2023年のカンヌ国際映画祭で話題を集めた映画、『クレオの夏休み』が現在公開中です。
故郷へ帰ってしまった大好きなナニー(乳母)を追いかけ、6歳の少女がパリからアフリカの島国へ。そのひと夏の旅の体験を経て人生と世界にひとり全力で向き合う小さな成長の一歩を、彼女の心象風景を捉えたアニメーションを交えた映像でエモーショナルに綴る感動作です。
主人公クレオ役は、撮影当時5歳半で演技初挑戦のルイーズ・モーロワ=パンザニ。監督は、本作が長編単独監督デビューの新鋭、マリー・アマシュケリ。来日したおふたりに話を聞きました。
■公式サイト:https://transformer.co.jp/m/cleo/ [リンク]
●ナニー(乳母)の存在は、フランスでは一般的なことだそうですね。
監督:そうですね。この映画でも描いていますが、フランスでは乳母として出稼ぎに来ている方もいます。だいたいは自分の国に自分の子どもを置いて他人の、しかも自分よりも豊かな階層の子どもの世話をするためにやって来るんです。日本ではナニーを見かけないような気がしました。
テーマとしては、母性愛があります。自分の子でなくても、子どもに対して母性愛を向けることが出来るかどうか、本当の母親でなくても関係を構築出来るのではないか、ということは描きたかったことです。つまりこれは隠された秘密の愛、禁断の愛というテーマでもあるんです。
●映画は徹底して子どもの視点であり、主人公の心象風景をアニメーションで表現するなど、アイデア豊富な趣向にも感動しました。
監督:おっしゃるようにルイーズの目線で撮りました。今はもう彼女は大きくなりましたが、当時は1メートル28センチでした。カメラを含めすべてをその高さにしたので、撮影中はみんな腰が痛くなりました(笑)。
また子どもは自分の気持ちを言葉にして十分に表現することは出来ないのですが、たまたま親しい友人の中にグラフィックデザイナーがいたんです。一時期同じ部屋で仕事をしていたこともあったので、子どもの気持ちをぜひアニメで表現出来たらいいなと思っていたところ、協力してくれることにりました。その彼と一緒にアニメーションを作りました。
それに主演がルイーズに決まった時は、脚本を彼女が読み込む前だったのですが、その時に絵コンテのように準備していたおかげで、それによって彼女は先にイメージを膨らませることが出来たのです。
●完成した映画はご覧になりましたか?
ルイーズ:2回観ました!
●演技など初めてのことも多かったと思いますが、感想はいかがでしたか?
ルイーズ:この映画が大好きです。わたしにも実生活ではナニーがいたので、ずっと彼女がついていてくれました。ちょうど最近、この映画のようにナニーとの別れがあり、そういう意味でも大好きな作品になりました。わたしのナニーはアルジェリアの方でしたが、タイやメキシコなど世界中の国からフランスに来るんです。
監督:フランスでは一般的なんです。パリの公園に行けば、ほとんどの子がナニーと一緒にいる姿が目につきます。
●まるでドキュメンタリーを観ているような自然な演技でしたが、撮影中の思い出や大変だった出来事はありますか?
ルイーズ:海での撮影がありました。クジラが出てきて、それと一緒に自分も海から飛び出して来るシーンを撮ったのですが、そのカットを撮る時が一番思い出に残っています。
●お芝居をしてみていかがでしたか?
ルイーズ:とても楽しかったです。共演した人たちと仲良くできたので、そうじゃなかったら撮影はこんなにも楽しくなかったかも知れないですね。ナニーのグロリア役のイルサとも、とても仲良く出来ました。この先もお芝居はしたいです。ハリー・ポッターの映画に出たいです(笑)。
●最後になりますが、日本の映画ファンのみなさんにどのように受け止めてほしいでしょうか?
ルイーズ:この映画を観てもしも映画を作りたいと思った方がいれば、(監督のように)自分の経験を映画にしてみてください。誰にでも語りたいストーリーはあると思いますので。
監督:この作品が日本で公開されると聞いた時、うれしくて幸せで、今もとても興奮しています。日本のみなさんがわたしたちの映画をどのように観るのか、その反応が楽しみですし、文化が違う国で、感情が揺さぶられる映画をどのように受け止めてくれるのか、すごく楽しみにしています。
■ストーリー
父親とパリで暮らす6歳のクレオは、いつもそばにいてくれるナニーのグロリアが世界中の誰よりも大好き。お互いに本当の母娘のように想いあっていた2人だったが、ある日、グロリアは遠く離れた故郷へ帰ることに。突然の別れに戸惑うクレオを、グロリアは自身の子供たちと住むアフリカの家へ招待する。そして夏休み、クレオは再会できる喜びを胸に、ひとり海を渡り彼女のもとへ旅立つ…。
公開中
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