怪しいネットワークビジネスを追え! ~8

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全国各地で事業説明会やビジネスセミナーなどと称して人を集め、未成年者を含む若年層に対してネットワークビジネスの勧誘を行っているNtBカレッジ(仮名)という団体があります。その勧誘方法や仕組みなど様々な点から違法性や社会ルール違反の疑いが指摘されている上に、肝心の商材としている「ネットビジネスで稼ぐことを教える」という点にも、その有効性や実現性の面において大きな疑問が指摘されています。
 
このNtBカレッジは一体どんな人が始めたネットワークビジネスなのでしょうか?勧誘などの際にも、表に立つ機会も多い代表のS氏は、起業コンサルタントや、Webマーケティングの専門家という触れ込みで2010年ごろから、実に数十種類に及ぶ様々な「誰でも簡単にネットビジネスで稼ぐ方法」といった怪しげな『情報商材』に関与してきた人として知られています。
 
今回は、NtBカレッジの代表のS氏について詳しく見ていきましょう。
 
 
 
■経営者としてのS氏の怪
 
S氏はプロフィール上では1972年千葉県生まれという事になっています。”あなたもフェイスブックで年収1億円儲けられる”といった類のマーケティングや自己啓発に関係する本を数冊出している傍ら、”facebook集客マーケティングの第一人者”を名乗り”飲食業の為のマーケティング、リアル店舗のWeb戦略”といったテーマで講演を引き受けたり、様々な『情報商材』の販売を行っていました。

自身が代表取締役を務めるAP社(仮名)に記載されているプロフィールによると、以下のような文面があります。

ダイレクトマーケティングを中心に数々のマーケティングの研究を続け、飲食店、エステ、サービス業、通販、物販、貿易、インターネットビジネスなど 7業種を経営している。

 
しかしながら、それらの業種に関しては事業体へのリンクなどは無く屋号を含めて実際の業務内容などの記載もありません。プロフィールのはずですが、その具体的な実態がよくわかりません。
そこでS氏の複数あるfacebookのアカウントやブログ、その他のインタービュー記事などから辿って調べました。すると千葉県君津市などにあるキャバクラや千葉市にある博多料理の名前が出てきます。おそらくこの博多料理店が飲食店に含まれると思われるのですが、この店の登記簿情報を確認しても役員の中にS氏の名前は出てきません。S氏は取引先の接待などにもこの博多料理のお店やキャバクラを活用しているようですし、また自身のブログから従業員の求人の告知を行っていたりしますので関係がないという事は無いはずですが、どの程度経営にタッチしているのかわかりません。
 
 
S氏が本当に経営に関与しているかどうかを考えるうえで、S氏のブログの記載で興味深いものがありました。この博多料理店が優良店であるという説明でS氏は以下のように説明しています。

わずか27坪のお店で、営業時間は17:00~25:00と短くても月間800~900万円を売上、粗利益は月間200万円から350万円を計上します。

 
この記載を見て“?”と思われる人も多いと思います。”粗利”というのは業態によって内容が若干異なるのですが、一般的に飲食店の場合の”粗利”というと売上から原材料費を引いたものになります。ここから人件費や賃料、水道光熱費や宣伝広告費などの”販管費”を引いたものが”営業利益”、いわゆる”儲け”ということになります。
仮に月に800万円の売り上げがあって”粗利”が200万しかないとなると、そこから”販管費”を引かなくてはなりませんからS氏が言っていることが本当だとすると、かなり厳しい経営状態だと予想できます。
 
もちろん飲食店の中には、調理と接客を分離させて、厨房の人件費なども原材料費の中に組み込んでいる例もありますが、”粗利”の大きさを誇示して儲かっている優良店であるという主張をしているS氏の話の文脈から言いうと、わざわざ断りもなく一般的な数値よりも小さくなるものを出してくるのは不自然です。
 
もしかすると単に”経常利益”と取り違えているのかもしれません。世の中には用語をよく理解していない経営者も珍しくなく”よくある間違い”だとは言えるのですが、S氏は起業コンサルタントとしてキャバクラなどの経営ノウハウを指導してきた立場ですので、それを考えると結構恥ずかしい間違いと言えるでしょう。
 
