集英社のウェブコミック配信サイト『となりのヤングジャンプ』で連載されている『有害都市』第7話の登場人物が語るアメリカン・コミック(アメコミ)市場の歴史と現状について「史実とかけ離れているのではないか」として論争が発生していた問題で、3日夜に原作者の筒井哲也氏が「お詫び」と題する一文を公表しました。
冒頭で作中のアメコミに対する現状認識の描写が「不適切」であったことを作者として認め、「ヒーロー物以外にも多数のヒット作が生まれていること、またヒーロー物というジャンル自体にも、決して一括りにはできない豊穣な多様性を獲得している」との指摘が相次いでいることに関しては「作者としてもその認識に全く異論はございません」としています。また、特に問題視された「ヒーロー物しか存在しない」という台詞については「日本の漫画に心酔しているプロモーター」というキャラクター設定と、今後作中で語られる予定の1950年代の米国で「コミックス・コード」による検閲と闘ったクリエイターを取り巻く多難な状況を「より激しいものとして過剰に演出をしようとした作者の意図」が原因であるとしています。
そのうえで「アメリカンコミック文化そのものを貶める意図や、日本漫画市場の優位性を説きたいという意図によるものでは決してない」とし、「過剰なデフォルメによる表現が、読者の皆様を混乱させ、とりわけアメリカンコミックを愛する方々の心を深く傷つけてしまいましたのは、すべて作者の不徳の致すところです」と、今回の論争が発生した責任は筒井氏に帰することを明言し、結びでは「この件以外にも数点、アメリカンコミックに関わる表現に不正確な表現がありました。作者の不勉強と不注意による間違いでしたので、あわせて修正いたします」としています。
また、筒井氏本人のサイト『STUDIO221』では『となりのヤングジャンプ』に掲載された「お詫び」に補足する形で、同サイトが初出となる新エピソードの1話目に当たる第8話の更新が当初予定の11日から2週間延期され、2月25日となることも公表されています。
今回の論争を巻き起こした第7話は昨年10月に『ジャンプ改』の最終号(2014年11月号)に掲載されたエピソードの再録でしたが、その時点では読者数が限られていたので特に作中の描写が問題視されることはありませんでした。ところが、雑誌の廃刊でウェブコミックによる無料公開へ移動した結果、より多くの読者の目に留まり今回の論争が巻き起こったのはまさに『有害都市』のテーマの一つである「漫画の製作・公表に関する環境の激変」を象徴する出来事に、当の作品自体が巻き込まれた形と言えるかも知れません。
「有害都市」第7話のお詫び(となりのヤングジャンプ)
http://tonarinoyj.jp/news/#post-002792
画像‥STUDIO221(『有害都市』原作者・筒井哲也氏の公式サイト)内のお知らせ
http://www.pn221.com/ [リンク]