現在開催中である『日本 ものづくり ワールド』では世界最大級のものづくり専門展として、最新の技術が盛り込まれている製品の展示が行われている。
その中のイベントの一つ『設計・製造ソリューション展』では今話題の『3Dプリンタ』や『3Dモデリングツール』が展示されている。そこで今回私が実際に見て、日本のものづくりの凄さを改めて感じさせられた『金属構造型複合加工機(光造形+切削加工)』について紹介したいと思う。
松浦機械製作所のブースに展示されていた『LUMEX Avance-25』という金属光造形複合加工機は、金属の粉末をレーザーで溶かし、それを何層も積み重ね、さらに同時にマシニングセンタによる切削加工も行うことにより、超精密部品を作っていくという工作機械だ。分かりやすく言えば『金属3Dプリンタ』であるが、この工作機械の凄さはただの『金属3Dプリンタ』ではなく、ファイバーレーザによる『金属光造形』とマシニングセンタによる『高速・高精度切削加工』を一つのマシンで行うところである。”ワンマシン・ワンプロセス”で光造形+切削加工を行えるのは世界中でもこの工作機械のみだ。
この工作機械は12年ほど前に松下電器からの依頼により、松浦機械が大阪大学と共同でリニアモーター技術を使った工作機械として開発され、改良を重ね現在の『LUMEX Avance-25』に至ったそうだ。
今回の展示会では実際に『LUMEX Avance-25』で金型を製作しているところを見ることができた。
金属粉末にレーザー焼結をして0.05ミリ単位で層を重ねていく様子を生で見たが、素材の粉末のみが見えている状態で、目に見えないレーザーによってバチバチと火花が散っている様子は、なんとも不思議な感覚に思えた。下の写真はレーザー焼結されて金型が形成されていく姿を撮ったものである。
このように0.05ミリずつ金属粉末を積層⇒レーザ焼結させ層を重ねていき、0.5ミリごと(10回ごと)にマシニングセンタの刃で切削加工を行う。これを仕上げまで繰り返していくという工程だ。
そして実際に『LUMEX Avance-25』で作られた金型がこちらの写真。通常の切削マシンを使うと複雑な構造をしている金型を作るにはいくつもの部品を造り、それを組み合わせて製作していく必要があるが、『LUMEX Avance-25』で製作すれば、車やデジタルカメラなどの複雑な構造の金型もワンプロセスで製作することが可能だ。
更に、金型だけではなく医療に役立つ『人工骨』や『義歯床』等もワンプロセスで製作することが可能であり、患者によって形状が異なる製品が多い医療分野においても大きく貢献していくのではないかと感じられた。
今回の『設計・製造ソリューション展』では、数多くの『3Dプリンタ』が展示されており、そのプリンタで製作される完成製品のクオリティはとても高くかった。そして光造形のマシンも他にもいくつか展示されていた。
ただ、松浦機械の『LUMEX Avance-25』は、もともとマシニングセンタ等の切削機械を作っているメーカーの強みを生かし、光造形だけで終わらせるのではなく、美しい完成形にこだわるために切削加工も同時に行うところまで考えられており、その部分が他の『3Dプリンタ』には無い良さだと感じた。
今回展示されている『3Dプリンタ』は比較的小さな製品しか作ることができないが、作られていた製品の品質はとても素晴らしいものが多く、日本のものづくりの大きな進化を感じることができた。今後『3Dプリンタ』の開発が進むことで、車のような大型の製品がプリンタで作れるようになる日も近いかもしれない。
<関連サイト>
設計・製造ソリューション展(DMS)
http://www.dms-tokyo.jp/
松浦機械製作所
http://www.matsuura.co.jp/japan/