ただ、ある対談の中で語られるキャバクラ経営の話には、”粗利”がそのまま利益になっているかのように言って(一般的にキャバクラなどは人件費の部分が高額になります)「居抜きで買い取り、その費用を翌月ぐらいには既に返済できていた」などと話しているケースもありましたので、実際のところは名義貸しだけで経営などについて関与しておらず、諸々理解もしていない全くの素人である可能性も考えておくべきかもしれません。
  
 
 
■謎の7つの事業

S氏が行っているという7つの業種についてもう少し詳しく調べてみましょう。
今はリンク切れになっているNtBカレッジS氏のプロフィールには2016年2月の段階で以下のように書かれていました。(現在はプロフィールの説明はなし)

ダイレクトマーケティングを中心に数々のマーケティングの研究を続け、飲食店、エステ、サービス業、通販、物販、貿易、インターネットビジネスなど7業種を経営している。

ここにも具体的な屋号の紹介や事業体へのリンクなどはありません。
さらに、かつて存在していたS氏の個人プロモーション用のサイトなどを調べていくと、2010年11月に株式会社AC(仮名)代表取締役という肩書とともに、以下のような記述があります。
 

飲食店(博多料理)1店舗,キャバクラ3店舗,エステ店1店舗,運転代行業など合計6業種を千葉県内にて経営する。

このプロフィールにある株式会社ACS氏が代表取締役を務めており、そのサイトには、2011年3月の時点で業務内容として、Webコンサルティング事業、飲食事業、エステサロン事業、運転代行事業が挙げられており、飲食事業として博多料理の名前が挙げられています。S氏は、その時々でエステをエステサロンと改めたり、キャバクラを飲食事業に含めた形にしたりしてきたようです。これらの中からエステサロン事業について注目してもう少し調べてみましょう。
 
 
S氏は、コンサル業をやり始めた当初は”起業塾の塾長”を名乗っていたのですが、そのプロフィールとして2011年1月ごろには以下のようなものが使われていました。

WEB作成などのクリエイティブ事業、人材育成、コンサルティング、起業支援、複数業態の飲食店、マッサージ店、運転代行などの多角経営で年商7億円

 
 
ここでは『エステサロン』という表記は無く『マッサージ店』という表記があります。ここからS氏が自身のブログなどに掲載していた求人告知などを辿っていくと、どうもエステサロン事業として挙げられているのは、千葉県君津市のスーパーの車場内に住所がある整体マッサージ店のようだということがわかります。一般的にエステサロン事業という言葉から連想されるものとは、少々実態が違うのではないのでしょうか。
 
いずれにしろS氏はWebコンサルティング事業を展開しているという割には、関係している整体マッサージ店や博多料理店、その他の事業の情報をWeb上で探すのに苦労するぐらいだという事が指摘できます。よくよく調べていくと、整体マッサージ店や博多料理店はサイトを開設していたりクーポンサイトなどへの出稿はあったりするのですが、何か特別なマーケティングを行っているようには見えません。
例えばfacebookの活用に関しても、博多料理店はfacebookページを持っているものの、2011年7月の開設から2015年末までの間には数件の投稿しか見つけられませんでした。(2016年に入ってようやく10件以上の投稿がありましたが、それでも現在時点まででトータルで18件程度の投稿しかありません)ちなみに5年以上運営していて「いいね!」の数が500件程度です。もしかすると何か戦略があるのかもしれませんが、見た限りではただお店のfacebookを作っただけという感じで、特別なfacebook集客マーケティングと呼ばれるものが行われている気配は見つけることが出来ませんでした。サイトに至っては未だに「いよいよ オープンしました」という形のオープニングメッセージを掲載したまま放置されています。(2016年8月確認)

S氏は2011年ごろから中小企業に対するfacebook集客マーケティングの第一人者を自称してセミナーや講演活動を行ってきた様ですが、整体マッサージ店に関しては残念ながらfacebookのページ自体を見つけることはできませんでした。

※S氏が2011年に販売していた『情報商材』の一つ。定価12800円。オークションで未開封のものを送料込み1円で入手。S氏が関係する整体マッサージ店ではまだ「はじめてはいない」ようです。
 
  
また、こちらも放置されている株式会社ACのfacebookを調べてみると、S氏が管理していた株式会社ACのfacebookの最初の投稿は2011年4月のようです。しかしその次の日には、さっそくある人と一緒に「フェイスブックのWEB戦略セミナー」開催の告知をしたりしています。
 
