東京において「佐世保市地場産品メディア向け試食会」が行われたので、その模様をレポートする。佐世保といえば、長崎県ということはご存じだろうが、佐世保を目的地として旅行する場合はほぼハウステンボスになってしまうのではないだろうか。
佐世保市は造船と軍港で栄えた街で、現在でも海上自衛隊の拠点が置かれ商船よりも艦船が多い港町である。佐世保市は長崎県第2位の都市ではあるが都市圏も経済圏も長崎市とは離れているので異なる。佐世保市は美しい海に囲まれた地域で、見るべき自然も多いが、その分だけグルメの宝庫でもある。隣接する都市も松浦、平戸、西海の各市はもとより、佐賀県の伊万里や有田とも接しているので、この地域だけでも十分に観光に耐えうるコンテンツはある。
今回のメディア向け試食会では、佐世保のグルメを集めて紹介する催しで、多くのメニューが提供された。
最初に紹介するのは「九十九島かきの燻製オイル漬け」である。生ガキを燻製してオイル漬けにしたぜい沢な一品。
燻製したことで最初は非常に煙い燻製独特な香りがするが、食べてみるとカキのうまみが舌に残り続けるので、お酒がないとやっていられない気持ちにさせてくれる。個人的には、日本酒が合うと感じたが、とっさに欲しいのはビールだった。
写真左から「ワイン仕込みさば」「柚子鯖」「さば西京漬け」である。3種類の鯖料理だが、最もインパクトを感じたのはワイン仕込みだ。ちょっと他では見かけないもので、白ワインに漬け込んだ鯖で特にワインの香りや味はしないものの、鯖の臭みを完全に抑えこみ甘みさえ感じる鯖は九州人でなくても全国で通用する味だ。お酒もいいが、ご飯が欲しい一品である。
「天然黒あわびのクエだし柔らか煮」は、長崎産の黒あわびを高級魚であるクエを使用した出汁とタレで炊き上げた絶品だ。クエは九州ではアラとも称されるハタの仲間である。大型の白身魚で超高級魚としてあまりにも有名。その出汁ともなれば、角界でもおなじみの鍋料理を食べないわけにはいかないが、それはちゃんと後で出てくる。
あわびとクエという高級食材を合わせた技には脱帽で、苦い肝ですら美味しいのでやはり日本酒が欲しいところだ。
「長崎産天然クエ鍋」が登場した。ちゃんこ鍋の高級食材としておなじみで「アラ」とも称されるのは前述した。このクエの鍋は甘くいくらでも食べられる素朴で深い味わいだ。もし九州で「アラ鍋」を食べる機会があれば、特に女性にはうれしいコラーゲンたっぷりの部位をおススメしたい。それはクエの目玉とくちびるである。大型のハタはくちびるも大きく、それだけで十分に食することができる大きさなのだ。
西海みかん「味まる」は、普通のみかんといえばみかんだ。しかし手がかかっており、甘みを増やす目的で光量や水量を適切に管理した品種で、とにかく甘いのが特徴だ。そして皮が薄く甘みも濃いので贈答品として贈られるケースも多いようだ。
高級みかんではあるが、小ロットの箱入りも新たに発売される等、自分へのご褒美用としても求めやすいように変化してきている。
「黒豚ロールステーキ」は、1ミリメートル以下に薄くスライスした肉を丁寧に手作業で巻いていくことで作られる。南九州産の黒豚を使用して、巻き上げる本品は日本で最初に商品化した元祖であり、現在でも機械巻きにせずに職人による手巻きにこだわる。
焼いたステーキは九州らしくゆず酢のタレでいただく。香ばしい黒豚のステーキにさわやかな酸味が香る。この肉を巻き上げるのに結着するための添加物は一切使用しておらず、肉だけの粘着力で巻かれているのが特徴だ。
よって焼いても箸だけで切れる柔らかさは、そもそもが美味しいのに加えて、高齢者でもステーキを食べることができると意外なところで好評なようだ。
写真左から「牛タンカレー」「牛テールカレー」だ。個人的には牛タンカレーの方が好みだったが、両方食べて個人小好みに合う方をリピートすると良い。この2品はベースとなるカレーの味付けも異なるが、そもそもレトルト品であえる。ところがレトルト品と侮るなかれな一品でもある。
パッケージにある写真はたいていは若干「盛っている」のが食品の常識でもあり限度ものだが消費者もある程度はそれは認識している。ところが、パッケージから皿に目の前で出してもらったのを見てびっくり。写真そのままのゴロゴロ肉が出てきた。むしろカレールーの方が少なく感じるほどだ。よってこのカレーはレトルト品ではあるが、2名でシェアするくらいの量だと心得て食べるくらいがちょうど良いのだ。
「つきたてかんころ餅」は、主に長崎県五島地方で食べられている和菓子の一種で、ゆでて干したさつまいもにもち米を加えてついたものだ。焼いてもよいが、冷めた状態でもかたくならずに食べることができるので、購入してそのまま手を突っ込んでせんべいのように食しても構わない。佐世保から西海・五島地方の素朴なお菓子である。
最後に登場したのはコーヒーで「自家熟成焙煎ゲイシャ豆」である。出荷当日に焙煎する豆で、エチオピア産のゲイシャ豆から厳選したグリーンラベルのみを使用している高級コーヒーだ。焙煎した豆をかじってみたが、そのまま食べられるほど頃合いの良い焙煎とコーヒーの味しかしない豆は高品質の証だ。
佐世保市には新幹線から特急列車乗り継ぎでも、長崎空港から空港バスでも行くことはできる。かつては東京から寝台特急が佐世保まで運転されていたが、現在の方が行きにくくなったのかもしれない。航空機の便数や他の交通でも便利なのはやはり福岡だろう。福岡からは佐世保駅前まで高速バスが佐世保駅前まで20便以上出ているので、組み合わせによってはこちらの方が安く時間の都合がつくこともあろう。紹介した品々は現在では通販で取り寄せることも可能だが、佐世保の風土を感じながら現地で入手して食べてみて欲しい。味は味覚だけではなく五感で感じた方が美味しいに決まっているからだ。
※写真はすべて記者撮影

