今回も朝日新聞夕刊コラム「今日の話題」から取り上げてみよう。なんと、昭和30年代の電車の中は現在と同じく無法地帯で、「日本人オワタ」状態だと嘆いている。まず「謝らない」という題名の昭和26年9月11日の記事より。
人の足を踏んでも、誤って人の頭を小突いても、謝る人は十人のうち三人もない。
「人の足を踏んでも、誤って人の頭を小突いても、謝る人は十人のうち三人もない。『失礼』とか『ごめんなさい』ということばも言わないので、それをしないばかりに、嫌な思いをしたり、白い眼でにらみ合ったりしなければならない。」
「終戦後しばらくの間、日本人がお互いに謝らなかったのは人心が荒んでいたからだろう」
「謝らないということから始まって、電車や汽車がどんなに混雑して蒸し暑くても窓を開けない、老人や子供を抱いた婦人が立っていても知らぬ顔をしている」
このように、驚くほど昭和30年代の日本の電車内のマナーは悪かったようだ。そればかりか、今では考えられないような行動も取られていた。列車の窓から乗り降りする人が跡を絶たなかったらしいのだ。
8月25日の記事には、「岡山から国鉄自慢の筑紫号に乗ったが、駅で『列車の窓から乗り降りしないように』というふうに駅で駅員が拡声器でさけばなければならない。終戦後のモラル喪失はまだ尾を引いている」という記事も出ている。
「昭和30年代の美しい心を持った日本人」がやっていたのは、こんなことだったのだ。私は昭和50年代に生まれてからこの方、平常時に列車の窓から乗り降りしている人を見たことがない。いや、東日本大震災の時ですらなかった。やはり、その頃に比べるとマナーは向上したと見て良いのではないか。いたずらな過去の賛美はあまり良いことではないと思う。
(新聞記事の引用は適宜読みやすく改変。画像は乗客が窓から乗り降りして問題になった急行筑紫号を牽引していた蒸気機関車D52 ウィキペディアフリー画像より http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/c/cc/Japanese-national-railways-D52-72-20110330.jpg/640px-Japanese-national-railways-D52-72-20110330.jpg)