S氏の対談の中には「何の事業を始めようか悩んでいた時にfacebookのコンサルタントを思いついたのだが既にやっている人はいた。そこでgoogleを検索してみても従業員5人程度からの中小企業に特化したコンサルタントが見つからなかったので、何もわからないままfacebookマーケティングの第一人者を名乗った」旨の事をS氏自ら語っているものもありました。
驚くべきことですが自分の会社を含めて何の実績もないどころか、facebookのことがよくわかっていないまま人を集めてセミナーを開催したことをまるで武勇伝かのように語っています。これは詐欺と非難されるような事かもしれません。
 
実際にS氏自身が積極的にfacebookの活用に取り組んでいる気配がないことから、自身のWebマーケティングに価値がないことを認識しており、自社を含めて関係企業にはセミナーなどで教えているfacebook集客の内容を実行させていないのではないか?という疑問が出てきます。また可能性としては、彼には他の事業体に対してfacebook集客をやらせるほどの影響力を持っていない、あるいは周囲ら実行するほどの価値がないという評価を受けている立場という可能性も考えられます。これはプロフィールなどとは裏腹にS氏自身は実際には、7つの事業の経営やマーケティング戦略などにタッチしていない可能性も考えておくべきかもしれないという事です。
 
 
また株式会社ACの住所からネット検索をしてみると、S氏の名前とともにアマゾンのマーケットプレイスで数年前から古本を販売しているH書店というのを見つけることが出来ます。「特定商取引法に基づく表記」として運営責任者名にS氏の名前も出てきます。2016年8月現在でも古本を中心に2000点近く出品しており、月に大体50件ぐらいの評価が付けられているようです。(もっとも内容は数百円の価格帯が中心で、送料で稼ぐような100円以下の商品も多くあります)
どうもこれがS氏のいう所の「通販、物販、インターネットビジネス」の正体のようです。しかし不思議なことに、NtBカレッジのカリキュラムや会員に対する話などにはこの古本販売を中心としたネットビジネスに関した話は一切出てこないようで、会員に対しては秘密にしているように見えます。
これまでにS氏が手掛けて来た『情報商材』などでは「年収一億円以上」「コピペだけで月収1000万円稼いでいます」など、かなり景気のよさそうなことを書いていたり、NtBカレッジの勧誘にしても「月収百万円の本格事業化をめざせる」と言ったことで勧誘をしている一方で、S氏自身はネットで地道にコツコツと利ザヤの薄い古本販売を続けている実態が浮かび上がってきます。

 
古本を取り扱っていますので、古物商の届け出あるはずだと考え千葉県公安委員会のサイトで公開している「ホームページを利用して取引を行う古物商の一覧」(最終更新日時:2016年8月3日)を調べてみますと、H書店の名前は無く、代わりにS氏が代表取締役で「2015年8月末日で、すべての営業を終了しました」と告知している株式会社ACの名前があり、ヤフーストアのURLが届け出ていました。しかし株式会社ACに関連したアマゾンのマーケットプレイスのURLの届け出はありません。
(ちなみに、この一覧の中だけでもマーケットプレイスのURLを届けている古物商は複数あります)
 
この古物商のURLの届け出に関してですが、千葉県の公安委員会のサイトにはこうした解説があります。

・許可を受けた古物商は、ホームページを利用して古物取引を行う場合には、そのホームページのURLを届け出ることになっています(古物営業法第5条第1項第6号、第7条第1項)。したがって、このページに掲載されていない業者や、掲載されている事項と異なる業者は、古物営業法に違反しているおそれがあります。

 
実際に公安委員会に届け出られている方のヤフーストアのURLをたどるとH商店という名前があり「一時休店中」と掲載されています。古物商として届け出ている業者が既に営業を停止している企業名のままの上に、公安委員会に届け出ているURLは現在使われておらず、届け出がない屋号を使って別所で営業を行っているとすると古物営業法に違反している可能性があることが指摘できるでしょう。
 
またヤフーストアにあるH商店は、住所、連絡先、メールアドレスなどは株式会社ACのもののようですが、運営会社としては公安委員会に届け出ている内容とは異なりACv社という別会社の名前が記載されており、これは古物営業法で禁止されている名義貸しの疑惑につながります。
 
