『バイオハザード レクイエム』レビュー:交互に押し寄せるアクションとホラーがより恐怖を高める! シリーズ集大成と言える一作

ホラージャンルを代表するゲームシリーズ「バイオハザード」。そのナンバリング最新作『バイオハザード レクイエム』がとうとう発売された!

筆者は今回、Nintendo Switch 2版を購入したので、同ハードでのプレイを元にレビューをお届けしたい。「グラフィックの美しさを追求するならPC(Steam)版やPlayStation5版じゃないの?」と思う人もいることだろう。そこで、どうして筆者が今回Nintendo Switch 2版を選んだかについても、最後にお伝えする。

なお、ホラーゲームは新鮮な驚きが命なので、物語展開など、直接的なネタバレは避ける。ただ、レビューのためにどうしても触れなければならない点もあるので、「ゲーム内容を一切知らずにプレイしたい!」と思う人は、ぜひ記事を読む前にゲームをプレイしてほしい。心配ご無用、『バイオハザード レクイエム』は、買って後悔することのない作品に仕上がっているぞ!

ホラーとアクションのシナジーで恐怖感も爽快感もアップした最新作!

『バイオハザード レクイエム』は、サバイバルホラーゲーム「バイオハザード」シリーズのナンバリング最新作だ。今作では、『バイオハザード2』『バイオハザード3』で舞台となったラクーンシティで、ゾンビをはじめとしたバイオ・クリーチャーたちの恐怖へ立ち向かうこととなる。

クリーチャーたちと戦いつつ、パズルを解きながら謎の真相へと迫っていくという基本的な構造はこれまでの作品同様。そこに本作ならではの新要素として、「視点の切り替え」が追加されている。ゲーム中どのタイミングでも、キャラクター自身の視点で世界を映し出す「一人称視点」と、キャラクターの姿も含めて世界を描く「三人称視点」とを選択可能だ。

ただゲーム側からは、本作で初登場した主人公、グレース・アッシュクロフトに「一人称視点」、もう一人の主人公であり、シリーズおなじみの人気キャラクター、レオン・S・ケネディに「三人称視点」を使うことが推奨されている。これは、本作の楽しさを最大化するという点で、大きな意味を持つ。

グレースはFBIという捜査機関の人間ではあるものの、身体能力的には一般人とそう変わらない。攻撃力や体力は低いし、ちょっとしたことですぐ怖がる。移動する度に怯えたような声を出すので、頼りない印象が強い。

いくつものバイオハザードを潜り抜けてきたレオンやクリスはもちろん、場合によっては前作の主人公イーサン(イーサン・ウィンターズ)より弱々しい印象を受ける。でも、だからこそ、グレースのパートは恐怖感が強い。

これまでのシリーズのファンであれば、レオンやクリス、ジルといったキャラクターが出ただけで、どこか安心感を覚えることだろう。なにせ、これまで何百というバイオ・クリーチャーを始末してきているのだ。もはや彼らにとってバイオ・クリーチャーは恐怖の対象ではなく、駆除の対象。

こうした「キャラクターが持つ力強さ」は、プレイヤーにも当然伝わる。ゲーム内で起きたことに対するキャラクターのリアクション、セリフ、攻撃する際の手慣れた手つき。いずれも頼もしく描かれているから、プレイヤーもまた、その強さを感じられるのだ。

したがって恐怖を感じるはずの局面であっても、どこか安心してしまう。だが、グレースはそうではない。頼りない印象があるからこそ、しっかり怖い。

こうしたグレースのキャラクター性を踏まえた上で、グレースパートは初代『バイオハザード』のような……あるいは『バイオハザードRE:2』のような、探索型サバイバルホラースタイルが採用されている。クリーチャーと戦うための銃弾や回復アイテムが限られている中、アイテムを探し、パズルを解いていく。グレース自体が頼りない上、所持可能なアイテム数も少なく心細い。

しかも、敵は強い。倒すために必要な銃弾数は多い上、不死身の追跡型クリーチャーも登場。これで怖くないわけがない!

その上で、一人称視点が恐怖を最大限に盛り上げている。

視点が恐怖へどのように作用するのか? それを説明するための補助線となるのが、「ホラーとコメディは紙一重」という言葉だ。

実はまったく同じ出来事であっても、ホラー的に描いたり、コメディ的に描いたりすることができる。この違いは、キャラクターとの心理的な近さだ。たとえば、「キャラクターが、ゾンビのフリをした友達から追い掛け回されている」というシーンを考えてみよう。

キャラクター自身は、友達がゾンビの「フリ」をしていることがわからない。だから、本物のゾンビだと思って怖がっている。友達がゾンビの「フリ」をしているという設定を観客側にも明かさなければ、観客に対してもキャラクターの恐怖は伝播。ホラーが成立する。

映像においてカメラの位置は、観客の心の位置を示す。このため、キャラクターの感情を観客に伝えたいなら、なるべくそのキャラクターの視点に近づけた方がいい。つまり、「一人称視点」だ。

