何年か前、まだサラリーマンだった頃、私はこんなことを書いた。
巷には「なぜ働くのか」だとか「働くとは何か」といった本が氾濫しているが、こんな簡単な問題は数行でまとめられる。多くの人が、答えは一つという前提で考えているからいけないのだ。
仕事をする理由は、以下の三つの要素を考慮したうえでの判断である。
1.その仕事をすることが楽しい。
(やりがいを感じる、夢中になれる、充実感が得られる)
2.その仕事は金になる。
(最低限生活できる必要があるし、多いほど望ましい)
3.その仕事は、広い意味での資産を築く。
(お金、キャリア、スキル、資格、人脈、体力、等)
この考えが間違っているとは思わない。しかし、いま仕事を探している人や、ワーキングプアといわれている人からすると、この考え方は仕事を選べる立場にある人の話であって、何の役にも立たない、いや、むしろ腹立たしい考えだったのではないのかと今になって思う。
経済的報酬を重視するのか、精神的報酬を重視するのか、そのバランスが難しい。精神的報酬が大きければ、ある程度は経済的報酬を犠牲にできる。逆に精神的報酬を犠牲にして経済的報酬の最大化を目指す人もいる。
ここで気をつけることは、経済的報酬にマイナスはないが、精神的報酬にはマイナスがあり得るということだ。社会的な面で罪悪感を感じるような仕事、社内での人間関係、最悪の場合は過労死やメンタル的な病に陥る可能性もある。
終身雇用や年功序列の時代は終わった。一般のサラ リーマンにとっては冬の時代だとも言える。もう、会社にしがみついて生きようとしても、その世界が安泰だとは言えない。上記の3項目の3番目、広い意味で の資産(お金、キャリア、スキル、資格、人脈、体力、等) のうち、特にスキルと人脈は重要になる。
人脈とは有名人や有力者と知り合いになることではない。仲間と呼べるだけの友達や、気軽に相談できる専門家などだろう。
人生設計の難しい時代になった。人生設計など不可能だし、設計など不要だとも言える。しかし、自分の仕事が何であるのか、何をすることで稼ぐのかという軸は必要だ。軸を確立し、怠りなくそれを磨くこと。それが重要だ。