 
この他にも株式会社ACは、S氏の事業の説明には出てこない事業にも色々と手を出していたようです。具体的には、一時期リフォーム業者としてフローリングの張替などを請け負っていた形跡があったり、また旅行業法で定められている事業者の登録を見つけることが出来なかったのですが、2010年ごろのわずかな期間に旅行代理店として活動していた形跡があり、自己啓発と絡めてタイでの「生まれ変わりプログラム」という企画型の海外研修旅行を運営していたようです。
 
S氏は2010年ごろから、派手な演出と景気のよい言葉で、実業家として様々な事業で成功を収めているという事を一つの売りにして『情報商材』を販売するネットビジネスを展開してきました。2015年から始まったNtBカレッジにおけるネットワークビジネスの勧誘においてもS氏のビジネスの成功は実績として強調されている点なのですが、本当にS氏がまっとうな実業家として成功していると言えるのか?という点には、疑問を持つべきかもしれません。
 
 
 
■S氏の怪しい経歴

S氏の経歴はコロコロと内容が変化していくので追いかけていくのが大変です。
ベースとなっている設定では、高校中退後、サラリーマンを10年やった後に、28歳の時に医療機器の代理店業起業するのですが、事業がうまくいかず借金を背負い自殺未遂をすることになります。しかしその後、ダイレクトマーケティングに出会い成功するのもつかの間、法改正で売れなくなり再び借金をつくり、バイトで始めた運転代行業で独立して、キャバクラを買い取り、博多料理店をオープンさせてコンサルビジネスに乗り出し実業で成功を収めて7つの業種で年商6億円(あるいは7億円)の企業グループの代表になり、現在では本を出したりネットビジネスでも成功を収めるようになったという流れです。
ただし借金額を含めて、自殺を考えたタイミングや挿入されるエピソードなどもよく入れ替わっているようです。

実は、こうした谷あり山ありのエピソードは、自己啓発やネットワークビジネス、あるいは情報教材などの勧誘で成功者の体験談として使われる話の類型としてよく知られているものです。
大まかな流れは、ダメだった人間が何かのきっかけで一旦成功するのですが、再び落ちぶれたのちに自己啓発やネットワークビジネスに出会い再起を果たすという流れです。
実に多くの人が、この流れに沿った経歴を披露して勧誘活動を行ったりしていることが知られています。ダメなところから成功するイメージは聴衆を勇気づけたり、成功や失敗ののポイントなどの有益な情報を知っていると思わせるのに効果的に働いているようです。
 

もちろんだからと言って、すぐにS氏の経歴が作られたものだとは言えません。それを検証するために、まずS氏のプロフィールや紹介文から借金に関する記述をいくつか抜き出してみましょう。
 

中卒、1800万円の借金地獄から7企業のオーナー

(2010年 本の出版に際して)
 

堕落した結果、借金2000万円、自殺未遂、離婚。

(2011年 講師派遣登録のプロフィールにて)
 

中卒、さらにギャンブルで借金2500万円を抱えホームレスになった、41歳の能無し中年オヤジ

(2012年 自身の『情報商材』の販売のセールスレターにて)
 

わずか1年ちょっとで私は、3000万円の借金を抱えて、

(2014年 北海道で行われたビジネスセミナーに際して)
 

借金3000万円。ガラス全部割られ顔を踏まれ鼻血で床が血の海。

(2016年 某氏の『情報商材』の販促対談にて)
 

この借金を抱えた時期というのもバラバラだったりするのですが、何故か年々増え続けていた「かつて背負っていた借金の額」は、ここ数年は3000万円という事で安定したようです。もしかすると借金額を増やしたところで意味がない事に気が付いたのかもしれません。
 
 
自殺未遂の件に関してですが、自殺に関係する話が出てきたのが2011年ぐらいからで、当初は「何度も自殺しようと思ったくらい」という程度の話でした。その代わりに奥さんに刃渡り17センチの包丁で刺されるエピソードを盛り込んでいたりしていました。それがいつのまにか自身の自殺未遂のエピソードに入れ替わっていきます。
さらに自殺未遂をしでかす場所ですが、こちらも雪山だったり海岸だったり、また未遂で終わるきっかけというのも今一つ安定していません。
この自殺未遂のエピソードが入る時期というのも、独立して始めた医療機器の代理店業がうまくいかなくてという流れだったり、半年ほど収入ゼロだった代理店業もマーケティングを学んだりして一旦うまくいくのですが法改正などで売れなくなって気が付けば追い込まれていてという形だったり、運転代行の事業を始めた後だったりと微妙に異なっていたりします。
 
