
したがって、添乗員はホテルの中でトイレを済ませておくようにと言うしかないとしております。さて次は中国人が見た日本のトイレ事情ですが、これによると日本はかつて世界第二位の経済大国だったにもかかわらず街中に公衆便所が少ないのはどういうことだと指摘しています。
その結果トイレを探すのが間に合わず、立小便をする者が多く、「立小便禁止」の張り紙が至る所にあり、何故日本ではこうした「下品な行為」が、いまだに続いているのか理解できないと続きます(これについては後述)。
またトイレットペーパーの処理の違いも大きな問題としております。中国ではトイレが詰まってしまうため、備え付けのゴミ箱に捨てるのですが、日本に来たばかりの時はゴミ箱がなくトイレットペーパーをどう処理したらよいかわからなかったという体験談を記載しています。
3 日中トイレ文化交流
最後がトイレ文化の交流となるわけですが、中国のトイレも大都市では既に昔とは全く異なっており、この30年で最も変わったモノの1つと言っても良いのではないかとまで述べています。これは私も異存はなく、以前の近づきたくもなかった公衆便所からみるとかなりマシになっております。そしてその過程で日本から多くのものを学んだと続きます。
対して日本が中国から学んだものですが、日本は中国の経験を活かし、駅、公園、デパートなど公共の場にトイレを設置するようになったし、表示の国際化もすすみ、日本語だけでなく、英語、中国語、ハングルなども並記するようになったとしております。
交流なので、日本も何か中国から学ぶものがないとまずいと思ったので、こうしたことを書いたのでしょうが、少しやりすぎです。先に指摘されているように、確かに中国人にしてみれば(かつての)日本人の立小便は理解しがたいことのようですが、思うのこれは習慣であって、公衆便所の数とはあまり関係がないように思います。
4 個人的感想
実際この行為は基本的に男性しかしませんし、以前では近くに公衆便所があっても「開放感」云々といって外ですることを好んでいただけかと思います。それにこの記事を見ると、以前の日本の駅や公園には公衆便所がなかったかのような書き方となっておりますが、そんなことがあるはずがないのは周知のことかと思います。
それに、日本語がわからない外国の方のために、ピクトグラム(絵文字)を用いたのは1964年の東京オリンピックの時ですが、1970年の大阪万博においてトイレの男女別のマークが発案され、その時以来使われるようになっています。
外国語の並記は最近のことかもしれませんが、これを見ても公共の場にトイレが少なかったというのはおかしい説明であることがわかります。それに、最初のこの記事の指摘によると日本は「トイレ文化」を重視しているはずなのに、その日本が公共の場にトイレを設置しないのは論理矛盾を起こしているような気がしてなりません。
確かにどうでも良い小記事なので、こうした記事のおかしいところを、1つ1つ、つっこんでいたのでは、きりがないのはよくわかっています。また、中国人向けに中国の良い影響を無理矢理追加したというのもわかるのですが、少しひどすぎないかと思った次第です。
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