フランスワインが風評被害?

  by シカゴの雪  Tags :  

原発事故直後は「風評被害」と言われた日本の農産物の売れ行き下落は、時を経るに従って単なる「風評」ではなく、実際に何らかの影響を受けたものが市場に出回っていた、という残念な結果を迎えています。

 

 

 

 

農作物を購入することで福島の農家の人たちを助けたい一方で、そこで農作物を育てている彼らの健康も考えなければならない、というジレンマを抱える今日この頃ですが、こうした「風評被害」と呼べるものは日本だけではない、というニュースをお伝えします。

 

 

 

フランスと言えばオサレなファッションや、前衛的な芸術、おいしい食やワインが思いつく中で、基幹産業の一つとして原発をあげることも過言ではありません。実際フランスの3/4の電力が原発によるもので、この比率はヨーロッパ諸国でも郡を抜いています。

 

 

 

 

しかし、アメリカと異なり、チェルノブイリを間近に経験したヨーロッパにあって、福島の事故がヨーロッパの原発事情を大きく揺るがしたのは、ドイツやイタリアの決断を見ても明らかです。

 

 

 

その為、ニューヨークタイムスによると、今、フランスのとあるワインメーカーが痛手を受けているといいます。

 

 

 

どういうことかと言いますと、これだけの原発を抱えるフランスでは、原発施設が全国にあり、ワインの有名所も例外ではなく、バーガンディー、ボルドー、ロワールといった地方も原発施設の近隣に位置しています。

 

 

 

その中で、1973年に認可されたローヌ地方のThe Coteaux du Tricastin(コトー・ドュ・トリカスタン)と呼ばれる銘柄が、その翌年に建設されたトリカスタン原発を連想させる為売り上げがガタ落ちなのだそうです。

 

 

 

といっても、この銘柄を産出する葡萄畑と原発との距離が、他の畑と比べて特別近いわけではありません。単に名前がかぶってるだけで、日本で言うと焼酎の「玄海」みたいな感じ?

 

 

と、言いたいところですが。。。

 

 

ニューヨークタイムスは何故か言及していませんが、2008年7月にこの原発からウラン液が漏出し地域の土壌を汚染してしまった事故があったことが、単に名前がかぶってしまった、ということ以上に販売の凋落に結びついたことは明らかです。

 

 

 

売り上げ難に業を煮やしたメーカーは、ラベルの産地や銘柄を目立たなくしたり、ガイガーカウンターを使ってまで安全性を強調しているそうですが、遂には廃業するワインメーカーもあるとか。

 

 

 

この銘柄の責任者は “It wasn’t a question of contamination,” said Henri Bour, president of the appellation. “It was a question of contamination of image. When you said ‘Tricastin,’ you closed the door.”(「これは実際の汚染の問題じゃありません。イメージ汚染(風評被害)なんです。「トリカスタン」と言うや否や消費者はそっぽを向くのです。」)と憤っておられます。

 

 

 

しかし、これだけの原発立国が原発、そして放射能汚染に敏感である、というのは考えさせられるものがあります。健康に被害があるならもちろんのこと、こうした農家の被害もきちんと原発コストとして試算して欲しいものですね。

画像はWikipediaのCoteaux du Tricastin AOCのページより。(http://en.wikipedia.org/wiki/Coteaux_du_Tricastin_AOC)

アメリカ在住です。大学でイカガワシイ科目を教えています。

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