よくS氏は、自殺未遂の後に周りの人の事を考えるようになって「7回ぐらい事業を立ち上げているが、いずれも失敗したことがない」などと言っていますが、先に上げたフローリング事業にしろ旅行代理店業にしろ、実際のところはここ数年の間でも短期間でうやむやになっている事業が多くあるようです。

また、かつては最初一人だけで起業したので友達もいなく相談できる相手もいなくて自殺という考えが浮かんでしまったという話をしていたりしますが、この20代後半での最初の起業も、最近のNtBカレッジの会報誌などでは「小学校・中学校からの親友と2人で」起業して大失敗したという事になっていたりします。ここから友達と起業してはいけないという話につなげていたりしています。
ちなみに近年のネットワークビジネス(マルチ商法)では、常識を持った人からの冷静なアドバイスを遠ざけるために「親しい人は勧誘しない」という指導をするところがあり、仮にそうした指導を踏まえてのエピソードの創作や挿入があるとすれば、かなり計算して作られていることがうかがえます。
 
もし仮に、本当に自殺を考えるような状況に陥っているような人が「いいカモになる」と考えて、こうしたエピソードを盛り込んでいるとするとかなり悪質だと言えるでしょう。一般的に、追い込まれている人というのは正常な判断ができない状態になっていたり、相談相手もいない場合がほとんどです。そういった人を「だましやすい相手」と考えて、つけ込む形の悪徳商法は世の中には珍しくありませんので、注意して見てみることが必要です。

 
さらにS氏のサラリーマン時代の話ですが、最近ではエリートばかりが集まって作られたITベンチャー企業に、とりあえずの雑用係として首を切る前提で採用されたいう事になっています。そこで頑張って10年近く勤めて所長として営業所を任されるまでになったという事ですが、会社名はもちろんの事どういった業務内容のIT企業なのかは語られていないようです。
 
そもそもS氏が起業男塾の塾長を名乗って自己啓発のセミナーや商材を売っていた2011年当時は、自分で起業する前は棚卸の代行会社に10年近く勤めていたことになっていました。2014年頃の後援会の説明では、コンサートなどのイベント関係の会社に就職という話をしています。
棚卸の代行会社とイベント関連会社そしてITベンチャーとでは、かなりイメージが違いますが、どうやらS氏はネットビジネスを売るのに都合がよいように経歴を変えたようです。
 
 
  
■社長業の怪
 
S氏は2000年の28歳の時にフランチャイズの医療機器の販売代理店として個人事業で独立したという事になっています。その後どういう経緯で会社を設立したのかは今一つはっきりとはわかりませんが、S氏のプロフィールに自身が代表取締役を務めているとして名前が上がる千葉市若葉区の株式会社AC 千葉(2015年8月末での業務の終了を告知)の登記簿情報を調べてみると、2009年7月1日に株式会社ACという名称で設立されて2013年に株式会社AC 千葉に名称変更しています。

S氏の複数あるブログを見てみると、2010年の1月にこの会社がある千葉市若葉区の住所と思われるプレハズの事務所を写真付きで投稿し「ここが駐車場7台付き 4部屋 25坪しめて家賃105000円」と紹介していますので、この住所においてS氏が関係する事務所があったことは確かなようですが、その実態がなかなかつかめません。
 

※S氏が関係する複数の会社の登記簿情報
 
 
S氏は対談その他で運転代行業で成功したという話をよく行っており、セミナー講師派遣業者に登録しているS氏のプロフィールにも、2005年に「新規に運転代行の会社を立ち上げる」という記載があります。
確かにS氏が代表取締役を務める株式会社AC 千葉の登記簿に記載されている「目的」には「自動車の運転代行業務」があり、該当すると思われる千葉市若葉区の運転代行業者のWebページは今も存在しています。2009年ごろに開設されているこのwebページを調べてみると、会社概要として株式会社ACという記載が残ったままになっています。
対談などによると2005年に新規に運転代行の会社を立ち上げたのが個人事業だったということですので、普通に考えると株式会社AC設立の2009年に、個人事業を法人化したのではないかと思われます。