もし、カメラの位置をキャラクターの視点から遠ざけると、観客の心の位置もキャラクターから離れて冷静になる。冷静になった観客から何が見えるのかというと、友達がゾンビの「フリ」をしているという事実だ。雑なメイク、下手くそな演技、にも関わらず必死に逃げるキャラクター……こうなると、同じ出来事もコメディ的に変化する。

だからこそ、恐怖を追求したグレースパートでは、「一人称視点」が推奨されているのだ。

一方のレオンパートはどうだろうか? 先ほど書いた通り、レオンは非常に力強く、頼りがいのあるキャラクターだ。それを象徴するように、レオンパートは『バイオハザード4』~『バイオハザード6』のようにアクションを追求したスタイルとなっている。

パズルを解くよりも、敵を倒すことが主体。銃弾はふんだんにあり、そもそもレオン自身が強い。グレースパートで強かったクリーチャーはもちろん、不死身の追跡型クリーチャーですら倒すことができる。

だからこそ爽快! 圧倒的爽快感があるのだ。

アクションが重要なレオンパートでは、「三人称視点」の都合がいい。キャラクターのアクションを見ることができるし、敵との位置関係も確実につかむことができる。でも、それだけじゃない。

カメラの位置は観客の心の位置を示すため、キャラクターの視点から遠ざけると、観客は冷静になる。これこそがまさに、歴戦の猛者であるレオンの視点。数々のバイオハザードを潜り抜けてきたレオンは、バイオ・クリーチャーとのバトルであっても、冷静に対処できるのだ。

レオンパートで「三人称視点」が推奨されるのは、もっともな話だろう。

では、グレースパートとレオンパート、味わいの異なる2つのパートを体験できることこそが、本作の魅力なのか。いや、本作の魅力の本質は、ただ2つのパートが存在することにあるわけではない。この組み合わせが絶妙であることこそが、本作の魅力の本質なのだ。

グレースパートがホラーの恐怖を担っており、レオンパートがアクションの爽快感を担っている。恐怖はプレイヤーの緊張感を高め、爽快感が緊張を一気に解き放つ。この「緊張」と「解放」は、ホラーで恐怖を感じさせるための本質的要素だ。

ホラー作品においては、単純にグロテスクなクリーチャーを出現させれば、恐怖に繋がるのか……というと、そうではない。まずはプレイヤーの不安をあおり、「何か出そうだ……」と緊張させる必要がある。

その上で、クリーチャーを出すと……見せかけて、出さない。プレイヤーは、「なんだ、何も出なかったじゃん……」と一息つき、緊張から「解放」される。そこで、ここぞとばかりにグロテスクなクリーチャーを出現させると、最大限の恐怖が呼び起こされるのだ!

どう「緊張」させ、どう「解放」するか。そのタイミングこそが、恐怖を感じさせるための本質なのだ。

本作でも、とりわけグレースパートでは、ゾンビが出ると見せかけて……出ない、かと思えば唐突にゾンビが登場……という「緊張」と「解放」のテクニックが駆使されている。だがここに加えて、グレースパート自体が「緊張」を、レオンパート自体が「解放」を担っており、全体的にも「緊張」と「解放」のテクニックが使われているのだ。

グレースパートによって恐怖を感じていればいるほど、レオンパートの爽快感が増す。「さっきはあんなに怖がらせやがって! どうだ、思い知ったか」という逆襲感が、アクションの爽快感を最大限にアップしてくれる。

一方、レオンパートが爽快であればあるほど、グレースパートに戻ったときの心細さが増す。「さっきはあんなに強かったのに、銃弾も回復アイテムも少なくなっちゃった……」という現実(弱体化)が、恐怖を最大限高める。

これまでの「バイオハザード」でも、2人の主人公が存在するというパターンは繰り返し用いられてきたが、こうした使い方を狙うものはなかった。これは、本作ならではの楽しさなのだ。

ファン心理を刺激! シリーズ集大成といえるゲーム内容

また、これまで「バイオハザード」シリーズをプレイしたことがあると、本作の様々な部分に過去作の影響を感じることだろう。たとえばそのひとつがドアの仕掛けだ。シリーズの過去作では、ドアに宝石や石板などをはめ込むと解錠され、中に入れる……というのが定番の仕掛けだ。

だが、いちいちアイテムを鍵の代わりにするドアが現実的に存在していたら、とても不便だ。住人や建物の利用者は、その部屋に入るために宝石やら石板やらを集めないといけない。

もちろん、こうした仕掛けはゲームを成り立たせるために必要なウソだ。ゲームは楽しさのために作られるものであり、ゲーム的なウソを排除してリアルに作れば楽しいものになるのかといえば、そんなことはない。とはいえ、そうした「ゲーム的なウソ」に対してツッコミを入れるというのもまた、ゲーム的な楽しさのひとつだった。

ただ本作では、とうとうゲーム内のキャラクターの口から、こうした仕掛けへの言及が行われる。筆者は思わず大笑いしてしまった。

次に、セーフルームにまつわる演出も、感心した点のひとつ。セーフルームとは、タイプライターなどセーブ用施設が置かれた部屋であり、その名の通り安全(セーフ)。ゾンビなどのクリーチャーが入ってくることはないのだが、本作では……。

