日々の仕事から帰ると、私は旅に思いをめぐらすようになった。妻は旅好き。夫の私は出不精だ。
妻が言うには、大井町に温泉があるという。その地で温泉は湧かないものの、どこからか運び込まれた温泉水らしい。ドクターフィッシュまでいるという。
共働きの私たちは、旅の計画を立てる会話が余暇の楽しみだ。近くの地下鉄をつかい、近くの私鉄を乗り継いで「旅」をする計画を立てた。
“贅沢とは、なにもしない時間を過ごすこと”と妻は言う。なるほど、何もしない時間を過ごしたい。大井町の温泉の話をいろいろと話した。私にとって、大井町も地球の果ても、たいしてかわりはない。とてつもなく遠くであり、かつ近く。
近々、大井町を旅する。
(イラスト/筆者:水を求める二頭のシカ)