ただ前回でも少し触れましたがこの株式会社AC 千葉と同じ千葉市若葉区の住所で有限会社ACという会社があります。この登記簿情報を調べてみると、会社の設立が1999年で2007年の2月に千葉県に本店移転されていることが分かります。
そして2007年の5月には住所に102号というのが付けられる変更も記載されています。普通に考えると101号が存在し、何らかの目的があって同住所を使い分ける必要があったのではないかと思われます。
101号を住所とした株式会社ACの設立が2009年ですから、その間101号に何らかの会社が存在していたのかもしれません。
 

有限会社ACの役員に関する事項を見てみると、2009年に栃木県のSM氏が取締役に就任していますがS氏の名前はありません。あるタイミングでS氏が退いたという可能性もありますが、この会社の設立はS氏が独立したという年よりも前になっていますから、少なくともS氏が設立した会社ではないのは確かなようです。

この有限会社ACの登記簿情報に記載されている「目的」を見ると「自動車の運転代行業務」というのを見つけることが出来ます。つまり株式会社ACの設立以前に「自動車の運転代行業務」を掲げた同じ名前の有限会社が既にその場所にあったという事です。もちろん一般の企業でも登記簿の「目的」に書いている事業を、必ずしも実際に全て継続して行っているとは限りません。ただS氏の話を信じると運転代行業の業務自体は2005年から行われていたようですので、以前から同じ場所に存在している存在している有限会社ACがその運営に関わっている可能性が高いと考えられます。
こいった事を考えてみると、2005年にS氏が「運転代行業の会社を一から立ち上げた」という所から、飲酒運転の罰則強化など運転代行業に対する社会の追い風に乗って事業で成功した話などに関しても少し疑問を持った方が良いかもしれません。
 
 
またS氏が取締役を務めておりNtBカレッジなどの運営にも深く関与していると思われるAP社という会社があります。登記簿情報を見ると、この会社の成立の年月日は2013年になっています。しかし会社のWebページには設立日は株式会社AC 千葉と同じ2009年7月1日になっています。また、このサイトには2014年以前から「社名変更に伴い、ウェブサイトのURLが変更になりました」という記載がありますので、その事業母体はどこからか持ってきたものと推測することが出来ます。
会社の設立の日付などから考えると、AP社株式会社AC 千葉その実態が同じである可能性が高いと考えられます。しかし何故かS氏は2015年2月に立ち上がったNtBカレッジなどで掲載するプロフィールなどでは株式会社AC 千葉の代表取締役だと記載しても、AP社の名前は掲載せずに通しているようです。
 
さて、このAP社にしても奇妙な点がいくつかあります。例えばAP社のサイトには2015年の10月ごろまでは会社概要のページに顧問弁護士としてY弁護士の名前が挙げられていました。Y弁護士はベンチャー企業を得意としアジア進出などの法務にも強い弁護士という方で、一時S氏が企画していた東南アジアへのビジネス展開を売るという『情報商材』に絡んで、顧問弁護士も頼まれていたのかもしれません。
しかし2015年の11月ごろに突然弁護士法人Aが、顧問弁護士に名前を連ねることになります。同時期に弁護士法人ANtBカレッジの顧問弁護士となっているようですが、不思議なことに1ヶ月ほど経つとAP社の会社概要のページから顧問弁護士の記載が一切無くなってしまいます。単純な誤記載や顧問弁護士の切り替えですと片方の弁護士事務所の記載は残るはずですから、この変化はかなり奇妙だと言えるでしょう。一体どのようなことが起こったのかはわかりませんが、二つの弁護士事務所が絡んだ普通の会社では少し考えられないことが起こっているようにも思えます。

実は、このAP社が公開している主要取引先の一覧にも不審な点がいくつかあります。たとえば、その中に“千葉東警察”という表記があります。これは千葉東警察署の事なのかもしれませんが、一般的に主要取引先の名前をしっかりと書かないのは大変失礼な行為です。またセミナーやコンサルティング業を行っているAP社の業務内容から考えて、県警の総務部などてはなくて警察署単位の取引というのは少し奇妙に思えます。
他にも顧問弁護士の欄から消えたY弁護士の法律事務所の名前と弁護士法人Aとが主要取引先の中に入っています。顧問弁護士から外れてもらった後にも何らかの取引を継続しているという可能性も考えられなくはないのですが、その場合もなぜAP社は取引があるにも関わらず顧問弁護士契約を打ち切った状態を続けているのか?という疑問が深まります。
あくまで可能性の話になりますが、商売がうまくいっているように装うために、例えば警察署に登録更新の手数料を払いに行ったとか、一度顧問弁護士契約の相談をした程度で、主要取引先に書き込んでいる可能性も疑った方が良いかもしれません。これまで見てきたS氏の行状を考えると、何かの意図をもって取引先に警察や弁護士事務所を書き込んでいる可能性を考えてみるべきかもしれません。
 
