MUTEKで感じたXRと街の融合、技術が生み出す新しい日常の楽しみ方【MUTEK2024】

  by edamame/えだまめ  Tags :  

11月22〜24日に東京・渋谷で『MUTEK.JP 2024』が開催。

同日程で渋谷ヒカリエホールBにて開催されたXRに焦点を当てたカンファレンスには、様々な技術者が登壇し、XRが作り出す未来の体験についてのトークセッションが繰り広げられました。

街とXRが生み出す新しい体験価値

「未来って、こんなに楽しくなりそうなんだ!」

14時から行われたセッション「街とXRが生み出す新しい体験価値」は、そんな気持ちを抱かせる内容でした。

登壇者は、Nianticの「白石 淳二」氏、Meta Osakaの「毛利 英昭」氏、Mawariの「谷田部 丈夫」氏。それぞれのユニークな視点から語られた技術と未来の街の姿に、会場は何度も感嘆の声で包まれました。

白石氏が語ったのは「人々を外に出す」をテーマにしたNianticの取り組みについて。代表的なゲーム『ポケモンGO』を例に挙げ「街歩きをもっと楽しく、特別な体験に変える」という同社のミッションを説明しました。

▲白石氏。

特に注目を集めたのは、最新技術「スキャニバース」。

これは、スマホ1台で物や街中の風景や建物を3Dスキャンし、それをARやXRの世界に再現できるというもの。この技術を使えば、公園や街全体が「新しい遊び場」として楽しめる未来が広がります。

例えば、東京の明治公園を舞台にした「ナイアンティックパーク」というプロジェクトでは、公園全体をスキャンし、訪れる人がAR体験を楽しめるエリアを設置。このような取り組みは、街そのものをエンターテインメント空間に変える力を秘めています。

「スキャニバースは、文化財の保存や個人的な思い出を未来に残す手段としても活用されています」と白石さんは続けました。

▲縄文土器を1分でデータ化する例や、「おばあちゃんの家を3Dデータで残す」といった提案は、技術がどれほど多様な分野で役立つかを実感させてくれました。

バーチャル空間で守る大阪の未来

続いて登壇した毛利氏は、大阪の歴史ある建造物をバーチャル空間で再現するプロジェクトを紹介しました。

▲毛利氏。

「大阪城やなんばパークスを3Dデータ化することで、観光や教育に活用しながら、未来にその価値を残していきたい」と毛利氏は語ります。

▲世界中で遊ばれているFPSゲーム「フォートナイト」内で再現された大阪城。デジタル空間で歴史と創造性が融合。

▲こちらはなんばパークス。すでにこの建物は取り壊されていますが、デジタル空間でならいつでも訪れることが可能。まさに歴史と未来の架け橋です。

▲特に印象的だったのが、子どもたちが手書きや工作で作った建物をデジタル化し、バーチャル空間で街として再現した映像の紹介。子どもたちの創造性が形となり、デジタル空間で自由に動き出す様子には、場内からも驚きの声が上がっていました。

リアルタイム3D配信で現実と仮想がつながる未来

最後に登壇した谷田部氏は、XR技術を活用したリアルタイム配信の可能性を語りました。

▲谷田部氏。

バーチャルYouTuberである「彩まよい」のデモンストレーション映像では、光や影までリアルに再現されたキャラクターが、現実空間に存在しているかのように感じられる驚きの技術を披露。「アニメの世界が現実に飛び出してくるような感覚です。体験すると脳がバグります」と語るタケオさんに、観客の期待も膨らみます。