ただこの演出に関しては、これ以上詳細は書かないでおこう。是非読者の皆にも驚いてほしい。

こうした「ネタ」的要素以外にも、本作は過去のシリーズが持っていた要素を丁寧に拾い上げている。初代『バイオハザード』や『バイオハザードRE:2』を思わせるグレースパート、『バイオハザード4』~『バイオハザード6』のアクション路線を思わせるレオンパートはもちろん、『バイオハザード7』や『バイオハザード ヴィレッジ』で採用された「一人称視点」の効果的な取り込みも、過去のシリーズが持っていた要素をブラッシュアップしたものと言える。

また、グレースパート=恐怖を重視したパート、レオンパート=アクションを重視したパートといったかたちで主人公毎に体験を大きく変えている点は、『バイオハザード6』や、『バイオハザード7』のDLC群、『バイオハザード ヴィレッジ』のDLC群といった作品の延長線上のように感じた。

もちろん、初代『バイオハザード』や『バイオハザード0』『バイオハザード リベレーションズ2』のように、複数キャラクターが存在し、キャラクターごとにプレイ感の差がある作品というのはこれまでも存在している。ただ、各キャラクターパートでの体験をここまで明確に分け、得られる感情まで全く異なるものとするという点では、前述の作品をイメージした。

細かな点だが、グレースパートとレオンパートでマップを共有しており、グレースパートで回収しなかったアイテムをレオンパートで獲得できたり、レオンでないと開けられないクローゼットがあったり……といった点は、『バイオハザード2』のザッピングシステムを連想した。

ただ、片方の主人公で本編をすべてクリアした後、もう一人の主人公で改めてプレイ開始する……というかたちだった『バイオハザード2』のザッピングシステムと違い、本作は短いスパンでキャラクターの切り替えが発生する。このためマップの共有や時系列の影響をテンポよく実感できるのがとても魅力的だと感じた。

そして、シナリオの見せ方で影響を感じたのは『バイオハザード リベレーションズ』だ。場面が切り換わる際に、クリフハンガーを巧みに用いていたのが印象的だった。

日本語に直訳すると「崖にぶら下がった(=クリフハンガー)」という意味の言葉であり、「絶体絶命のピンチで、次回に続く」という演出手法を示している。「崖にぶら下がったまま助けが来ない、果たして助かるのか? それとも、このまま落ちてしまうのか? 続きは次回をお楽しみに!」というわけだ。まさに本作でも、グレースやレオンがピンチ! 一体どうなるのか……というシチュエーションで、もう一方の主人公パートへ変わってしまう……という演出が多用されており、思わず続きが気になって、より引き込まれてしまう。

ところで、映画やドラマに詳しい人の中には、この「クリフハンガー」にネガティブな印象を抱いている人もいることだろう。とにかく主人公をピンチな状態にして、「続きは次回!」とやれば、ある程度観客の興味を引くことができるため、「安易」と評価されることも少なくないからだ。

ただ本作においては、「クリフハンガー」が安易に使われているという印象はなかった。むしろ、適切に使われている印象だ。

というのも、「緊張」が一気に「解放」されるグレースパートからレオンパートへの移行はまだしも、レオンパートからグレースパートへの移行時には、どうしても心理的なブレーキがかかってしまう。レオンパートの爽快感や力強さが失われ、一気に心細い状態になって恐怖感が強化されるので、当然といえば当然だろう。

だからこそ、「クリフハンガー」が有効に機能する。グレースはどうなったのか? という強い引きがあるからこそ、心理的なブレーキを乗り越え、スムーズにレオンパートからグレースパートへの移行がなされるのだ。

ホラーをシリーズ化するという難題に正面から向き合い乗り越えた素晴らしいタイトル

ここまで書いてきた通り、本作は「バイオハザード」というシリーズがこれまで築いてきた要素ひとつひとつを丁寧に見返し、新たな解釈のもと組み合わせることによって、これまでにない恐怖を作り上げている。このこと自体が素晴らしいが、個人的には、ホラーゲームの「シリーズ」で実現したという点がスゴいと感じた。

というのも、「恐怖」は「慣れ」が天敵。このため、単純にシリーズの要素をまとめるだけでは、既視感ばかりで恐怖感のない作品になってしまう。しかし本作はそんな状態に陥っておらず、新鮮な恐怖を実現している。

「バイオハザード」シリーズのファンはもちろん、すべてのホラーゲームファンがプレイすべき一作と言えるだろう。

ちなみに、筆者がなぜ今回Nintendo Switch 2版を選んだのか? それはズバリ、amiibo(アミーボ)との連携を楽しみたかったから!(※)

人によってグラフィックやゲーム性など、ゲームに対して求める点は異なることだろう。そんな中、筆者の重視する点は、娯楽性。アミーボがあると、ゲームに加えフィギュア的にも楽しめて、しかもゲーム内でもオマケ要素がある……楽しさの総合点が高いように思うからだ。現時点でまだアミーボは発売されていないのだが、それでもこの選択に後悔はない……!

(文/田中一広)

※編集部註:amiiboのレオン・S・ケネディとグレース・アッシュクロフトは共に2026年7月30日発売予定となっている

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