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当初はS氏の事を調べるにあたり、怪しい点を探すためにはかなり重箱の隅をつつくようなことをしなくてはならないのかと考えていたのですが、実際は怪しくない部分を探そうとしてもなかなか見つからないような状態です。

実はS氏の事を詳しく調べてみようと考えるきっかけとなったのは、2013年の3月に新刊の発売にあたってガジェット通信に掲載されていたS氏のインタビュー記事にあります。そこには「知らないうちにカモにされる人たち」という話で、知識がないばかりに広告代理店やコンサルタントに騙されてしまう人が多い事に対してS氏のアドバイスがありました。

騙されないためには、その情報を出している人と実績、第三者からの評判をしっかりネットやソーシャルメディアで調べることです。
ビジネスをやっている人は大体実名でFacebookをやっていたりするので、その人がどんな投稿をしているのかを調べると人となりや交友関係が見えてきます。そうやって、自分の目だけではなく、ソーシャルメディアの投稿を通して普段の行動をじっくり見ること。

当時からにコンサルタント業を行っているはずのS氏は、自分が調べられる立場でもあることを判っていたのでしょうか。
 
 
 
■騙しの構造
 
少し調べただけでも色々と怪しい点が浮かび上がってくるS氏ですが、話をよくよく聞いていると一回の対談一つの広告の中にも矛盾やおかしな点、どこかで聞いたようなエピソードが色々と出てくることも珍しくありません。
本当のことを調べようとすればするほど混乱してしまうぐらいなわけですが、これほどいい加減な話を2009年ごろから積み重ねてきたのにも関わらず、未だにS氏の事を信じてしまう人がいるという事もまた事実です。
 
 
理由はいくつかあるでしょう。まずS氏は『情報商材』の販売にあたって言っていることを常に変化させていっている点から、基本的にリピートの獲得などは無視してS氏は何も知らない新規の顧客を次々にターゲットとしてきたことがうかがえます。
その場その場で効果的に働くような経歴や実績を都合よく披露していくのですから、それまで詐欺的な『情報商材』などに接点がなかった人などは、S氏の話を聞いてついつい「すごい人だ」と信じてしまうかもしれません。

またS氏の話の中には、自己啓発書などから取ってきたと思われる「いい話」や「ためになる話」が配置されていたり、感動を誘うようなエピソードを盛り込んでいるというのもポイントです。確かに「感謝が大切」であるとか「喜ばれるビジネス」いう話自体は否定できませんし、困っている時に人に助けられた話などは心に来るものがあるかもしけれません。ただ、もし創作エピソードを実話のように語ることで実績や権威のあるように見える人から道徳的なことを言われると納得してしまう心理を突こうとしているのならば悪質です。人は話の一部にでも共感や感動を覚えたり納得してしまうと、他の部分で多少おかしな点があったとしても全てを否定しにくくなり「嘘を言っているとは思えない」という感情が出てくることも珍しくはありません。
言ってみれば「嘘が嘘を補完して信じ込む形」です。冷静に考えるとおかしいところだけのS氏の事でも、感情が先行すると「ためになる、いい話を言っている凄い人」という思い込みが強くなり、すっかりと信じ込んでしまう形になってしまいます。かつて「生まれ変わり」という自己啓発の海外研修旅行を行ったりしていた経歴を持つS氏ですから、感情を先行させていくノウハウを持っていることは想像に難くありません。
一般的な業者と顧客という関係とは違って、こうした感情誘導を行う勧誘で捕まえた人間というのは、あと一押しさえすれば「お金や労働力になりやすい」傾向を持っているという側面があります。お金を払うばかりではなくて、宣伝してくれたり時には動員などで参加してくれる人の確保は、大衆に向けての詐欺のようなことを行っている人にとっては大変貴重です。ですから見込みがあると思った相手には、小さなとっかかりからでも絡め手のように信じ込むように仕向けていくことが珍しくありません。
 
