競馬予想ソフトを使って勝ち馬投票券(馬券)を購入し当選金を得ていた男性に対して、去る2日、大阪地方裁判所はハズレ馬券を必要経費とみなとする判決を言い渡しました。
これにより、国税庁が課税した所得税8億2000万円は7000万円に減額されています。
男性は平成21年までに、35億1000万円の馬券を購入し、36億6000万円の当選金を得ていました。
競馬や競艇、競輪などの公営競技での当選配当金は、「一時所得」とみなされ、受取額に応じた所得税を申告しなければなりません。
一般的に所得税は、受け取った報酬から、報酬を得るのに必要になったお金(必要経費)を引いた金額に対して課税されます。ところが、競馬などの公営競技での当選配当金は、ハズレ馬券を必要経費としてみなさないのが通例でした。
たとえば、1万円ずつ馬券を10枚購入した場合、1枚だけ当選して10万円の配当金を得たとすると、配当金の10万円から当たり馬券を購入した費用1万円だけが必要経費として認められ、残った当選配当金9万円に対して所得税がかけられる形となります。
今回の大阪地方裁判所の判決からすれば、先述の場合は、ハズレ馬券の購入代金9万円が必要経費とみなされるため、所得税は0円となります。
(当選金の10万円ー(あたり馬券を購入した1万円)-(ハズレ馬券を購入した9万円)=0円)
大阪地方裁判所の田中健治裁判長は、「被告は一般の馬券の買い方とは違い、大量のハズレが出ることを前提に、繰り返し馬券を購入していた。したがって、一時的に当選金を受け取る「一時所得」とは性質を異にする事業所得(ビジネスとして継続して収入を得る行為)であり、ハズレ馬券は必要経費にあたる」と判断しました。
この男性は、所得税法違反で刑事事件として告訴されていますが、1審、2審とも執行猶予つきの有罪判決ではあるものの、裁判所は今回の大阪地裁の判決と同様、ハズレ馬券を必要経費と認めています。(検察は上告中)
この判決について、大阪国税局は判決内容を詳細に検討するに至っていないため、コメントは差し控えたいとマスコミに回答しています。
この判決がこのまま最終的な法的解釈として落ち着くなら、サラリーマンの方でも、継続して公営競技を楽しむ方は、ハズレ馬券や車券・舟券の購入額を、納付した所得税から還付してもらえるという理屈になります。
健康保険料や地方税は、所得税の金額から計算されますから、公営競技を楽しまれる方は、ハズレ馬券・車券・船券の投資額をきちんと記録しておいたほうがいいかもしれませんね。
写真は 足成 http://www.ashinari.com/ より