▲「彩まよい」のリアルタイム3D配信。光や影の再現性が圧巻。

Web3がもたらす社会の未来

次のセッションでは、Web3やDePIN(分散型インフラ)の技術が私たちの生活をどう変えるのかについても議論されました。

登壇者は、Animoca Brands Japanの「天羽 健介」氏、KDDIの「館林 俊平」氏、Mawariの「谷田部 丈夫」氏。

▲左から天羽氏、館林氏、谷田部氏。

特に、電柱をみんなで撮影して点検コストを下げる「ピクトレ」というゲームの話には、遊びと社会貢献を融合する新しい可能性を感じました。

▲「ピクトレ」で撮影を楽しみながらインフラ点検を効率化。

これらの取り組みが進むことで、街や社会のあり方がどのように進化していくのか。Web3がもたらす分散型技術の未来には、まだまだ多くの可能性が眠っているようです。

デジタル空間とリアル空間の人々が普通に交流できる未来がすぐそこに

この日最後のセッションでは、Mawariの「ルイス・オスカー・ラミレス」氏らが、木星からやってきた仮想人間のモデレーターである「ミアコ」と共に、Web3技術とDePINについて議論しました。

▲「ミアコ」とスマートグラス越しに会話をするルイス氏。

▲会場に用意された体験用スマートグラスの数には限りがあり、動いて喋るミアコを体験できた人数は僅かでしたが、それでもデジタル空間とリアル空間の境目が徐々に曖昧になっていくんだろうなという感覚がスッと入ってくる体験でした。

日本語でのリアルタイム翻訳が表示されるモニターが会場内に設置されていたものの、全編が英語で行われたため、セッション内で語られた内容の全てをしっかりと理解することは出来ませんでしたが、あまりにも“普通”にデジタル空間に存在する人格と会話が成立している様子は「想像していた未来が来たなぁ」と、漠然とした印象ながらも、不思議と確信を持てる光景でした。

日常に溶け込む未来技術とその実感

本記事で使用している写真を撮影した、弊サイトの記者「オサダ」氏は、イベント終了後にこう語りました。

「Web3」という言葉が一人歩きしている印象もありますが、実際には日常のバックエンドでトークンがやり取りされ、情報伝達が確実に効率化されているのを感じます。

これこそ未来の一端が着実に形になっている証拠だと、改めて思わされます。分散型の処理システムも然りで、(あのWinnyを思い出しますが)処理が個人レベルで補完し合う仕組みが当たり前になっているのは、ハードウェアと通信技術の進化そのものを実感させるものです。「これって未来だ」と感じられるサービスや技術が増え、今まさに未来への過渡期にいるのだと強く実感しています。この時代の変化を目の当たりにするのは本当に興味深いです。

また、XRグラスで視界を会場全体と共有する未来も、そう遠くないように思えますし、木星からのやり取りを立体的に体験するような、「ほしのこえ」(新海誠)のその先の未来すらも現実味を帯びてきているように感じました。あの会場に立って、そうした未来への一端が垣間見えたのは、とても印象深い体験でした。

筆者も、専門家ではないので技術的な感想をここに綴ることは出来ませんが、それでもカンファレンス全体を通して、自分が社会の大きな変革の最中にいるんだなと強く感じました。

ただ「こういう技術がある」という紹介に留まらず、それがどのように私たちの日常に溶け込み、社会を変革していくのかを具体的に感じさせてくれるセッションが目白押しだったので、素人ながら楽しく参加することができました。

分散型の技術やXRを基盤とする社会のあり方は、まだ模索の途中にありますが、その可能性は計り知れません。

今後、こうした技術がさらに発展し、誰もがその恩恵を受けられる未来が訪れるとしたら、その第一歩を見届けることができた今回のカンファレンスは、きっと歴史の一部として語られるはず。次は、私たち自身がその未来を共に作り上げる番です。

撮影:オサダコウジ
取材・文:edamame/えだまめ

edamame/えだまめ

食べるxゲームx自転車=それが私。 最近は空前の和菓子ブームが来ています。 【私が思う駅弁3か条】 1-駅構内で購入可能なもの(ただし所謂コンビニ弁当はNG) 2-駅から地上に出ずに購入可能なもの 3-改札から徒歩30秒以内で販売されているもの(駅の目の前のお弁当屋さんなどはセーフ)

Twitter: edamame_phoo