こういった状況に落ちて行ってしまうのは、何も話を信じ込みやすいタイプの人ばかりではありません。特に注意が必要なのが自分が慎重だと思っているような人です。たとえば「よくわからない人の話は、『話半分』で聞く」と言った姿勢をとっている人などは、一般的な相手に対してはそれで十分に慎重だと言えるかもしれませんが、最初からだますつもりで練られた嘘を言うような人を相手にする場合、話を半分も信じてしまうと大変なことになるかもしれません。自分自身は「嘘を含んでいるとわかったうえで話を聞いている」と思い込んでいる時点で、既に詐欺師の術中にはまり込んでいることも珍しくはないのです。

中には詐欺を働こうとしている人があえて杜撰な設定やプロフィールを表に出すというケースもあります。明らかな嘘や、内容が破たんしている広告文などは、リテラシーがあまり高くない人や欲に目がくらんでいる人、人の話を信じ込みやすい人を選びだす選別機の働きもあったりします。もちろん、一度騙されたような人の多くは避けて通りますから、新規の顧客を相手にしたいS氏のような人の場合は、こうしたいい加減な話が「騙しやすい初めての相手を選ぶフィルター」として働きます。このフィルターを通った人間は、だませる可能性が高い有望株としてリスト化されることになります。こういう人のリストが、多少の投資をしてでも引きずり込むべきターゲットになりるわけです。

さらに興味深い仕掛けも用意されています。実はS氏がこれまで扱ってきた多数の『情報商材』の中には、その『情報商材』をコピペで紹介してメールアドレスの登録やアフェリエイト販売につなげることで、収益を回収できる仕組みを持っているものもあります。つまり巧妙に「嘘でもほめておいた方が多少は得」という考える人が出てくるように作られていたりするのです。 
今はネットなどで多くの人が情報発信ができる時代ですが、そういうネット上での散々な悪評の中にも、販売や勧誘など何らかの目的があって称賛している人が一人でもいれば、「賛否両論ある」という形にしてしまえるのがポイントです。騙されてかけている人にとっては、的確な批判よりも、いい加減な内容でも称賛の方が自分の気持ちを補強して正しいように見えてしまうというケースも珍しくはありません。そうした意図的に作られた称賛を目にすることで自己の判断の肯定をしてしまうこともよくあります。

カルト宗教などもそうなのですが現実社会の問題として、例えばS氏のような怪しい人が、多くの人を信じ込ませてお金を集めたり、何かの活動を行わせるという話は数多く有ります。S氏のNtBカレッジの例を見てもわかると思いますが、実はそうした時には、話や行動の内容の価値などはあまり関係がなく人が動かされるいという事はしばしばみられます。人は自分の信じたいものを信じるものなのですが、張りぼてでも、あるいはまがい物でもその「信じたいもの」だと思い込ませる技術というのが存在しているのです。何かを信じたいと思う感情は否定されるべきものではありませんし、それを見つけたと思った時に感じる”高揚感”や”揺さぶられるような感情”は本物であるかもしれません。しかしそういった感情につけ込まれると、冷静な状態では到底信用しないものですら信じ込んでしまうという事に陥ってしまうかもしれないのです。

今回、色々とS氏の事を見てきましたが、我々はS氏のような人でも、すっかりと信じ込んでしまっている人がたくさんいるという現実を知るべきでしょう。また普通の人でも、いつ何かの拍子にそうした怪しいものを信じ込んでしまう状態になってもおかしくはないという感覚をもっておくべきかもしれません。

続きます。
  
 
  
※本稿では現時点で正式な名称を記載する予定はありませんが『NtBカレッジ』は2016年8月現在も活動中です。読者の皆様には賢明なご判断をして頂ければ幸いです。
 
※もしNtBカレッジに該当すると思われる組織、あるいはその他組織に関して何かご情報をお持ちの方がいらっしゃいましたら、筆者のTwitterなどに宛ててお気軽に教えていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。

 
掲載順に  
トップ画像: 実際に配布されている資料より作成
中画像: 独自に入手した資料による
中画像: 独自に入手した資料による

 

消費生活アドバイザー めきし粉書房代表。 電子書籍とか出してます。 オカルトから文芸、その他。 最近のメインテーマは「プロパガンダ」とか「マインドコントロール」 貧乏オーディオ愛好家。

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